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86歳現役が語る定年後を惨めにしない仕事指南

9/29 11:01 配信

東洋経済オンライン

今までの日本人の人生設計には、典型的なパターンがありました。大ざっぱに言えば、20年学び、40年働き、15年を年金で暮らすというものです。しかし20年学んだ後、「40年働く」という生き方はすでに時代に合わなくなっています。
60代の日本人は、まだまだ働ける人たちばかりです。現役サラリーマンの読者であれば、60歳での引退が「早すぎる」ことは、すでに自分事として感じていることでしょう。いったい私たちは今後、何歳まで働くのか。そのために必要なことは何か。86歳の今も現役で働く田原総一朗氏が、新刊『90歳まで働く――超長生き時代の理想の働き方とは?』をもとに解説します。

■人生設計を書き換えるとき

 数年前、私は京都大学・iPS細胞研究所の山中伸弥教授にインタビューをしました。そのときに、あと数十年もすれば、がんをはじめとするあらゆる病気が治る時代が来るという話を聞きました。

 人生100年どころか、人間の寿命は120歳くらいまで延びようとしています。そうなれば、40年働き終えた60歳は、まだ人生の折り返し点です。定年を迎えても、人生はまだ半分も残っている。人生の後半を幸せに生きていきたければ、日本人は人生設計そのものをドラスティックに書き換えるしかなくなっているのです。 

 働く環境も大きく様変わりしてきています。AI(人工知能)の研究が進み、人間の仕事をコンピューターが代替する社会は、もはや未来の話ではなくなりました。あと10年もすれば、AGI(汎用人工知能)の実用化が始まります。自ら学習して成長するAGIが社会実装されれば、多くの職場で人間は不要になります。

 オックスフォード大学と野村総研の共同研究グループは、日本の労働人口の約49%が就いている職業において、仕事は機械に代替が可能だと発表しています。つまり、60歳以降も元気で働ける人が増える一方で、働く場はどんどんなくなっていこうとしているわけです。

 そんな時代を幸せに生きていくためには、できるだけ若いうちに従来の「仕事」という概念や認識そのものを大きく変える必要があるでしょう。私が皆さんに伝えたい「人生設計を書き換えよう」という提言は、“おいそれとは死ねなくなる将来に対する準備”と言い換えてもいいのです。

 2014年に施行された高年齢者雇用安定法の改正によって、一般企業で行われてきた60歳定年制は、もはや一昔前の仕組みになりました。60歳以降の再雇用は定着してきたし、定年そのものが年金受給年齢に合わせて65歳に引き上げられようとしています。さらに、政府は70歳まで働き続けられる制度の導入を打ち出していて、その就労環境の整備は2021年4月から企業の努力義務となります。

 すでに社会は、40年働く時代から「働けるうちは働く時代」へとシフトしました。問題は、働けるうちは働くという生き方にとって、定年後の雇用延長という仕組みが、実は大きな落とし穴にもなりかねないことです。

 60歳以降も会社で働けるといっても、それ以前と同等の条件で働ける人は少数派です。多くは嘱託的な雇用となり、給与が半分以下になったり、キャリアを生かせない単純労働に就かされたりする。その働き方は、はたして「自分らしい人生」と呼べるでしょうか。

 もっと言うと60歳で会社に再雇用されても、70歳までに退職させられるのが現状です。そこから自分らしく働ける生き方を探し始めても、簡単には見つからないでしょう。ということは、まだ働ける10年、20年を、あるいは100歳までの自由に使える30年間を、漫然と生きることにもなりかねません。

■会社から与えられた肩書、退職後は無価値

 定年後に、個人の名刺を作る人もいます。会社に属していなければフリーランスです。私も立場はフリーだから、自分の名刺には名前と連絡先しか記していません。しかし、社名や肩書のない名刺では不安なのか、「元××株式会社 常務取締役」などと、退職した会社での地位を名刺に刷る人もいます。

 残念ながら、定年後の“今の自分”を評価してもらうには何の役にも立たない情報です。会社から与えられた肩書は、会社に属している間しか通用しない。「元××」が、たとえ熾烈な出世競争の末に勝ち取ったポストであったとしても、退職した人間の価値まで保証してくれるものではありません。より長く現役で働くために必要なのは、“今の自分”を表現できる生き方なのです。

