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京都・奈良で観光“復活”の兆し  4月、5月の「どん底」からなぜ?

9/22 18:06 配信

THE PAGE

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛や海外からの旅行客の減少を受け、観光需要は大きく落ち込みました。国内随一の観光地である京都・奈良でも、4月から5月にかけて観光客が激減。一方、6月以降は徐々に活気が盛り上がりつつあるそうです。どのような需要が伸びたのでしょうか? また今後の見通しは? 旅行業関係者や専門家に聞きました。

「例年の半分以下」「目に見えて少ない」

 「5月の客室稼働率は前年同月の100分の1程度でした」――

 1909年創業の老舗「奈良ホテル」(奈良市)は緊急事態宣言下、どん底とも言える経営状況となりました。同ホテルの担当者は「4月は稼働する部屋が1日2~3部屋という状態が続き、このままだとどうなるのかと思った」とも述べています。

 観光庁によると、最も落ち込んだ2020年5月における国内宿泊施設の客室稼働率の全国平均は前年同月よりも50.3ポイント減の12.9%と低調でした。特に京都府は64.9ポイント減の6.2%、奈良県も47.1ポイント減の6.5%と、いずれも全国平均以下の極めて低い水準でした。

 外国人旅行客に絞って見ると、京都が99.5ポイント減、奈良は99.4ポイント減となりました。

 京都・奈良を象徴する観光スポットでも、その影響は如実に現れました。清水寺(京都市東山区)の広報担当者は「6月以降、拝観者の数は多少増えていますが、元に戻ったとは言えない状況」と語り、東大寺(奈良市)の広報担当者も「拝観者は少しずつ増加していますが、8月のお盆の時期は例年に比べて目に見えて少なく感じました」と同調します。

観光客増加の兆し

 そんな中、夏に入り観光客が戻りつつあるそうです。

 観光庁の集計では、全国の客室稼働率は6月が22.8%、7月が30.4%(速報値)。依然として低い水準ではあるものの4、5月に比べると回復しています。奈良県庁の担当者は、「観光業は依然厳しい状態」としつつ、夏以降については「宿泊施設によって状況はまちまちのようですが、なかには満室になったところもあるという話も入ってきています。奈良市内では観光客が戻りつつあり、徐々に修学旅行生の姿も増えてきています」とのことです。

 奈良ホテルでも5月の落ち込みから一転、6月は前年の5割弱、7月はほぼ同水準にまで回復。8月に至っては上旬の客室稼働率が昨年をわずかながら上回っているそうです。

観光客はどこから?

 では、観光客はどこから来たのでしょうか?

 奈良ホテルによると、「従来は6~7割が首都圏からの方々でしたが、いまは大阪や兵庫など関西のお客様が7割弱を占め、首都圏は1割程度です」としています。つまり、近隣県からの旅行客が多くを占めているというのです。

 大手旅行代理店のJTBの担当者によると、夏休み期間の関西発の旅行は例年なら一番人気は東京・ディズニーランド方面ですが、今年は住まいに近い関西の観光地が首位だと言います。こうした「近場」への旅行人気が高いのは、関西だけではなく全国的な傾向で、たとえば、首都圏発なら伊豆・箱根など、中部発なら北陸や飛騨地方などが人気だそうです。

 なぜ「近場」への旅行が人気なのでしょうか?

 広報担当者は「遠方だと、長距離の移動による感染の不安もあるし、旅行に行っても現地では歓迎されないのではないか、という心配もあるのでは」と、新型コロナウイルスに関する懸念があると推察します。また、京都府などの各自治体が、自治体内や近隣府県の住民に対して宿泊費の割引や各種クーポン券などを提供する需要喚起策を実施していることも、「近場」需要の後押しに一役買っていると見ています。

 京都府内の旅行申し込みについては「例年に比べてお客様がまだ少ない一方、天橋立など京都府北部の日本海に面した地域や、福知山市などの京都府中部地域は例年よりも人気が出ています」とのこと。理由について、「人混みや3密を避けられそうな地域を目的地に選んでいるのではないでしょうか」と予想します。

本格的な需要回復、見通しは?

 国内観光業の現状について、大和総研経済調査部エコノミストの鈴木雄大郎氏は「国が緊急事態宣言を発出していたころの最悪期は脱し、緩やかに回復しつつありますが、厳しい状況はまだまだ続いています」と分析します。

 現状の「近場」需要については、「短期的には「近場」需要があるにこしたことはないのですが、地元の人が地元観光地のリピーターとなって何度も観光するのか、と言われると想定しづらい面もあります。日本国内の宿泊者数の約8割は国内の観光客が占める状況を考えると、国内観光市場の本格的な回復には、まず何よりも東京や大阪などの大都市を含む全国各地から人々が観光地に多数集うような状況になることが必要」として、「近場」需要の効果は限定的なものだと踏んでいます。

 また、「感染拡大前の状況にまで戻るには、残る約2割のインバウンド需要の回復も必要ですが、日本から海外への渡航も制限されているため、海外旅行に行けないので国内旅行に切り替える人が増えれば、インバウンドの減少分を多少まかなう可能性もあるかもしれません」とも予想します。
 
 7月22日、国は観光需要喚起策の「Go Toトラベル」キャンペーンを開始しました。岩手県の達増(たっそ)拓也知事が「早すぎたということで失敗と言っていい」と語るなど、批判の声もあがっています。これに対し、鈴木氏は「政策自体は評価できます。補助の割合は50%であり、残りは観光客が自己負担するので、予算額1兆3500億円以上の消費効果が得られます。全予算を年度内に消化した場合、その経済効果は関連業界への波及効果も含めて約4兆9000億円が見込まれ、影響はかなり大きいといえるでしょう」と期待します。

 その半面「キャンペーンの効果が顕著に現れるかどうかは、今後の感染状況次第」とも。「この先、感染が収束すれば国内観光市場の回復ペースは早まりますが、拡大が続くと消費者は旅行へ行くことに慎重になり、需要は伸び悩むかもしれません」

(取材・文:具志堅浩二)

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最終更新:9/24(木) 8:15

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