IDでもっと便利に新規取得

ログイン

大学は学歴から「学習歴」が問われる時代になる

10/21 8:11 配信

東洋経済オンライン

 オンライン普及後の大学の未来はどうなるのか――。

10月15日配信記事「大学は『オンライン化』で根本的に変わっていく」では、授業のオンライン化が大学に及ぼす影響について述べた。ここではオンライン講義は、教室での従来の講義を単にオンラインに置き換えただけのツールではなく、大学の教育改革・入試改革に結びつく重要なテーマであること紹介している。

 今後、オンライン授業が教育の多数派(マジョリティー)となっていく場合、あらゆる授業は場所や時間を問わずに受講できるものとなる。たとえば、キャンパスは日本にありながら、世界中の学生が“来日することなく”日本の大学に留学したり、日本の学生がアメリカやイギリスの大学の授業を受講したりといったことが容易になる。つまり、入学した大学の授業だけを受け続けるという必要性は理論上、皆無となると言ってよい。

 オンライン化によって学生が世界中の教授の講義を受講できるようになると、学生たちは、複数の大学で同一または類似のテーマの講義を展開している場合、自分にとって「最も良い授業を調達」するようになるだろう。そうなると次の2つのテーマが議論される。第1に単位、第2に教員の存在意義である。

■学生は“最も良い授業”を幅広く調達

 まずは単位についてみてみよう。近年、他大学の科目を履修して、それを単位として認定する動きが広がっている。留学先の授業を学問体系に基づいたナンバリングなどを活用することによって単位認定するといったことは以前から行われてきた。

 日本ではそれに加えて、学校間の単位互換制度が進みつつある。直近の例として、大阪府内の39大学で構成される特定非営利活動法人 大学コンソーシアム大阪が単位互換科目を設定し、オンラインなどで受講し、相互に単位認定する仕組みを整備している。こうした大学同士のコンソーシアム化が、今後大学数や互換授業数ともに拡大していくだろう。

 2020年7月、文部科学省は「大学等連携推進法人」の制度を一部改変し、同一の大学法人内であれば、授業科目を相乗りして良いというルールに改めた。この緩和によって、日本全国で法人統合など大学のグループの再編が進むものとみられる。

 海外の例で歴史があるのは「ボローニャ・プロセス(The Bologna Process)」だ。ヨーロッパ各国の大学の学位認定を一定の基準でそろえることで、ヨーロッパの大学のポートフォリオを強化することが目的だが、学生にとっては各国の高等教育機関の相互の単位が認められるため、学生個々人にとってベストといえる授業の選択の幅が広がる。

■オンライン化で学習歴が加速

 このような状況となると、従来の学歴社会でみられた「卒業大学名がわかれば、その人材がどのような教育を受けてきたのかを容易に理解できる」といったことが難しくなってくる。極端に言えば仮に難易度の低い大学に入学しても、難関大学の学生と同じ授業を履修し単位取得することも可能になるからだ。つまり、卒業大学・学部名だけでは、その人材がどのような講義を受けて単位を取得してきたのかがわからず、より精細な情報を見なければその人材の教育履歴の判断がつかなくなる。

 筆者はこの状況を「学歴社会から『学習歴』社会へ」の変化であると提唱している。この変化はオンライン化が進むにつれて、さらに普及が加速するとみられる。

 次に「教員の存在意義」だ。前述の単位の話では、今後は学生1人ひとりで学習の履歴がまったく異なってくると述べた。すべての学生がカスタマイズ(あるいはパーソナライズ)された学習歴を求めるとなると、教員は画一的な指導だけでは的外れな教育を施してしまう危険性さえある。

 今後、大学における教員は、従来型の「ティーチ」よりも、学生に寄り添って伴走しながら個々人の学びをサポートする「コーチ」へと存在意義が変容していくだろう。したがって卒業した大学・学部・学科のほかに、「学習歴」として誰が教員か、何を受講したか、どのような評価を受けたかといった情報を総合的に参照する時代となる。

 近年は企業においてもタレントマネジメントの手法が広まり、新しい人材育成の方法論が定着している。これと同じように、大学の運営組織は学生情報をデータプラットフォームに乗せてアナリティクスを行い、必要に応じて関連する組織にそうした分析情報を提供できるようマネジメントしていくことが求められる。

 もちろん大学の機能として、研究者的な教員には引き続きその役目があり、従来型の講義を提供する教員の重要性も変わらない。従来の教育者や研究者とは異なる、「コーチとして振る舞う教員」という第3の教員タイプの役割が必要になってくると思われる。

■ジョブ型雇用が学習歴社会後押し

 保護者の世代が大学生だった以前と比べて、現代の大学の学習環境や社会情勢は大きく変化している。企業の採用・雇用の形態も変化しており、ジョブ型に移行した場合は「どこの大学を卒業したか(学歴)」ではなく、より明確に「何を学んだか。今は何ができるのか(学習歴)」が問われるようになる。これが人材流動化の時代の特徴といえるだろう。

 企業が変化するのと同時に、大学は「出口(卒業する学生の姿であり、その人材の行き先となるマーケット)」をどう定義しているかが不可欠となる。こうした現実は、実は地方大学にとってチャンスでもある。自学のユニークな点や特徴に輪郭を与えて明確にし、受験生や企業へアピールする戦略がより一層重要となる。こうした変化を先取りしながら、大学を変革していくことは、少子高齢化の時代において自学が生き残るための最適な解となるだろう。

東洋経済オンライン

関連ニュース

最終更新:10/21(水) 8:11

東洋経済オンライン

投資信託ランキング