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自宅からも参列できる「オンライン葬儀」の実態

10/22 7:21 配信

東洋経済オンライン

 コロナ禍により、仕事や生活の場でリモート化、オンライン化が進んでいる。葬儀・供養の場においても例外ではなく、コロナの収束が長期化しそうなことに伴い、オンライン化の動きも広がってきている。

 ただし、葬儀・供養の中でも、オンラインサービスが拡大しているものもあれば、普及していないものもある。代表的なのは、「法要」と「葬儀」だ。

 「葬儀」のオンラインサービスがさほど拡大していない大きな要因の1つは、オンライン化に否定的な葬儀社が少なくないことにある。その理由として、「葬儀の参列者の中には録画されたくない人がいる」「故人とのお別れは、直接対面して行うべきである」「故人と関係があった人たちが一堂に集まり、会食しながら故人の想い出話などをすることにも葬儀の意義がある」といった意見がある。

 ほかにも「オンライン配信すると、葬儀会場に来る人が少なくなる」「葬儀に参列する人は高齢者が多く、オンライン機器を操作できない人がいる。また、葬儀社にもITは苦手な人が多い」などの理由も挙げられている。

■無料で葬儀の中継を行う

 しかし、オンライン葬儀サービスを開始する葬儀社やオンライン関連事業者も増えてきているのが実情だ。はたして、オンライン葬儀は拡大し、コロナ収束後も定着するのか。そこで、オンライン葬儀サービスに注力している葬儀社や関連業者の現状と今後の計画などを分析することで、これからの行方を展望してみたい。

 埼玉県内で22カ所の葬祭ホールを出店している冠婚葬祭互助会の株式会社セレモニー(埼玉県さいたま市)は、今年6月からオンライン葬儀サービス「スマートセレモニー」を開始した。

 同サービスは、無料の葬儀中継を始め、弔問や会葬、供花、弔電の受付、香典の預かりをすべてオンライン上でできるサービスだ。その狙いについて、同社の志賀司社長は、「葬儀会場まで来ていただくのがいちばんよいとは思っている。しかし、高齢化の進展や海外勤務などで葬儀に参列できない人が増えてきており、どこかの時点でオンライン配信も始めなければならないと考えていた。コロナによって参列が難しい状態になったので開発に踏み切った」と話す。

 スマートセレモニーは自社で開発。葬儀のことは知らないIT企業などが開発したシステムだと使い勝手が悪いことが予想されたため、現場サイドからの情報をくみ上げて使い勝手のよいものをつくったという。

 また、喪家専用のWebぺージをスマートセレモニーでは設けている。上述した、葬儀中継、弔問・会葬と供花・弔電の受付、香典の預かりはクレジット決済で行える。また、弔問・会葬者は、喪家が用意した複数の供花・弔電、香典の返礼品の中から好きなものを選ぶことができる。

 なお、使用を申し込んだ喪家には、訃報案内をする人に対し、喪家専用のWebぺージにアクセスするために必要なQRコードもしくはURLを、訃報案内と共にFAXやメールなどで送ってもらうようにお願いしている。

 同社では全喪家に利用を勧めているが、その背景には「葬儀は家族葬が増えてきて、会葬者がどんどん減ってきている。そうすると、人と人のつながりが減って、葬儀を行わない人も増えてきてしまう。それは、葬儀社として困ると同時に、無縁社会が拡大して人々が暮らしにくくなってしまうことも大きな問題だ。人と人のつながりが切れないように、全喪家に使用を勧めている」(志賀司社長)との理由がある。

 スマートセレモニーの利用状況は、導入3カ月目の8月単月では、全葬儀件数のうち利用を希望した葬儀は76%。実際に利用した葬儀(供花、弔電、香典のうち1件以上の申し込みのあった葬儀)は16%だった。

 この16%というのは、「新規に導入した商品・サービスは、3カ月目はだいたいこのような数値である。葬儀件数で見た利用率は16%だが、供花、弔電、香典は複数の申し込みが多く、全件数では250件を超える」と志賀司社長は話す。

■メモリアルアルバムの閲覧も

 2019年9月に創業し、葬儀社や僧侶の紹介事業などを手掛けるライフエンディングテクノロジーズ(東京都港区)では、オンライン葬儀サービス「スマート葬儀」を今年4月末から販売開始した。

 葬式や法事にオンラインで参列できるほか、 香典のキャッシュレス決済や、弔電、供花、返礼品などの手配も可能。さらには、オンライン参列者は故人のメモリアルアルバムを閲覧することもできる。

 スマート葬儀の販売・受注方法は、2パターンある。1つは、一般ユーザーが同社のホームページを見て、オンラインを利用して葬儀を行いたいと依頼するパターン。この場合は、同社が行っている葬儀社紹介サービス「やさしいお葬式」の提携葬儀社に依頼して行う。葬儀にオンラインがオプションとして付くという形になり、オプション価格は3万円(税別)だ。

 もう1つは、「スマート葬儀」システムを、葬儀社に導入してもらうパターンだ。導入費用は月々3万円(税別)としている。

 売れ行き状況は、まず一般ユーザーからの依頼は、販売開始から8月末までの約4カ月間で100件あった。法要が7割と多いが、葬儀も3割ある。「とくに葬儀のオンラインについては、われわれ自身、もっと抵抗があるのではないかと予想していたが、そうでもないことがわかった」(栗本喬一執行役員)。