 現役サラリーマンであれば、よほどの事情がない限り、定年までは今の会社で頑張ろうと考えている人が多いのではないでしょうか。私もテレビ東京で働いていたときは、たとえ万年平社員のままでも、定年を迎える前に会社を辞めるとは思ってもいませんでした。

 まだ就職してから「40年働く」人生設計が当たり前だった1970年代は、フリーランスという働き方も、今ほど市民権を得てはいませんでした。40代で会社を飛び出したりすれば、残りの人生は苦労をすると考えるのが普通でした。私自身、42歳でフリーになった直後は、将来に対する不安で眠れなくなる日もありました。原稿の依頼は来ていましたが、いざとなればアルバイトでも何でもやって食いつなぐ覚悟をしていたものです。

 しかし今になって思えば、42歳で会社を辞めざるをえなかったのがとてもよかったと思っています。60歳までテレビ東京にいれば、私の仕事人生はそれで終わっていたのではないでしょうか。私はフリーランスとしてやりたいこと、そして世の中のニーズを懸命に考えざるをえなかった。42歳の若さだったから、そのエネルギーがあったのだと思います。

■将来への「不安」は自分らしく生きるための「課題」

 今、働くゴールは20年近く延びようとしています。定年を迎えた後、会社に再雇用されても、給料は大幅に下がるし、年下の上司に管理されながら望まない仕事をやる毎日が待っているかもしれません。しかし、定年まで同じ会社で働く必要などなく、もっとやりたい仕事が見つかれば、いつでも会社を辞めればいいのです。

 私は会社を辞めた直後に将来への「不安」を感じたと述べました。この「不安」は、見方を変えれば、会社を頼らずに自分らしく生きるための「課題」みたいなものです。自ら学び、日々成長していかなければ、仕事はなくなるかもしれません。

 能力の現状維持だけでは、いずれは賞味期限が切れてしまうように、働き手として世の中からは求められなくなってしまいます。やりがいのある仕事を長く続けるためには、働ける自分を絶えずアップデートしていくことが必須条件になるのです。

 そもそもフリーになったとき、私は90歳まで働くつもりだったわけではなく、1日でも長く現役で頑張りたいという気持ちだけで、その日、その瞬間を、全力で生きてきたというのが実感です。ただ、改めて歩んできた道を振り返ってみると、今の自分を支えている4つの資産が浮かび上がってきます。

 好奇心、教養、人脈、そして目標――。これらは、現役サラリーマンにとっても大事な資産です。と同時に、定年を迎えて会社を辞めた途端、失いやすい資産でもあります。持つべき発想は、この4つの資産を60歳で使い切るものと思わずに、定年後の人生にも存分に生かせるよう、会社にいるときからつねに磨き続けることではないでしょうか。

■定年後を支える4つの資産を活用する

 ここで4つの資産の磨き方を一部紹介します。

 ・好奇心
自分にないものを持っている相手をリスペクトできなければ、真摯な姿勢で情報を得ることはできなくなります。自分自身の知見と感性をアップデートしていくためには、若い人たちから得る情報はとても貴重です。

 ・教養
何かを主張するときは、論拠となる知識や情報が多いほど説得力に富んだ内容になります。「六十の手習い」という言葉があるように、新しいことを学び始める時期に年齢は関係ありません。私も60歳を過ぎてから、日本の近現代史を一から勉強し始めました。

 ・人脈
私を批判する人がいれば、それは私の原稿や発言にしっかり向き合ってくれたうえでの反応なのだと思うことにしています。自分の人生を豊かにしてくれる人脈というのは、本音でものが言えて、そのうえでお互いを高め合うことができる関係でなければならないと思います。

 ・目標
いつまでも元気で働きたいという目標は、誰の人生にも設定できる大きなテーマですが、その反面、とても漠然としています。そこで、自分がわくわくするような“夢”や“希望”を未来に用意してやるのです。 

 私が実践してきた“自分磨き”は、4つの資産を定年後も存分に活用するためのトレーニングみたいなものであり、自分らしく生きるための「課題」への克服法といえます。その中には、読者の皆さんにも共感できるところが少なからずあるのではないかと思っています。 

東洋経済オンライン

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最終更新:9/29(火) 11:01

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