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三菱地所、東京駅で進める「日本一ビル」の勝算

9/30 5:21 配信

東洋経済オンライン

 9月17日、三菱地所が東京駅日本橋口前の常盤橋エリアで進めている再開発プロジェクトの名称を、「TOKYO TORCH」(トウキョウ トーチ)に決定したことを公表した。

 当該エリア内には、高さ約212m、地上37階建ての「常盤橋タワー」、高さ約390m、同63階建ての「トーチタワー」のほか、高さ約53m、9階建ての東京都下水道局棟、それに地下4階建ての変電所棟の計4棟のビルが建設される。

 現在建設中の常盤橋タワーは2021年6月に竣工する予定で、東京駅周辺では205mのグラントウキョウノースタワーを抜いてもっとも高い建物になる。2027年度に竣工予定のトーチタワーは、現時点で国内最高のあべのハルカス(300m)、2023年3月竣工予定の虎ノ門・麻布台再開発地区メインタワー(325m)を抜いて、国内最高となる予定だ。

■東京を松明のように照らすビル

 「トーチ」の名前は、ビルの頭頂部分に松明(たいまつ)を模したデザインを採用していることに由来している。東京を、そして日本を照らす松明という意味を込めた。

 同時に公表したのが、2016年に決定を受けている都市計画の変更案だ。従来、オフィスと商業施設、都市観光施設としてきたフロア構成に約100室の国際級ホテルと約2000席の大規模ホールを加え、オフィスロビー等のオフィスサポート機能も増やす。エリア全体で1万2000平方メートルとしてきた屋外空間も2万平方メートルに拡張した。

 この結果、トーチタワーの延べ床面積は49万平方メートルから54万4000平方メートルへ約1割増床される。1割もの増床が可能になったのは、隣接する呉服橋交差点地下通路の整備やJR高架下歩行者空間の美装化の費用を三菱地所が負担し、さらには近くを走る首都高の地下化実現へ協力することで、容積率の割り当てを受けたからだ。

 新型コロナ禍でインバウンド需要が蒸発。一部に緩和の動きはあるとはいえ、イベントを開催するのに引き続き大幅な制限を受ける中、ホテル需要も大規模ホールの稼働率も壊滅的な状況にある。

 多くの企業がテレワーク導入を余儀なくされ、富士通が国内のオフィス面積を2023年3月までに半減、東芝も2023年をメドに、段階的に3割削減する方針を打ち出す中、オフィス不要論も跋扈する。

 オフィス仲介大手・三鬼商事のオフィス需要調査によると、8月の都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)の空室率は3.07%。平均募集賃料は坪当たり2万2822円だった。2020年2月の空室率は1.49%と、バブル終焉直後の1991年末をも下回る水準だったが、新型コロナの感染が広がった4月以降は月を追うごとに上昇した。

■大手町、丸の内の優位性は動かず

 2014年1月から7年8カ月にわたって上昇を続けてきた平均募集賃料もついに下落に転じた。約2万3000円という平均募集賃料は、1年前よりもまだ4.7%ほど高く、リーマンショック直前の2008年5~7月ごろと同程度で、歴史的に見れば悲観するような水準ではない。

 だが、6カ月前通告が原則のオフィスの賃貸契約の解約は、10月以降に本格化することも予想される。ちなみに、リーマンショック時に空室率の上昇が顕著になったのはショック勃発から7カ月後の2009年4月ごろからだった。

 そんな悲観論も交錯する中で三菱地所は強気ともみえる増床計画をブチ上げた。三菱地所の吉田淳一社長は17日の会見で、「今後のオフィス需要については不透明な部分もあるが、丸の内・大手町エリアには企業の戦略部門やそれをサポートする法律事務所や監査法人、金融機関や商社が集積しており、選ばれる街に新しい魅力を付加できる」と、テナント募集に自信を見せた。

 コロナ禍を機に働く場所の自由度は上がったが、戦略を立案したり、重要な意思決定をするのはオンラインだけでは限界がある。新しい価値を生み出していくには、人同士のリアルな接触も必要になる。したがって、丸の内、大手町エリアのオフィス街としての優位性は揺るがないというわけだ。

 主要デベロッパー各社による都内の大規模再開発は、五輪が開催されるはずだった2020年度で一段落するものの、2023年度以降も計画が目白押しだ。

 表は計画が進行している高さ100m以上のオフィス中心のビルを柱とする大規模再開発計画を集計したもので、タワーマンションなど住宅中心の計画は除外してある。トウキョウトーチの開業は五輪以降も続く大量供給の後。それだけに三菱地所の強気ぶりが際立つ。

■中長期のオフィス需要に楽観的な声

 もっとも、中長期のオフィス需要見通しに楽観的なのは三菱地所だけではない。JR東日本、東急、住友不動産、三井不動産、森ビル、森トラストの6社に今後の需要見通しなどを尋ねたところ、回答のなかった森ビルを除く全社が「足元での(テナント契約の)解約はほぼなく、計画の縮小もない」と回答した。

 JR東日本と森トラストは「(中長期のオフィス需要は)ソーシャルディスタンス確保のため、1人当たりの床面積を増やす動きに期待できる」と回答。三井不動産は「企業にとってオフィスを減らす決断は簡単ではないはず」と答えるなど、慎重ではあっても悲観論は聞かれない。

 足元が厳しいホテルの中長期の需要については、トーンに若干ばらつきがある。森トラストが赤坂ツインタワー跡地でNTT都市開発と共同で進めている「赤坂2丁目プロジェクト」は、オフィス主体でホテル、サービスアパートメント、店舗、診療所も設けるプロジェクトだが、「計画に変更はなく、2025年の全体竣工に向け予定どおり進めている」(森トラスト)という。そして、「首都圏から車で気軽に行けるエリアのリゾートでは、秋の観光シーズンに向け、予約は上向いてきている。国内の観光需要、ビジネス需要の順に回復し、インバウンドは早くて来年の旧正月が重要なポイントになる」としている。

 2022年8月竣工予定の八重洲2丁目プロジェクトで、日本で初めて世界有数の最高級ホテル・ブルガリホテルを誘致する三井不動産も、「今は訪日需要に強制的にフタがされている状態だが、長期的には日本は魅力のある国だから回復は見込めると思う。部屋数を追うつもりはないが、ホテル開発はこれまでどおり継続する」という。

 これに対し、JR東日本は「新型コロナウィルスの収束時期が不明で、需要回復時期を精緻に見込むことは困難だが、ホテル事業はインバウンドの恩恵が大きかったので、以前の水準までの回復にはかなりの時間を要すると考えている」と慎重で、見方が分かれた。

 トウキョウトーチ計画で国際級ホテルや大規模ホールを組み込んだ意図について、三菱地所は「ホテルは東京駅前の立地を生かした日本の拠点として、国際級のホテルが必要と考えた。ホールは大丸有(大手町、丸の内、有楽町)や東京全体でのMICE機能を担う意図で追加した」と説明している。

 日本を代表する国際級ホテルやMICE機能を備えたホールを設けておくのは、東京駅の目の前で日本のシンボルを自負するビルを建てるデベロッパーとして、当然に果たすべき責務ということなのだろう。

 保有不動産に3兆8000億円もの含み益を持ち、年間3400億円を超える営業キャッシュフローを稼ぎ出す同社ならではの余裕と言えそうだ。

東洋経済オンライン

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最終更新:9/30(水) 6:57

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