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「日銀化」するFRB でも違うのは……?

9/29 11:50 配信

THE PAGE

 新型コロナウイルスがもたらした経済危機に各国の中央銀行が苦悩する中で、第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストは米連邦準備制度理事会(FRB)と日本銀行に類似点と相違点を見出します。藤代氏の考察です。

ゼロ金利、量的緩和……次々導入

 米国の中央銀行であるFRBが「日銀化」しています。FRBは、かつて日銀が採用したゼロ金利政策、量的緩和策、金融緩和の長期化を宣言する時間軸政策(現在はフォワードガイダンスと呼ぶのが一般的)を次々に導入しています。現在、日銀が実施しているイールドカーブ・コントロール政策(長期金利を特定の数値に固定)こそ導入していませんが、今春には導入が取り沙汰されましたし、今後の動向次第では再び議論が盛り上がることも十分に考えられます。

 一方、日銀とFRBで異なるのは政府との関係です。どちらの中央銀行も政府から「独立」しているのは同じですが、日銀が政府の財政政策に注文をつけることは「御法度」のような空気があるのに対して、FRBはかなりオープンに主張を展開します。象徴的だったのは9月23日のパウエル議長、クラリダ副議長、ローゼングレン ボストン連銀総裁、エバンス シカゴ連銀総裁の発言です。

【パウエル議長】

「コロナ禍からの景気回復が進展しているとはいえ、コロナ前の2月時点と比較すると、なお何百万人もの失業者がおり、道のりは長い」「景気回復への取り組みを続ける必要がある。議会とFRBの双方が支援すれば、回復のスピードは速まる」「追加経済対策をめぐる政治的行き詰まりの中、追加財政支援が必要になる可能性が高い」。また22日の下院金融委員会では「先行きはコロナウイルスの抑制、政府のあらゆるレベルでの政策措置にかかってくる」と発言。24日の上院金融委員会では「(家計が)最終的に資金を使い果たし、支出削減を余儀なくされ、家を失う恐れがある」「これは追加措置を行わない場合のリスクだ。このようなケースはまだ見られないが、そう遠くない将来に現れるかもしれない」とした。

【クラリダ副議長】

「2%のインフレ率が実際に少なくとも数か月続き、さらに完全雇用を達成するまで金融当局が利上げを検討することはない」「数か月前の当局者の予測よりもこれまでの景気回復は力強いが、今後は困難な道のりになる。財政政策による支援が役立つ」

【エバンス シカゴ連銀総裁】

「労働市場が完全雇用に達し、インフレ率が持続的に2%を維持するまでFRBは金利をゼロに据え置く」「インフレ率が2%を明確に上回り、2.5%やそれを上回る水準を追い求めて緩和を強化することを恐れていない。さらに緩和が必要ならばそうするだろう」「財政政策のスタンスは重要。小規模企業には融資ではなく支援供与が必要」

【ローゼングレン ボストン連銀総裁】

「新型コロナの流行が予想以上に長期化しており、企業や家計を引き続き支援するため、追加の財政政策が必要」「コロナの流行が3か月なら問題なかったが、かなり長期化しており、より的を絞った支出が明らかに必要だ」「経済がコロナ禍前の水準に戻るにはワクチンが幅広く行き渡ることが必要。それまで金融、財政政策は極めて緩和的に維持される必要がある」

政府に財政支出を求める明示的な言及

 このように上記の4氏は、財政政策の必要性について明示的に言及しています。金融緩和ツールをほぼ使い尽くし、金融政策の限界が試されている状況で「開き直り」とも言える姿勢を示し、政府に財政支出拡大を促した形です。景気が減速したら、それは「政府の責任だ」と言わんばかりの主張です。

 他方、日銀が政府の財政政策に言及することは極めて稀です。黒田総裁は会見などで記者から質問があった際、常々「政府がお決めになること」として距離を置き、財政政策への言及に慎重な姿勢を固持していますし、他の委員も同様です。例外的に片岡委員は「財政・金融政策のさらなる連携が必要」としていますが、「財政支出を拡大すべき」といった明示的な言及はありません。

 ちなみに、9月24日に発表された7月14・15日の日銀金融政策決定会合議事要旨(表紙などを含みPDFで23ページ)で「財政」と検索をかけてヒットするのは「9」。そのうち4つは片岡委員が「財政政策と金融政策の適切かつ緊密な連携が必要不可欠」とした文脈の中で登場するものであり、残りの5つは「財政支出の拡大」とは直接関係しないものでした。

 日本、米国ともに金融政策の出尽くし感が漂っているのは同様です。ただしFRBの高官が政府に景気刺激策を促すことで、金融政策の「穴」を埋めようと試みている点は大きく異なります。副作用の大きいマイナス金利導入に突き進む前に、財政政策に注文を付け、金融政策への依存を過度に高める事態を回避することの意義は大きいように思えます。

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※本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

THE PAGE

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最終更新:9/29(火) 11:50

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