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入社3ヶ月で「副業」に走る人、「婚活退社」を決める人… コロナ禍の若者「キャリア」のリアル

10/22 8:01 配信

マネー現代

(文 ペ・リョソン) コロナショックは日本企業に「働き方」について多くの問いを投げかけた。毎日の出社は必要なのか、定例会議は対面でないといけないのか、会食の数は最低限に減らせないかなど、外出を必要とする行動が見直されるキッカケになった。多くの業界で強制的に在宅勤務が採用されたことで、その後の「働き方」にも少なからず変化が生まれている。

 「働き方」に対する考えが変わったのは、社会人だけでない。これからキャリアを積み上げていく若者や、就職活動をひかえた学生たちにも影響があった。特に、コロナ禍の中で奮闘する今年の就職活動生たちは、例年と比べて、キャリアについて、より慎重に考えるようになったのではないだろうか。

 筆者も今年、就職活動をしていた学生の一人だ。自身含め周りの学生たちは、「一生身を預ける企業」や「単に安定している会社」ではなく、数年後の転職を見据えた、「専門性が身につき、安定している企業」を探し求めていたように見えた。

 先が見えない苦しい現状に耐え忍ぶ就職活動生や、既に企業で働く20代の若者たちなど、現在、彼ら彼女らは水面下で様々な行動をとり、新時代のキャリアの形を築いていると言える。その一端をリポートしたい。

「個の時代」の「個」になりたい若者たち

 世代問わず、「終身雇用」や「年功序列」というワードは最近だと古いもののように聞こえるだろう。厚生労働省の2019年の調査によると、新規大卒就職者の約3割が就職後3年以内に離職している。転職サイトの充実ぶりを見ると、一つの企業でキャリアを数十年構築するのは、もう珍しいことなのがわかる。

 自身は学士過程修了後、大学院に進学したため、ほとんどの同級生たちは現在、社会人2年目である。既に転職をした者もいれば、転職活動の準備を進めている者も多い。

 「個の時代」という言葉が世の中に登場し、しばらく経つ。面接では企業は「ジェネラリスト」よりも「スペシャリスト」に重きを置き、その将来性を見極めながら学生を採用しているように感じた。総合職の募集でも、希望の配属部署をある程度考え、入社後どのようなスキルを身につけたいかを答えられないと、選考通過も難しい印象だった。

 学生はスペシャリストに向いた能力があることを証明するために、大学時代に経験を積み、面接で説明できるようにしなければならない。インターンシップや留学が就職活動でプラスに働く理由は、ここにあるのだろう。

 社会人になって2、3年経つ若者たちも「個の時代」、このワードが持つ意味を今ひしひしと感じているようだ。自身の周りでは、転職に備え専門スキルを身につけるために予備校に通う者が増えた。国内全体的に見ても、積極的に次のキャリアの準備をする若者は増えているように思える。

 実際に、女性のキャリア支援サービスを提供するSHE株式会社が運営するキャリアスクール「SHElikes」には、累計で2万人もの受講生がいる。女性だけで見ても、かなりの数の社会人たちが専門スキルを身につけたいと考えていることがわかる。

「副業したい」が叶わない女性はどうする?

 同社の調査によるとコロナウイルスの影響で、現在働く女性の4人に1人が「本業の収入が下がった」と回答した。また「副業を始める準備をしている」女性はコロナ拡大前の約2倍に増加した。厳しい現状を打破するために、若者は水面下で着々と動き出しているのである。

 この点について、ジレンマを抱えている女性たちがいる。花形職業と言われる客室乗務員たちだ。

 航空業界で働く女性たちによると、コロナショック以降、余暇の時間が増え、有り余った時間を有効活用したいと考えているが、一部航空会社では副業を許可されていないそうだ。

 業界全体が落ち込んでいるものの、最低限の生活補助や報酬をもらっているため、彼女たちはまだ副業を容認されていない。同じ業界でも企業によっては、医療や看護の資格を所有している場合は副業が認められるそうだが、保有していない女性が圧倒的に多い。副業を始められないジレンマを抱えている女性「群」が存在するのだ。

 客室乗務員として働く若い女性たちは、仕事にやりがいを感じているため、転職や退職を考えていない人がほとんどだ。例えば、大手外資航空会社に勤め2年が経つ女性は、コロナショックにより仕事は減ったが、今すぐの転職は考えていないと話した。

 「転職のタイミングはコロナ以前と変わりない。もともと中期的にしか考えていなかったキャリアだったため、少しずつ転職に向けた準備を入社前からしていた。自身にとってコロナショックは、その準備を加速させるきっかけとなった。以前からしたかったデザインの仕事や勉強を、予定よりは早いが始める、いいタイミングとなったと思う」

 厳しい現状がしばらく続くと考え、客室乗務員という仕事を続けながらも新しい挑戦をしたい、体力とやる気のある若い女性たちが今日本中にいるのだ。

 一方で、中には、結婚願望が高まったり、結婚および婚活を目的に予定より早めに退職を決めたりする女性もいるそうだ。キャリアだけでなく、ライフプランにも影響が及んでいることがわかる。

