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英語業界でも流行「コーチング」は誰に向くのか

10/23 14:01 配信

東洋経済オンライン

 年々、「コーチング」というキーワードを耳にすることが増えてきました。これまでスポーツ選手の指導やビジネスでの人材育成などで聞くことはありましたが、最近は習い事の業界でもコーチングを始めるケースが相次いでいますね。

 英会話を教える筆者の会社でも、「コーチング」サービスを開始することになったのですが、企画会議で「これって、そもそもコンサルティングなんじゃない?」とか、「担当するのはトレーナー?  カウンセラー?  やっぱりコーチ?」なんていう議論になりました。なんだか似たような言葉がたくさんあって迷ってしまいます。

 いったい習い事における「コーチング」とは何なのでしょうか。いわゆる「レッスン」とは何が違うのか、どんな人に向いているのかなど、今回の記事では考察してみたいと思います。

■さまざまな教育の形

 「コーチング」以外にも、同様に横文字で聞くことが多いのが「ティーチング」「トレーニング」「カウンセリング」「コンサルティング」など。どれも人に何かを教えたり、相談に乗ったりするのはわかるのですが、これって言い方が違うだけで実は同じことだったりするんでしょうか。

 ちょっと調べてみると、ビジネス系の「コーチング」関連の本などに、これらの違いが書かれていることが多かったのですが、人によって見解に多少の違いがあるようです。でも、だいたいの方向性は決まっているようでしたので、筆者なりにまとめてみました。

 まずは、「ティーチャー」「トレーナー」「カウンセラー」「コンサルタント」「コーチ」などの行為者と、それらを受ける「クライアント」、つまり被行為者との間のコミュニケーションによって、大きく2つに分けられるようです。

 「ティーチング」は、「ティーチャー」が持っている知識を与える行為。「トレーニング」は、「トレーナー」が持っているスキルを与えたり、スキル向上のための練習を指導したりする行為。この2つは、いわゆる「学習」と「訓練」というくくりで分けられるものの、直接的に「教える」という行為のよう。

 「コンサルティング」は、「コンサルタント」が問題解決のための方法を与える行為であり、基本的にはこちらもどうすればいいかということを「教える」という行為ということで、ティーチングやトレーニングと同じ範疇に入れられます。

■コーチングでは「教えない」

 それに対して「カウンセリング」というのは、「カウンセラー」が質問をして「クライアント」の自己洞察を促進し、問題解決に導いていく行為です。「コーチング」というのは、「コーチ」が質問をして「クライアント」が目標達成のための行動を実践できるように導いていく行為なのだそう。

 これら2つでは、行為者が「教える」ということはしません。「クライアント」に気づかせたり行動させたりするために、「質問」しながら本人の中にある答えを引き出していくということで、一緒にくくられています。

 では、「カウンセリング」と「コーチング」は何が違うのかというと、「カウンセリング」の焦点が「問題」を解決することなのに対して、「コーチング」は「目標」を達成することであるという点。さまざまな人が言っていますが、「カウンセリング」は「マイナス解消」で、「コーチング」は「プラス創出」という見方ができるようです。

 「ティーチング」「トレーニング」と「コンサルティング」については、プラス・マイナス方面、どちらにくくるかという点で意見が分かれるようです。ここでは、先ほど述べたように、「ティーチング」「トレーニング」は「知識やスキル」を与える、「コンサルティング」は「解決法やアドバイス」を与えるという差があるというのを押さえておけばよさそうです。

 コーチングでは、大前提として「答えはクライアントの中にある」ということなので、知識のない初級者や経験のない初心者には、向いていないのだそう。スポーツでも、プロ選手には「コーチング」、アマチュアには「ティーチング」や「トレーニング」が向いていると言われているようです。

 ビジネスでも、新入社員などに「コーチング」をするのはよくないという意見もあります。「どうしたい?」「どうすればいいと思う?」と質問で引き出そうとしても、そもそも答えがないのではコーチングは成立しないということですね。

■コーチングの語源は「馬車」!? 

