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ヨーロッパで「日本のランドセル」が絶賛されている理由

9/26 11:01 配信

マネー現代

ランドセルのセイバン、欧州進出へ

(文 磯部 孝) ランドセル製造販売会社大手のセイバンが、ヨーロッパに向けて大人用ビジネスバッグの販売に乗り出した。

 その見た目はまさにランドセル。背負うタイプのもので、水や汚れに強い人工皮革を採用。背中にフィットし、かつ軽く感じさせるため、ランドセルに用いる技術を踏襲し、現地の協業会社と協力してビジネスバッグ「SICOBA(シコバ)」として販売することにした。

 同社は2年ほど前から中国や韓国で現地ニーズに合わせたランドセルのテスト販売に取り組んでいた。さらにここへきて海外での事業拡大を図るため、日本と同様にクラフトマンシップを重視し、物を長く大切に使う志向のあるドイツでの販売計画を進めるようだ。

 もしドイツでの販売が軌道に乗れば、後にヨーロッパ全域に供給したい考えであるという。そのため、現時点では日本国内でこの“大人向けランドセル”を販売する予定はない。

 セイバンは「大人向け製品開発の第一歩。日本から世界へと事業の幅を広げる足がかりとしたい」としているが、ランドセルという日本人にとって慣れ親しまれたカバンがヨーロッパ市場で受け入れられるのだろうか。

 現在の国内におけるランドセル市場や、ランドセルが普及するまでの歴史を振り返りつつ、これから日本のランドセルが広く世界に受け入れる時が来るのか、その可能性について考えてみたいと思う。

衰え知らずのランドセル市場

 現在の国内ランドセル市場として、下の図表を見てほしい。

 少子高齢化が進んでいる中にあっても市場規模は、ほぼ横ばいから微増といった具合だ。少子化によって年々利用者が減っていく反面で、ランドセルの高額化によって市場規模を維持しているような図式であることが分かる。

 そもそも子供の数は1974年に増加のピークを迎えてから年々減り続け、2005年には出生数が死亡数を下回り、日本の人口減少が現実のものとなって久しい。これだけ子供の数が減り続けていてもランドセル市場が活気を維持しているのは、やはり「祖父母の存在」が大きいと思う。

 シニア層の消費傾向の一つとされる、いわゆる「孫消費」。ある民間の調査会社のアンケートでも、シニア層が1年間に遊興費に使った金額の内訳を尋ねてみたところ、1位の旅行に次いで、2番手に「孫消費」が来るといった結果もあるくらいだ。

 このように日本のランドセル市場は、裕福なシニア達に支えられているといっても過言ではない。祖父母からの資金的バックアップを得て、今日の高品質、豊富な品揃え、老舗からスポーツまでブランドの多様化といった隆盛を実現している。

 その上、ランドセルの大半は先行予約による販売形式が消費者に受け入れられている。そのため他のアパレル商品と違い、廃棄ロスも少なく、メーカー側のメリットも非常に大きい。

 しかし、好況に映るランドセル市場も永遠に安泰とは言い切れない。それは日本の少子化自体に歯止めがかかっていないからだ。

老舗メーカーを襲う他業種の参入

 2023年には、新・小学一年生の数が100万人の大台を割り込む時代に突入する。いまの市場規模感を維持し続けるためには、現在49000円である平均価格を、少なくとも50000円台へ、実に1000円以上値上げする必要が生まれてくる。

 もしこの理論通り、さらなるランドセルの高額化が進めば、他業態からの参入プレイヤーが増加するだろう。また、競争によって供給量が増え、「高価格/低価格」の二極化が進んでいくとも考えられる。

 すでに他業態から参入したプレイヤーとして、インテリア小売大手のニトリが18000円~、ネット通販大手のアマゾンが9980円~の低価格ランドセルを販売。しかもそれぞれ6年間の保証付きと、業界内でその存在感を強めている。

 老舗ランドセルメーカーにとっては、歯止めのかからない少子化、次々と他業態からプレイヤーが参入し、パイを奪い合う状況は芳しくないはずだ。その点で、今回セイバンが国内ではなく海外へ目を向けたのは、先を見据えた決断と言える。

 そもそもランドセルが、海外で脚光を集め始めたのは2014年頃のこと。アメリカのハリウッド女優で当時ファッションアイコンとしても知られたズーイー・デシャネルが真っ赤なランドセルを背負ったプライベートの様子が写真で撮られたのである。

 すると、モデルやスタイリストといったハイセンスな人たちの間で、ランドセルを使ったコーディネートが流行。AmazonやeBayといった通販サイトでも取り扱いされるようになり、次第に一般人にも浸透していった。

外国人から絶賛される「ものづくり」

 もとより小学生が多少手荒に扱っても6年持つランドセル。その頑丈さはもちろん、ノートPCも楽々入る容量の多さ、日本製からくる高品質なイメージを評価されたのだろう。ファッション性に加え、その機能性も評価されていた。

 日本のアニメの影響も、海外での認知度に一役買ったと言える。『ドラえもん』や『ちびまる子ちゃん』など、小学生が主人公のアニメでは登下校シーンに必ずといっていいほどランドセル姿が映る。そうしたシーンを見た日本に精通する外国人が、興味を持ってランドセルを愛用し始めるといったケースは少なくないようだ。

 また、日本人から見ると「大人がランドセルを背負う」姿は見慣れないかもしれないが、少なくともヨーロッパではランドセルに違和感を持たない土壌があったと言える。ランドセルと同様、学生カバンから派生したファッションバッグの存在だ。

 イギリス生まれの「サッチェルバッグ」。これも伝統的な学生カバンだが、機能性が高く上質であることから女性の支持を受け、大人も使えるバッグとしてファッション向けに派生した経緯を持つ。ちなみに、映画『ハリー・ポッター』に登場した際に広まったこともあり、ランドセルとの共通点を感じさせる。

 日本のランドセルは子供の成長とともに生き続ける商品として、永く愛されてきた。その確かなものづくり力と商品への信頼は、子供ならず大人世代にまで共通認識として形成されているように思う。

 ならば、その日本のクラフトマンシップの精神が、世界共通の価値観として外国人に評価されるのも十分納得できる話だ。海を渡って多くの人たちに「ランドセルは永く使えるカバン」と浸透する日もそう遠くないかもしれない。

マネー現代

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最終更新:9/27(日) 19:16

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