パラレルワーカーにとっては最高のチャンス

 航空業界だけでなく、コロナショックは多くの業界を経済的に苦しめたが、一部若者の中にはこの現状をチャンスと捉えた者もいる。

 ホテルや飲食店、鉄道などのプロデュース、コンサル業務を行う企業で正社員として働きながら、他企業のサービスやイベントのブランディングを副業とする26歳の男性は、コロナショックはキャリアにポジティブな影響をもたらしたと話した。

 「リモートワークになったおかげで通勤にかかる時間を自由に使えるようになった。以前は多くあった会食やお酒の席も週に1回以下に減った。これまで平日の隙間時間と休日を使って、副業に充てる時間を捻出していたが、コロナのおかげで現在は本業も副業も、かなりバランスよく取りかかることができている。実際に、副業の収入もかなり増えた」

 彼が副業を始めたのは新卒で入社し3ヶ月経ってからのこと。入社当初、所属する組織で満たせない仕事のやりがいを、副業で追求しようと考え始めたそうだ。

 近年は企業とのマッチングがうまくいかず、入社数ヶ月で退職または転職する人も少なくない。彼の場合は、本業にやりがいを感じながら、そこでは得ることができないものを副業で満たすことにしたのだ。

コロナショックが影響を「与えなかった」人

 一方で、社会全体が不安定になり多くの若者がキャリアを見直したにもかかわらず、全く動じなかった人もいる。たとえば、大手不動産会社に勤める24歳男性は、コロナショック以降、「安定した働く環境」に対して、ありがたみが増したと話した。

 「入社前から30歳で独立するキャリアプランを持ち続けている。コロナショック以降もこのプランに変わりはない。今回多くの業界が落ち込み、止むを得ない減給で生活に困っている人々をたくさん見てきた。大企業の手厚い待遇に、改めて安心と力強さを感じた。その上、独立後に繋がるやりがいのある仕事でもある。これ以上になく幸せな仕事環境だと思っている。引き続き今の職場で力をつけ、キャリアプラン通り独立に向けて準備したいと考えている」

 彼は長期的なキャリアを見据えたキャリアプランを組んでいたおかげで、希望した業界に身を置き、今も着実とその夢に近づいている。

 もちろん、コロナショックにより業界自体が致命的な影響を受けなかったという運もあるだろう。加えて、もともと企業の方向性と自分自身の軸とのミスマッチングがないため、キャリアの見直しをする必要もないと言える。

業界ごとに「働き方」の問題点が浮き彫りに

 企業の立場を考えると、社員の副業の許可に対して一部懸念を抱いてしまう理由も納得できる。株式会社リクルートキャリアの調査によると、企業が副業を禁止する理由は「社員の長時間労働・過重労働を助長するため」が最も多かった。パラレルキャリアは社員の時間を有効活用の促進につながるが、同時に本業での生産性の低下や過労問題を導きかねない。

 日本は世界的に見ても労働時間やダイバーシティ制度などの「働き方」における遅れがあり、しばしば国内でも指摘されてきた。今回コロナショックにより、ここ数年懸念されていた「働き方」に大きな進展があった一方で、業界や企業の規模によって異なる問題点も浮き彫りになった。

 本稿で紹介した若者たちのように、現代の20代の中には、それぞれの働く目的とやりがいによって、「キャリアを見直す者」と「従来のキャリアプランを保つ者」が存在すると考えられる。これは変化がめまぐるしい多様な時代を象徴しているようにも思える。以前と比べて、より多くの若者たちがそれぞれの思うキャリアを歩んでいるということではないだろうか。

 今年1月、自身も「とりあえず」大企業に就職することを前提に就職活動を始めたが、コロナショックは自身のキャリアプランを大きく見直すきっかけとなった。

 最終的には、当初予想もしなかった、スタートアップにジョインするという選択をした。安定しているがあまり自分自身関心のない会社に「とりあえず」入社するよりも、長期的に見るとキャリアのプラスになり、自身のスキルを活かし楽しめる会社を選ぶ重要性を感じたからだ。その選択が正しいかどうかは、今後自身で証明することになる。

 厚生労働省が発表した「働き方の未来2035 報告書」によれば、2035年には期間を区切ったプロジェクトベースの働き方への移行により「正社員」という枠組みの意味ががなくなると考えられており、今後も引き続き「働き方」が見直され、つど人々の関心も高まっていくだろう。

 2020年は就職氷河期と言われてきたが、「時代性を鑑み、一度立ち止まってキャリアを考える」良いきっかけになったのではないだろうか。

 コロナショックによる変化は働く人たちや業界を苦しめたが、多くの人が改めて自分自身の「夢」や「やりがい」を追いかける重要性に気付くことができ、新しいキャリアを築くきっかけになった前向きな展開もあったと言っても良いだろう。

 今後も、よりたくさんの人が「夢」と「やりがい」を追求できる、働きやすい時代に発展していくことを願いたい。

マネー現代

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最終更新:10/22(木) 11:16

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