 コーチングは、英語のcoachという単語から来ていますが、この語源はハンガリー語のKocsi(馬車)のよう。ハンガリーの街Kocs(コッチ)で、15世紀後半に大型の4輪馬車が開発されて「コッチの馬車」という意味だったそうです。

 現在でもcoachには「馬車」という意味が残っていますが、基本的には昔の大型馬車を指すことが多いです。馬車以外の意味としては、飛行機などのエコノミークラスのことをcoach classと言うときにも使います。アメリカではあまり使われませんが、イギリスでは長距離バスのことをcoachと呼んでいます。そして、今回のトピックである指導者としての「コーチ」の意味もあります。

 この「馬車」から、どうして指導者やコーチングの意味になったのかと言うと、乗客を目的地まで運ぶstage-coach(乗合馬車)からの比喩的な用法で、目標まで「運んでくれる人」をcoachと呼ぶようになったのがきっかけだと言われています。

 「指導者」や「コーチ」が「乗合馬車」から転じた用法だとは、なかなか思いつかないですよね。それはそうとしても、コーチングが目標達成をするための手法であるというのは、もともとの言葉の意味が指しているものが、そのまま残っているということですね。

 これに対して、レッスンで行われるティーチングは、どんな意味なのでしょう。teachという単語は、もともとは「見せる」という意味だったというのは、皆さんご存じですか。

 この単語の語源は英語のtoken(しるし)で、さらにさかのぼると古英語のtacen(しるし)、ドイツ語のzeigen(見せる)なのだそう。先ほどの定義では、ティーチングは知識を与えるという行為。これは、もともとの単語の意味、「見せる」という行為に沿っているということですね。こちらも言葉そのものが表していた指導の形が残っているようです。

 一方、スタイルとしてはティーチングと同じ範疇のトレーニング。trainという単語の語源は元をたどるとラテン語のtrahere(引く)という単語のよう。そこからtraha(そり)という単語になり、古フランス語のtrahineを経て英語に入ってきたそうです。

 当初、trainは「引きずる」という意味だったようで、そこから服のすそのような何か引きずるものを指すようになり、さらに派生してつながって動く人や乗り物を指すようになり、最終的に「列車」に使われるようになりました。

 また、「次々と連なって引き出す」という意味から、「力や才能を引き出していく」という過程のことをtrainingと呼ぶようになったとのこと。コーチングは「馬車」、トレーニングは「列車」と、どちらも乗り物が元の語源だというのは、なんだか不思議な共通点ですね。

 trainの原義である「引き出す」という行為は、コーチングやカウンセリングと同じ指導法のように聞こえますが、トレーニングで引き出すのはあくまでも「能力」。その練習方法はトレーナーが与えていきますので、指導のスタイルとしてはティーチングのグループということなのでしょう。コーチングと同じスタイルなのであれば、どのように練習すればいいかというのを本人から引き出していくことになるはずですから。

 厄介なのは、カウンセリングとコンサルティング。この2つ、実は同じ語源のようなのです。ラテン語のconsulere(相談する)という単語から、どちらも派生したと言われています。consultはそのまま「相談する」という意味で使われ、counselはラテン語のconsilium(忠告)という単語を経て、「忠告する」「助言する」という意味になったようです。とすると、これらはもともとの単語の意味と現在の指導スタイルにあまり関連性が見られないということですね。

■コーチは厳しい? 

 「コーチ」というとアラフィフ世代の筆者は、往年のスポ根マンガやドラマの「鬼コーチ」のイメージがあって、ビシビシと厳しく指導される感じがしてしまうのですが、語源のように「目標まで連れていってくれる」というイメージで考えると、馬車やら長距離バスやらに身を任せるがごとく、「コーチ」にすべてを委ねていればいいということなのかもしれませんね。

 モチベーションも含めて管理してもらえるという意味では、「ティーチャー」よりもより深い絆で結ばれる関係なのかもしれません。

 でも、コーチングの指導方法としては「引き出す」ということなので、あくまでも頑張るのは本人。「馬車に乗って連れていってもらう」というよりは、自分がウマになってむちで打たれているような気も……。

 皆さんが習い事をするとしたら、コーチングとティーチング(レッスン)、どちらのほうがお好みですか。そんなことを考えるきっかけになればと思います。

東洋経済オンライン

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最終更新:10/23(金) 14:01

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