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「国民に甘くない令和おじさん」は案外悪くない

9/19 11:41 配信

東洋経済オンライン

 「令和おじさん」こと菅義偉氏が14日に新しい自由民主党総裁に選出され、16日に新内閣を発足させた。大方の予想通りの運びとはいえ、いささか慌ただしい。「平成おじさん」と呼ばれた故小渕恵三首相もそうだったが、官房長官として新しい元号を発表する役回りは政治家として縁起がいいのかもしれない。2人とも後に首相になった。

■「令和おじさん」は国民に甘くない? 

 「令和」という元号が発表されたとき、お祝いムードに水を差すかと遠慮しつつも、筆者は、令和の「令」が、「命令」の「令」であることや、「冷気」の「冷」と音が同じで近い字であることから、何となく「冷たい感じがする」と感想を述べた。

 そして、今、新首相となった「令和おじさん」に、「冷徹」あるいは「冷静」といった「冷」の感じを覚えている。政治家としての菅首相は、なかなかの勝負師であり、闘争に強い熱い人なのかもしれないが、国民から見た印象は冷たい。

 総裁選に臨む菅首相のキャッチフレーズは、「自助、共助、公助、そして絆」だった。討論会でも色紙にこのフレーズを書いた。「まずは自分で努力せよ」と強調することは、常識としては正しいので、学校の先生あたりが言うなら違和感はないが、為政者の言葉としてはいささかそっけない。また、今回の菅首相の一連の発言を通じて、格差問題や年金などの社会保障に対する言及は少なかったように思う。

 「令和おじさん」は、国民に甘くない。ただし、筆者は、それで悪いとは思っていない。

 菅首相は総裁選の期間を通じて「秋田の農家の長男」「代議士秘書の後、(横浜)市議を経ての、『叩き上げの』政治家」というイメージを訴えた。確かに、「鞄(に入ったお金)、看板(知名度)、地盤(選挙区と支持者)」の3つ「バン」が必要だと言われて久しい現在の政治ビジネスにあって、政治家2世ではない菅首相の経歴は異色だ。

 それでは、近年数が多い政治家2代目、3代目、4代目の「おぼっちゃま」政治家と、菅首相のような「叩き上げ」政治家とでは、国民としてはどちらがいいのだろうか。あるいは、わが身に近づけてみるとして、サラリーマンなら、どちらのタイプの上司がいいか。

 「叩き上げ」の政治家・上司のほうが、庶民や部下の感情がわかっていいのではないかと即断しそうだが、比較はそう簡単ではない。

■「菅タイプ」はついていって、頼りになる

 一般に、「叩き上げ」で偉くなった人は、自分が努力の結果競争を勝ち抜いて今日の立場を得ているので、「努力」や「競争」に対して肯定的であり、うまくいかない人を「努力不足」だと見なす傾向がある。つまり、「自助」が第1の価値観なのだ。

 また、叩き上げタイプは、過去の競争の過程で騙されたり負かされたりしていることがあるし、他人から見下された経験もある場合が多い。こうした経験があると、人は性格がひねくれるし、少なくとも他人を簡単には信用しない猜疑心を持つようになる。

 他方「おぼっちゃま」は、深刻な競争の経験がなかったり、努力こそが成功への道になる体験を持っていなかったりするので、「努力して、勝つ」のが人生の王道だという実感が乏しい。

 一方、人生でひどい目に遭うことが少なかったので、年齢の割に純粋で素直な人が多い。直接会ってみると、明るくて、華がある。ただし、他人に対する我慢の経験が乏しいから、好き嫌いが激しくそれが表に出るし、他人を簡単に信じるので騙されやすかったりもする。

 サラリーマン的に見て、仲良く付き合うなら「おぼっちゃま」のほうが楽しいが、会社の社長ともなると油断はできなくとも、「叩き上げ」タイプのほうが会社を潰さないので、ついていってより頼りになる。期待を込めて言うが、菅首相は国民にとって後者のタイプではないか。

 さて、自民党総裁選における菅首相の勝勢は事態が動いてから程なく確定したので、世間の興味は、菅首相による党役員と組閣の人事に早々に移った。人間の世界にあって、人事は、下世話だが、常に関心を集める話題だ。

 その人事だが、近未来に「人事AI」があれば、こう作るだろうというような予定調和感のあるものに仕上がった。

 マスコミ的には「派閥均衡」「論功行賞」などと称される。だが、複数の派閥の支持を得て総裁選に勝てたのだし、振り返ってみると、第2次安倍内閣の「菅官房長官」は安倍晋三氏に総裁選出馬を促し勝利に導いた菅氏の大きな論功に安倍氏が応えたものではなかったか。現段階で無難なバランス人事に特段の問題はない。無理に最初から独自のカラーを出す必要はない。

