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日本の住宅が「暖房しても寒い」根本的な理由

9/30 9:01 配信

東洋経済オンライン

 新型コロナウイルスの影響で家にいる時間が長くなってきている。家はこれからテレワークの場所として、より快適性を求められることになる。そういう家の性能の話をしよう。

 昨今、「高断熱高気密住宅」という言葉もあるように、家はどんどん暖かくなっている。

 だが、よく勉強せずに家を買った人から聞くのは、「ハウスメーカーの展示場に行って家を買った。でも思ったほど暖かくない」とか「最近はそういう性能のいい家が求められると聞いていたので、期待したがそれほどでもない」といった話だ。

■日本の「断熱性能の基準」は「世界最低レベル」

 日本の大手の住宅メーカーに対する信頼は比較的高い。「あの会社が言っているのに、そんなに暖かくないなんてとんでもない」という感じである。だが、実際、多くのハウスメーカーが「暖かいですよ」と言って建てる家は、そう暖かいわけではない。一方で、きちんと暖かい家を作ることができる工務店は増えてきている。つまり「暖かさのレベル」がいろいろと混在しているために、消費者は間違えやすいのだ。

 例えば、展示場に行くときは、その家そのものではなく、裏へ回ってエアコンの室外機を見るべきだ。たいていは何台も室外機があるだろう。これまでの家の常識の範囲内である。そういう家は寒いといって差し支えない。一方、高断熱高気密住宅というのは、エアコン1台もしくは2台だけで快適な空間をつくることができる。家の性能が高いから、エアコンの台数を減らせるのだ。

 どうしてこういうことが起こるのか。少し分析してみよう。

 実は、残念ながら日本の家の断熱性能の基準は世界に比べると著しく低い。海外赴任から帰った日本人が、自国の質の低さにようやく気づき「日本の家の壁や窓がペラペラで、寒冷地でもないのに寒くて困った」という話をするが、まったくそうなのだ。すでに隣の韓国や中国も、今や地球温暖化防止のために基準を年々上げている。そのなかで断トツに低いのが、日本の断熱性能の基準、すなわち省エネルギー基準だ。

 ではなぜ、日本はそれを放置しているのか。2020年に小規模の住宅であっても断熱が義務化されるはずだったが、見送られてしまった。一説によると、消費税導入などで景気が冷え込みそうなときに、基準を強化して不況になったら大変だという思いもあった、と聞いている。住宅の性能を上げるチャンスだったのに、最初の一歩が延期されてしまった。いずれにしても、それにはそれなりの理由があるようだ。

 この円グラフを見ていただきたい。義務化しようとしていた省エネ基準(1999(平成11)年基準)の建物は全体の5%しかない。これを一気に義務化すると、中小の工務店がついてくることができないから延期する、というのが、断熱を強化する省エネ基準にしたくない側の理由の1つだ。

 しかし、そもそも20年以上昔の1999年に定められた基準が「次世代省エネ基準」として、いまだに住宅業界で現役であること自体がおかしいではないか。しかも、この古い省エネ基準で作った家を「高断熱住宅」にしようという流れにもなっている。それほど優秀でもない住宅を、高断熱高気密住宅と呼んでいるのである。

 確かに、日本の上位5%の高性能である。だが、この住宅では今まで建てられてきた住宅の体感とさほど大きく変わらない。でも営業マンは、このレベルを高断熱であると言い、消費者は「そこまで言うなら、そんなものかな」と納得させられてしまうのである。

■独由来の高性能住宅と日本の省エネ住宅の著しい「格差」

 このように、日本では低い断熱性の基準が放置されている。その一方で、世界基準を見据えたり、あるいは寒冷地から始まった断熱性能のしっかりした住宅が、静かなブームにもなっている。これはある意味で、工務店業界での流行だ。これから着工件数が減ると見られる建設業界において、「差別化して、特徴のある家づくりをしよう」という危機感を持った工務店が意欲的に勉強会を開いたりして、高性能住宅を作り始めているのである。

 【2020年10月5日20時30分追記】初出時、図表の数字に誤りがありましたので修正しました。

 上の比較表を見てほしい。「パッシブハウス基準」とは、ドイツの研究所が規定する、世界で最も厳しい省エネ基準である。同国のファイスト博士が、建物の換気の際に最低限の暖房を施すことで、全館暖房ができる性能を求めて決めた基準だ。100平方メートルの家で見ると、年間に消費する18リットル灯油タンクは8.3本。一方、前出の日本の2020年省エネ基準(1999年基準)の住宅では55.6本も必要だから、燃費にして約7倍の開きがある。パッシブハウス基準はそれほどの省エネ性能を住宅に求めるのだ。