 亡くなるのは80~90代が多く、その兄弟姉妹も故人と近い年齢なので、3密は避けたいけれどもオンラインでも良いから参列したいという要望が強いことが、要因にはあるという。さらに喪主世代は、ITに対して苦手意識があまりないそうだ。

■コロナで葬儀単価がダウン

 一方、スマート葬儀システムを導入した葬儀社は100社ある。導入葬儀社の傾向は2つあり、1つは、小規模事業者持続化補助金を使って導入する小規模葬儀社。もう1つは、中・大手葬儀社で、導入数は前者と後者が約半々だ。

 中堅・大手葬儀社で導入するところは、コロナの影響で葬儀単価がダウンしているので、それを補う目的のところが多い。単価ダウンを補うというのは「コロナ禍で儀式を行わない直葬も増えている。オンラインを利用するということは、最低1日葬以上の葬儀を行うということになるため、オンラインを勧めるといった活用をしている」(栗本喬一執行役員)。

 また、「スマート葬儀」システムを導入した葬儀社での喪家の利用率は、葬儀社により1~3割となっている。訃報案内をもらった人は、弔電、供花、供物くらいは出しておこうという人が多く、これも葬儀の単価ダウンを補うことに寄与しているという。

 2000年に創業してWebサービスの開発・製作を行うIT企業の株式会社マイクロウェーブ(東京都渋谷区)は、オンライン葬儀サービス「@葬儀」を今年7月から販売開始した。ソーシャルイノベーション事業本部の松田愛プロデューサーは、「コロナとは関係なく、当社が長年培ってきたIT技術を活かした新しい葬儀の形を提案しようということで、昨年から準備を進めていた。葬儀社向けサービスなので葬儀社からいろいろ意見を聞き開発・製作した」と、狙いを話す。

 オンライン葬儀というと、ライブ配信というイメージがあるが、開発に当たっては、IT企業としてのノウハウを活かし、ライブ配信以外にも参列者に喜ばれるものを付加するということを基軸に検討したという。

 その結果、「オンライン葬儀場」をWeb上に設置し、そこに故人の写真や花、焼香台などを備えた祭壇をつくり、実際の葬儀の様子や喪主挨拶などのシーンを動画や静止画で見ながら会葬できるようにした。焼香ボタンを押すと煙が出て、お参りしたという感覚も味わえる。

■家族葬との組み合わせも増えている

 このほか、故人への追悼メッセージを送ったり、参列者が所有している故人の写真を喪主に送ることもできる。また、香典のクレジット決済や供花・供物の申し込みも可能だ。

 @葬儀を、8月末までの2カ月間で導入または導入検討中の葬儀社は約40社。同社の事業計画を上回っており、2カ月でそれだけの申し込みがあるサービスはなかなか無いという。

 @葬儀を導入した葬儀社では、家族葬と組み合わせて利用しているところが多い。「家族葬だと、葬儀に呼ぶ人を限定してしまうので、最後のお別れをしたかったと思う友人、知人などにとって、気持ちの整理がつかない。葬儀社にとっては、供花や香典返しなどが減ることがデメリットである。これらのデメリットを解消するために利用しているので、葬儀社、喪主、参列者のすべてに喜ばれている」(松田愛氏)

 オンライン葬儀に注力する3社の現状について見てきたが、今後の販売・受注見通しについて、セレモニーは「利用を希望した喪家は76%であるのに対し、実際に利用している葬儀は16%にとどまっている。その1つの要因は、喪家から会葬者への伝え方にある。きちんと伝えてもらえるようにできれば、もっと増える」と志賀司社長は話す。

 また「事業計画を上回る申し込みがあるので、正直、現場は手が回らない状態である。コロナ禍の一過性ではなく、 人の最期に多くの人が立ち会えるような仕組みを通して、人とのつながりを考えるきっかけを作るサービスとして広がっていくことが期待できる」とマイクロウェーブの松田愛氏は語る。

 コロナが収束してもオンライン葬儀は定着するかどうかについては、ライフエンディングテクノロジーズの栗本喬一執行役員は「オンラインでも参列できるようにすると、葬儀場に来る人が減るのではないかという葬儀社があるが、そうではない。海外にいて参列できないとか、田舎に住んでいて足が悪いので参列できないとか、今まで葬儀に参列できなかった人たちが参列できるシステムなので、定着するだろう」と見ている。

■Webに否定的だった葬儀社が変わる可能性も

 今後のサービス展開としては、セレモニーは、「スマートセレモニー・プラス」を年末に出す予定であり、葬儀のオンライン利用のさらなる拡大を目指す。

 ライフエンディングテクノロジーズは、オンラインの横展開を図っていく計画だ。オンライン結婚式の『クラウドウエディング』を開始しており、「オンラインペット供養も予定している。介護施設の面会システムとして導入を検討しているところもあり、横展開をどんどん行ってオンラインの認知度を高め、利用を拡大していく」と意気込んでいる。

 オンライン葬儀は、徐々に増えてきている。さらに拡大すると、これまでオンラインに否定的だった葬儀社の認識や取り組み姿勢も、より変化していくだろう。

東洋経済オンライン

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最終更新:10/22(木) 7:21

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