■政治的腕力が強い「菅」「二階」の利害が一致 

 今回の人事からうかがえる菅首相の方針は、早期の解散総選挙と「改革」の重視ではないか。

 菅首相ならでは人事のカラーは、総選挙での勝利を経て政権の正統性が認められてからでいいし、そもそも今回の布陣の任期は最長でも来年の秋の自民党総裁選までと短い。

 党人事で、二階俊博幹事長、森山裕国会対策委員長、組閣で麻生太郎財務相、茂木敏充外相、萩生田光一文科相、梶山弘志経産相、赤羽一嘉国交相、西村康稔経済再生・コロナ担当相、小泉進次郎環境相などを留任させた体制には、前政権からの連続性とともに、早期に選挙になった場合の安定性を意識したことを感じる。

 安倍晋三前首相と縁の深い加藤勝信官房長官や岸信夫防衛相の起用も安倍政治継承の象徴として納得できるし、選挙応援で人気がある小泉進次郎氏をボロの出にくい環境相に留任させて温存したことも適切だろう。

 菅首相は、早期に解散総選挙を行って、組閣し直すのではないかと筆者は推測している。来年の総裁選を何もせずに一から迎えるよりは「総選挙で勝った首相」として権力を強化できるほうがいい。また、党内のキーマンである二階幹事長にとっても、幹事長の活躍の場である選挙があることも、「閣僚待ち」の議員に役を多く与えることができる頻繁な人事の機会があることも、悪くはないはずだ。政治的腕力が強い両者の利害が一致している。

 今回の組閣で菅首相の政策のカラーがはっきり出たのは、新たに作られたデジタル改革担当相(平井卓也氏)と、人気だけでなく馬力も備えた河野太郎氏を行政改革・規制改革担当相に据えた人事だけだ。

 総裁選で表明した菅首相の政策は、(1)デフレ脱却を目指した大規模な金融緩和の継続、(2)消費税率引き上げの向こう10年の見送りとコロナ対策を名目とした財政支出への積極姿勢、加えて(3)地銀再編・携帯料金引き下げ・デジタル化を伴う行政改革など一連の「改革」的な施策だ。

 振り返ってみると、これは第2次安倍内閣成立時にアベノミクスとして大々的に打ち出された、(1)金融緩和、(2)財政出動、(3)規制改革による生産性改善、の「3本の矢」のやり直しだ。

■「冷徹仕事人内閣」の実行力に期待

 (1)は直前の安倍内閣からの継承で適切だが、(2)に関しては緊縮財政に反対する姿勢を明確にしていて、さらに、これまでうまくいかなかったと評価の多かった(3)規制改革に力を入れる、という方針だと理解できる。

 3つの意図が有効に実現するなら、経済政策として望ましいだろうし、特に外国人投資家を中心とする資本市場参加者の期待に沿っている。「令和おじさん」は市場にとっては「いい人」だろう。

 印象として、菅首相は、国民には厳しく見えるリーダーかもしれないが、投資家と株価にとっては良い総理だと言えそうだ。株価のために政府があるわけではないが、当面の経済政策として適切だ。分配政策の問題や社会保障制度の効率性の改善などは、菅首相が厚労省の改革に言及していることでもあり、次の課題として期待しよう。

 菅内閣には「冷徹仕事人内閣」と名前を付けて、その実行力に期待することにしたい(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承下さい)。

 週末のJRA(日本中央競馬会)は3日間開催で重賞が3つもある。正直なところ、筆者の関心は21日に中山競馬場で行われる朝日杯セントライト記念(G2)が圧倒的なのだが、それは自分が数百分1出資している馬が出走するからだ。

 筆者は「インサイダー情報」を持っているわけではないが、今回はこのレースを避けて、今年は中京競馬場で行われる関西TV放送賞ローズステークス(G2、20日開催、11R、距離2000メートル)を予想することにしたい。

 もし筆者の出資馬がG1レースに出走することになると、さすがにG1を予想しないわけには行かない。そのときは悩ましいだろうが、将来そのよう
な事態に至ることを切に希望しつつ、筆者は連休を迎える。

■ローズSの本命はクラヴァシュドール

 さて、ローズステークスは秋華賞のトライアルとなる3歳牝馬のレースだが、今年は阪神競馬場から中京競馬場に舞台が替わり距離も200メートル伸びて2000メートルで行われる。内外の差が発生しやすくやや紛れの多いコース条件だ。

 例年、春のオークス出走馬が中心のレースになるだろう。力比較は難しいが、オークスでは大敗ながら積極的なレースをしたクラヴァシュドールを本命とする。オークスまでに最も本格的なレースを使われてきた1頭でもある。

 対抗は中京向きの差し脚があると見えるデゼル、3番手に川田将雅騎手がびっしり追ってくれそうなリアメリアを狙う。以下、リリーピュアハート、ウーマンズハートを押さえるが、ここまですべてオークス出走馬だ。あと1頭、別路線から夏の小倉競馬場で1勝をあげた上がり馬のフアナを追加する。

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最終更新:9/19(土) 11:41

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