 一方「Q値1.0ハウス」は、断熱性能の高さを数値化した熱損失係数(Q値)が「1.0」になるように目指す基準である。「Q1.0(キューワン)」を実現すると超省エネの高断熱住宅とされる。日本の「一般社団法人新木造住宅技術研究協議会(新住協)」が設けている基準である。

 また「HEAT20」は「2020年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会」というところが出している基準である。2つのうち性能の高い「G2レベル」の場合、それで東京で住宅を建てたとして、北海道の住宅における高断熱高気密の省エネ基準くらいの性能になる。「G1レベル」は2020年省エネ基準とG2レベルの中間だ。

 筆者が考える「高断熱高気密住宅」は、このG2レベルを超えたい。G2レベル以上になると、パッシブハウス基準には及ばないが、今までの家とはまったく違う暖かさを感じることができるからだ。このレベルになると、普通の家なら、各階1台のエアコンで制御可能だ。具体的に言うと、冬、寝る前に暖房を切っても、翌朝13度以下にはならない。

 このように、確かに断熱性能は重要な指標である。だが、それだけで住宅をすべて評価するのは早計だ。断熱性能を上げようとすれば、熱損失の大きい窓は小さくなる。高温多湿の日本において、風通しはとても大事だ。この風通しをどれだけ確保しているかを比べるには、別の指標を用いたほうがいい。それが「暖房負荷」の数字である。

 暖房負荷は、住宅の1平方メートル当たりにかかるエネルギー量を比較する。前のページの比較表を見ると、その数字が小さいほど高性能ということになる。性能がよければよいほど、使うエネルギーは少なくて済む。それだけではない。住宅の内部の環境もどんどんよくなってくる。暖かい家にいると健康にいい。体温が上がり、免疫力もアップするだろう。ぜんそくやアレルギーが治り、新型コロナウイルスのような感染症にもなりにくくなるかもしれない。

■温熱計算ができない工務店は、家を作る資格なし

 もし皆さんが暖かい家を手に入れたいと思うのであれば、ぜひこれまで述べたような基礎知識をつけてからオーダーしてほしい。

 では、オーダー先となる「いい工務店」は、どのようすれば見つけることができるだろうか。工務店に「住宅の気密測定はしていますか?」あるいは「住宅の性能を1つずつ計算していますか?」と聞けばいいのだ。それで、住宅の気密に対する知識と経験があれば、合格。また、1つひとつ、上記のような温熱計算をしているのであれば、合格である。

 もうお気づきだろう。ここでいう温熱計算で出される数字は、実は燃費のことなのである。自動車だったら、営業マンが「この車は燃費いいですよ」と言えば、「リッターあたり何キロぐらい走るのか」と気になる。その答えが示されないまま、いくら「燃費がいい」と言われても、判断できるものではない。車よりもはるかに長持ちし、一生ローンを払い続ける家にも、燃費はあってしかるべきだ。それを計算できない工務店や設計士は、家を作る資格がないのではないか。

 確かに、断熱性能をよくすれば快適になるが、初期費用もかかる。断熱材や窓の性能を上げるだけで従来仕様よりは150万~200万円も上がってしまう。だが、3LDKで4室それぞれにエアコン設置しているのが、今の日本の住宅なのだ。断熱性能の高い「暖かい家」に必要なエアコンは1台あるいは2台だ。初期投資は「暖かい家」のほうがかかるが、エアコンの買い換えや光熱費などを計算に入れると、どちらがコスト高になるのか、そう遠くないうちに判明するはずだ。

 今回のコロナ騒動で、家にいる時間が圧倒的に増えている。これから冬になるが「暖かい家」に暮らせば体温が上がるので免疫力も上がり、感染や重症化も回避できる。加えて、快適に過ごせるのである。これから家の購入を考えている方は、ぜひ参考にしていただきたい。なお、この記事は新築住宅を前提として書いたが、改築でも同じように断熱強化することは可能だ。次回はリノベーションについて書いてみたい。

東洋経済オンライン

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最終更新:10/5(月) 20:16

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