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「田舎の親の空き家」をお荷物にしない再生術

10/18 6:01 配信

東洋経済オンライン

 少子高齢化が社会の大きな問題になる中で、空き家の増加が深刻度を増しています。筆者は夫婦問題(パートナー)コンサルタントとして数多くご相談を受けていますが、最近目立つのが、親名義の家の相続にまつわるトラブルからヒビが入ってしまうケースです(そこから浮気・モラハラ・ヒステリー・うつ病などへ発展してしまうケースもあります)。

 夫婦の親が元気なうちに、家の処分についてきちんと考えることができればいいのですが、そうならないことが圧倒的に多いのが現状です。相続の分け方は一筋縄ではいきません。解体するだけでも多額のコストがかかります。そのため、親が亡くなった後も、どうすることもできず、放置されている空き家が少なくありません。

■半世紀前から上昇し続ける日本の「空き家率」

 総務省統計局の「平成30年住宅・土地統計調査」から調べてみると、実はこの空き家問題、ここ数年の問題ではなく、さかのぼることかなり前から兆候が表れています。

昭和43(1968)年⇒全国で住宅総数が世帯総数を上回る(空き家率:1.01%)
昭和48(1973)年⇒全都道府県で住宅総数が世帯総数を上回る(空き家率:5.5%)
 平成30(2018)年には、住宅総数6241万戸に対し世帯総数は5400万世帯となり、「空き家率」は13.6%まで上昇しています。

 空き家の「総数」は、この20年間で約1.5倍(576万戸→849万戸)に増加しています。とりわけ、何かしらの理由で人が住んでいない住居は、20年間で2倍弱(182万戸→349万戸)も増えています。空き家の総数は今後、さらに増えていく可能性が大きいのではないでしょうか。

 というのも、空き家問題の背景には「土地神話」も横たわっているようなのです。今の30~40代の親世代、「アラ70~80代」の人たちは、日本の高度成長期に青春時代を送りました。

 就職後はバブル景気の中で企業戦士のように働き、給料も右肩上がりに上昇しました。そして「土地は必ず値上がりする」といわれる中で、都心から離れたところであってもマイホームを購入した人が少なくありません。子どもの成長や転勤などで生活に変化があったときも、手にしたその家は「将来は子どもが住めばよい」と売却することなく、むしろ担保物件として、新たな不動産を追加購入するために使ってきた──という人が多いのです。

 ところが、家が老朽化した今、子どもたちは都心部へ移り住み、古くて不便な不動産には見向きもしなくなりました。借金はないものの、家の資産価値は大幅に値下がりし、場所によっては半減どころか、10分の1程度になっている家もあります。なんと切ない話でしょうか。昨今、ローン審査が厳しくなり、若い夫婦の審査が通らない様子を見ている筆者としては、当時の銀行の無謀な融資に悲憤してしまうのです。

■長期間放置すると「特定空き家」に指定される

 そうした親世代が高齢者となり、介護施設に入所をしたり亡くなったりしている中、空き家が増え続けているのが実情です。30~40代になった子ども世代は、家を修理するのにも高額な費用が必要です。誰も住む予定がない家にお金はかけたくないでしょう。家が建っていれば固定資産税は安いので、そのまま放置していればいい。そう思う人が増えたのも無理はありません。

 政府は空き家問題について、平成27(2015)年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」を施行しました。「適切な管理が行われていない空き家等が、防災・衛生・景観等の地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしている」として法規制を強化したのです。下記の4つの基準に該当する「特定空き家等」に認定されると、行政は、処置の実施のための立ち入り調査、また所有者に助言・指導・勧告・命令・代執行(強制執行)の処置を行うことが可能になりました。

<特定空き家等に該当する4つの基準>
① 倒壊など著しく保安上危険になるおそれのある状態
② 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
③ 適切な管理が行われないことにより、著しく景観を損なっている状態
④ その他、周辺の生活環境の保全を図るために放置をすることが不適切である状態
 家がこんな状態になる前に、周辺の住民に対して迷惑をかけたり、トラブルになったりすることは避けたいものです。また、自然災害(雨・雪・風)などの被害が見込まれる地域については、とくに強化されるといわれています。

 では、もし親名義の家を処分することもできず、空き家になってしまったら、何か解決の糸口はないものでしょうか。

 キーワードは「空家対策特別措置法」の本来の目的でもある「活用」です。都心部のマンションでは、中古物件を新築同様に再生させるリノベーションが流行しています。でも、都心部から離れた場所や地方にある空き家の戸建て住宅を、リノベーションすることなどできるのでしょうか? 

