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地方を強く、JR東日本「ローカル線戦略」の全貌

9/26 6:46 配信

東洋経済オンライン

 JR東日本がローカル線を対象とした設備投資や技術開発を次々と行っている。あと何年かしたら東日本エリアにおけるローカル線が様変わりしているかもしれない。

 9月4日、JR東日本は、秋田・青森エリアに投入する電気式気動車「GV-E400系」を秋田市内の車両基地で報道陣に公開した。従来の気動車はエンジンで車輪を駆動していたが、電気式気動車はエンジンで発電機を動かして発生した電力をモーターに送り、モーターが車輪を動かす。

■燃費向上、メンテも効率化

 電気式気動車は、従来の気動車と比べて環境性能や燃費が優れているという特徴がある。「当社で主力の(従来型気動車)キハ110系と比べ、エンジン単体で窒素酸化物(NOx)を約6割、黒煙などの粒状物質(PM)を約8割減らせる」とJR東日本の担当者は説明する。また、「従来の気動車の燃費は1リットル当たり1km未満だが、GV-E400系の燃費は同1.4kmと燃費が向上している」という。

 メリットはこれだけではない。「モーターが車輪を動かすという点で電車と同じ仕組みとなり、その分だけメンテナンスが効率化される」という。JR東日本は人手不足に直面しており、車両メンテナンス部門も例外ではない。電気式気動車の場合、エンジン以外の部分は電車とほぼ同じであるため、機械部品が大幅に減って作業の手間が減るほか、メンテナンス要員の配置も効率的に行うことが可能となる。

 電気式気動車の運転を行うには、気動車の運転免許と電車の運転免許のどちらが必要なのだろうか。JR東日本によれば、当面は気動車の運転免許保持者が運転を行うが、将来は電車の運転免許保持者に対しても気動車に関する追加の研修を行った上で、電気式気動車の運転を行えるようにしたいという。運転という点でも効率化が図られることになる。

 今回は奥羽本線、五能線、津軽線を走っている従来型気動車キハ40形、キハ48形の置き換えとしてGV-E400系23両が投入される。

 2019年には一足先に羽越本線、信越本線などに計40両のGV-E400系が投入され、2020年3月のダイヤ改正でキハ40系列からの置き換えが完了している。JR北海道でもGV-E400系と基本設計を合わせ、極寒対策仕様を施した電気式気動車「H100形」を導入し、キハ40形からの置き換えを進めている。

 JR東日本はGV-E400系のほかにもさまざまなタイプの車両を開発し、気動車からの置き換えを各地で進めている。豪華列車「TRAIN SUITE(トランスイート)四季島」に使われるE001形も、エンジンで発電した電力で駆動する機能を備えている。

 さらに、「ACCUM(アキュム)」という愛称を持つ蓄電器の電力を用いて駆動する車両もあり、EV-E301系が2014年から烏山線で走っている。秋田エリアでも男鹿線でキハ40形からの置き換えとして蓄電池式車両のEV-E801系が2017年から投入されている。

■無線技術で地上設備を削減

 このようにローカル線の車両が電気式気動車や蓄電池式気動車に置き換わりつつあるが、JR東日本は信号インフラでも新技術の導入を進めている。

 現在注力しているのは無線式列車制御システム。従来型の列車制御システムでは、列車がどこを走っているかは地上の設備が検知し、大量のケーブルを使って列車や踏切などへの情報伝達を行っているが、無線式列車制御システムでは、車両に設置された機器が位置検知を行い、無線で地上との通信を行う。地上設備が大幅に削減されるため輸送の安定性が向上するほか、メンテナンスも効率化され費用削減につながる。仙石線や埼京線で導入済みだ。

 さらにJR東日本はGNSS(全地球航法衛星システム)と携帯無線通信網を活用した世界初の列車制御システムを開発し、このシステムの踏切制御機能を検証する走行試験を八高線で開始すると9月3日に発表した。GNSSを使って列車機能を探知し、携帯無線通信網を使って列車や踏切などへの情報伝達を行う。仙石線や埼京線と異なり、自社の専用無線ではなく一般の携帯無線を使用する。

 一般の携帯無線を活用することから災害時などに通信異常が起きた場合には、自動的にブレーキをかける、踏切の警報を鳴らすといった対策が施されている。列車が停止する可能性もあることから本数の少ないローカル線区が選ばれた。踏切制御の試験を2021年1月まで実施、その後、列車の速度制御に関する試験も行い、試験結果の評価を行った上で、2024年度の導入を目指す。

 交通系ICカード「Suica(スイカ)」については、ローカル線区においても一段の普及を狙う。

 その場合ネックになるのはスイカ対応の自動改札機の設置費用だ。現状のスイカ対応型自動改札機は、乗降客が多い駅での使用を前提にしている。大勢の利用者が早足で改札機を通り抜ける間に、改札機に設置されたスイカ端末が瞬時にデータを読み取り、運賃を計算し、決済を行う。この処理に時間がかかると改札機の前で利用者が滞留してしまうため、大量のデータを高速で処理する性能を必要とする。自動改札機の1台当たりの価格は数百万円~1000万円台ともいわれる。

 しかし、利用者の少ない地方の駅でそこまで高性能な改札機は必要ない。そこでJR東日本は、クラウド技術を用いるなどの工夫を行い、改札機側で高度な処理をする必要がない簡易版システムの導入を検討中だ。改札機の導入コストを引き下げることによって、スイカが利用できる駅を地方に広げようとしている。

■コロナ禍でも成長投資は継続

 JR東日本は9月16日に2020年度の設備投資計画を発表した。新型コロナウイルスの感染拡大によって鉄道利用者が激減、同社の収益も落ち込んでいるが、2020年度の連結ベースの設備投資額は前期比300億円減とはいえ総額7110億円という大規模なものだ。

 「維持更新投資については、安全の確保を前提にした上でコストダウンをした」(同社)というものの、収益力の向上につながる成長投資は着実に実行したいという。

 地方における車両、信号システム、スイカなどの投資が進めば、JR東日本のローカル線区の収益力改善につながる。新型コロナの感染拡大が長引いて同社の経営がさらに悪化し、今後の設備投資に影響が出ないことを祈るばかりだ。

東洋経済オンライン

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最終更新:9/26(土) 6:46

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