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なぜ、私は「好立地のラーメン店」で1000万円の損失を出したのか

9/21 12:01 配信

マネー現代

(文 松永 光弘) ----------
今年でオープンから24年目を迎えたステーキハウス「ミスターデンジャ―」。行列が絶えないこの人気店を経営するのは、著書『オープンから24年目を迎える人気ステーキ店が味わった デスマッチよりも危険な飲食店経営の真実』(ワニブックス)を刊行した、元プロレスラーの松永光弘氏だ。一見、順風満帆に見える松永氏だが、新規事業に失敗し、大損失を被ったことがあるという。一体、何が失敗の原因だったのか? その「失敗の本質」に迫る。
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人間、どうしても欲が出る

 前回記事で詳しく述べたチェーン展開の頓挫は私にとっていい勉強になった。

 まだまだ経営者として、実業家として甘いな、ということがわかったし、「今後は立花本店一本でやっていくことがいちばんいい」という結論に達した。

 その後も『ミスターデンジャー』を名乗る店が都内にいくつかあったが、「フランチャイズが支払い不能になると、すべての請求は本店に来る」という恐怖は二度と味わいたくないので、各自で仕入れと支払いをしてくださいね、というシステムに変えた。

 看板料的なものも特にもらっていなかったが、ある程度、経営が安定して、もう大丈夫ですよね、という状況になったら、そこではじめて「看板料を払ってください」という話をすることにした。もし払いたくないのであれば『ミスターデンジャー』の看板を下ろしてください、とも伝えた。

 そうこうしているうちに立花本店は行列のできる繁盛店に成長していった。

 まさに「この店だけやっていればいい」が大正解だったのだ。

 しかし、人間、どうしても「欲」が出る。

 気がついたら「ステーキ屋はこの店だけやっていればいい」という事業計画は自分の脳内で都合よく変換し、別の外食ビジネスに手を伸ばしていた。

 それはラーメン店。

 しかも1日に600人が押し寄せる行列店だ。

 今度は自分がフランチャイズの傘下に入って、リスクを回避する形での開業となった。

なぜラーメン店は失敗したのか

 行列店と同じ味、しかも立地は『ミスターデンジャー』とは違い、JR亀戸駅前という好立地。どこからどう考えても成功する臭いしかしないではないか。

 ところが客足はなかなか伸びなかった。

 そこで指摘されたのが「松永さん、自分で店に出ないとダメだよ」ということ。コンサルタントの試算によると、私が店に出れば月30万円は利益が出るようになる、と言われた(それでもステーキ店の10分の1以下であるが……)。

 そう、あれだけこだわっていた「毎日、自分が店に出る」を守れていなかったのだ。

 いや、守れるはずなんてないのだ。

 基本、私は『ミスターデンジャー』で肉を仕込み、ステーキを焼いているわけで、同日同時刻にラーメン屋の厨房に立つことは物理的に不可能なのだ。

 それでもなんとかしようと昼間はラーメン屋、夜はステーキ屋とはしごをして働いていたが、もはや焼け石に水だった。

 そして、もうひとつ、ハッとさせられることがあった。

 ステーキ店をやりながら心がけてきたのは、「私と妻の2人で3人分以上は働こう」ということである。

 ラーメン屋に行けないということは、その3人分の働き手を雇わなくてはいけないわけで、その人件費だけでもかなりの額になってしまう。

 これはもうラーメン屋がなぜダメだったのか、というよりも、なぜ『ミスターデンジャー』はうまくいったのか、という話になってくる。

膨れ上がった損失、1600万円

 ここまできたら、『ミスターデンジャー』を誰かに任せて、私たち夫婦でラーメン屋を立てなおすしかないのだが、それも不可能になった。

 なぜならば、このタイミングで狂牛病ショックが襲ってきたからだ。

 肝心の『ミスターデンジャー』の売り上げがガクンと下がってしまい、いつしかラーメン屋の資金を流用するような自転車操業になっていった。

 狂牛病ショックの前にラーメン屋が軌道に乗っていれば……いや、商売に「たられば」なんてものはない。

 気がついたらラーメン屋での損失は1600万円にも膨れ上がっていた。ステーキを焼いてコツコツ貯めてきたお金をすべて吐き出し、通帳の残高が0円になってしまったのが、まさにこのタイミングだった。

 それでも意地で続けるという選択肢もあった。

 ただ一度、冷静になって計算してみたら、単価の安いラーメンの売り上げで借金を返していくことを考えると、もしコンスタントに月に30万円の純利益が出せたとしても、トントンに持っていくまで最低でも5年はかかる。

 とてもじゃないけど、それは無理だ。

 幸いにも「ラーメン屋をやりたい」という人がいたので「じゃあ、私の店の経営権を600万円で譲りますよ!」と売却した。オープンからわずか1年。ちょうど1000万円の損をかぶってしまったが、譲った店舗がほどなくして閉店してしまったことを考えると、あのタイミングが撤退するラストチャンスだったのだと思う。

マネー現代

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最終更新:9/21(月) 12:01

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