 そこで今、全国から問い合わせが急増している専門家がいます。空き家再生専門の不動産会社「オハナホーム」の菊池聖雄社長は、関東を中心に空き家の再生や相続の相談などを行っていますが、全国の相続診断士から問い合わせが殺到しているといいます。

 具体的に、菊池社長は、空き家の何をどうするのでしょうか。

 まず、空き家の問題の「原点」は、自宅不動産以前に家の中にある荷物です。物を大切にする(断捨離できない)親世代がため込んだ荷物の量に頭を抱える──というケースが多くあります。

 オハナホームでは、荷物の処分から手をつけるそうです。親世代は不要な荷物を大事に持ち続けているのに、権利書や契約書、購入時の領収書といった重要書類をなくしているケースもあります。これらは探し出す努力をします。大量の荷物を整理している途中で見つかる、そんなことがよくあるそうですが、これらの書類があるか否かで、不動産処分をする場合の税コストが大きく変わってきます。

■不動産購入費が不明の場合、譲渡税が増えることも

 例えば、不動産を購入したときの金額がまったくわからず、契約書や領収書も見つからない場合は「概算取得費」という仕組みが売買する際に適用されます。購入費が不明なので「売却時の5%を購入金額として計算する」というルールです。500万円で不動産を売却した場合、5%の25万円が取得費で、475万円が売却益となり、譲渡税は475万円に課税されることになります。課税される割合には2種類あります。

① 長期譲渡税の税率
売却した年の1月1日現在で、所有期間が5年以上⇒20%
(475万円の場合は95万円)

② 短期譲渡税の税率
所有期間が5年以下⇒39%
(475万円の場合は約185万円)
 実際には譲渡益が出ていなくても、証明する書類がないと、このように課税されてしまうのです。

 家を売却したり建て直したりしたいけど、できない──というケースもよくあります。実際、筆者のご相談者にも「親所有の不動産ですが、建築基準法の改正で再建築ができなくなりました」という方がいます。そのような場合に、注目されているのがリフォームです。

 リフォーム技術は進化しており、コストを抑えながらでも見違えるような家に変身することもあります。リフォームは経験がものをいいます。前出の菊池社長は数多くのリフォーム再生を手がけていますが、筆者がリフォーム前後の写真を拝見すると、驚愕するほど見違えてしまいました。

 空き家の再生が注目されている背景にはコロナ禍の影響もあります。今年春以降、在宅勤務する人が急増しましたが、そのために家族の空間が密になっています。それが裏目になって、亀裂が入った夫婦、家族も少なくありません。実際、コロナ離婚問題は急増し、夫婦問題業界は相談が増加しているのです。

 また、小さな子どもが家にずっといたりすると、とくに都心部のマンションなどでは「騒音問題」が起きています。マンションの音は、構造上、上下左右に直接伝わるわけではないようで、「お宅はうるさい」「うちには小さな子どもはいない」という争いや、「隣の人が室内で健康器具を使っているようで、その音で悩まされている」という話も聞きます。それが引き金となって郊外や地方へ引っ越しを希望するケースが急増しているそうです。

 さらに、住宅ローン問題も背景にあります。若い夫婦だけでなく、コロナ渦で先行きが不透明などという理由で中小企業に勤める方のローン審査が厳しくなっています。ペアローンでは、子育てで時短勤務になる妻の査定も厳しく、泣く泣く住宅購入を諦めるケースも出てきています。そのような場合、親世代の空き家がもしあれば、再生活用することを考えてはどうでしょうか。

■「サーファーの家」に再生された「ゴミ屋敷」

 空き家の中にはゴミ屋敷のような物件も少なくないといいます。菊池社長はそうした物件の再生にも対応していますが、この手の不動産は物件価格が低く、手数料も安いために業者からは嫌われており、実際、「ほかのところでは対応してくれなかった」と顧客から感謝されることが多いそうです。場合によっては、菊池社長が自分で買い取り、賃貸業をするケースもあるとのこと。ゴミ屋敷のような家でも、「これは再生できる」と勘が働く物件もあるそうなのです。

千葉の海に近い物件は、再生後、サーファーたちが休日利用の家として借りているといいます。以前、「古民家シェアハウス」をテーマに「月2万で古民家シェアを実現した夫婦の家計簿」というコラムを書きましたが、今の時代、余暇を楽しむために地方にセカンドハウスを借りる需要もあると思います。

 実は菊池社長には、お子さんが5人います。前の奥様との間のお子さんが1人、今の奥様のお子さんが2人。そして、今の奥様との間のお子さんが2人。菊池社長の家族はステップファミリー(子連れ再婚夫婦)です。大家族の菊池一家が住む自宅も「空き家再生」した大きな家。ステップファミリーには大きな家が適しているかもしれません。近所には、地域の子どもや高齢者たちが集える、コミュニティハウスも建設中とか。なんて素晴らしいことでしょう。広がってほしい事業です。

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最終更新:10/18(日) 6:01

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