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「ユーグレナ社長、出雲充40歳」私の決断のベースには『論語』の言葉がある

9/17 11:16 配信

プレジデントオンライン

25歳で起業、32歳で東証マザーズ上場、34歳で東証一部上場……。若手世代を代表する経営者として注目されてきた出雲充さん。会社の規模が大きくなるにつれ、関わる人も多くなり、求められる決断の重さも増すばかり。そんなとき、支えになってくれるのが『論語』だという。

■なぜ経営判断に迷いがないのか

 世界中を揺るがせている新型コロナウイルス感染症。この影響で経済状況が激変し、そうそうたる大企業でも売り上げや収益が激減するなど、先行きが見えない状況が続くなかで、ユーグレナ社はどう動いていけばいいのか。経営者である私に、判断が問われる局面が続いています。

 この4月に緊急事態宣言が発出されると同時に、会社の仲間の安全を第一に考えて、東京の本社勤務者を100%リモートワーク体制に切り替えました。開催予定だった東京オリンピック期間へ向けて、以前からリモートワークを複数回実施していたので、移行はスムーズにいきました。

 自分で言うのもなんですが、あれこれと迷うことなく、この決断ができたのは、リーダーとしての行動や考え方を、ふだんから『論語』に学んでいることが大きいと思います。

 コロナショックが起こったときに、思いが及んだのが、『論語』にある「温故知新」でした。

 「故きを温ねて新しきを知る」。まずは過去や歴史に学んでみよう。それで得たことをもとに、新しい考え方や取り組みを見つけることができればいい、ということです。そう孔子が教えているのだから、コロナショックへの対応は、歴史を振り返ることで答えやヒントは必ずでてくる、と考えたのです。

 人類はこれまでにも感染症に襲われ、そのたびに危機に瀕してきました。古くは黒死病と恐れられたペスト、天然痘、そして20世紀初頭のスペイン風邪などを、どう乗り越えてきたのか。それを調べていくと、感染症へのアプローチの仕方がわかってきて、ユーグレナ社のとるべき方向性もみえてきました。その一つが、本社の全面リモートワーク体制への移行だったのです。

 不測の事態に直面しても、過去の偉人の知恵に学ぶことで自信がみなぎってきます。それで会社に出ていけば、リーダーとして理性的な判断ができる、というわけです。

 しかし、東日本大震災(2011年)のころは、リーダーとしての自信どころではありませんでした。並みいる企業の中で生き残っていくには、自分に一番足りないところを補って、人間的に成長しないといけない。そう思うようになった経緯からお話ししましょう。

 ユーグレナ(和名:ミドリムシ)を活用して世界の栄養失調問題やエネルギー問題を解決するために、2005年にユーグレナ社を起業しました。私が25歳のときです。起業して数年でリーマンショック(2008年)が起こり、その3年後に東日本大震災に見舞われたのです。

 会社の上場を目指しているというのに、この先どうなるかまったくわからない。当時、世の中の信用も資金力もないベンチャー企業の経営者が不安そうにしていたのでは、会社の将来性は危うい、と周りから見られてしまいます。どうしたら迷わないで済むのか。しっかりしたものを自分の中に持ちたいと模索するなかで、出会ったのが『論語』でした。

■経営者として人間的に成長するには

 最初に『論語』へ導いてくださったのは、SBIホールディングスCEOの北尾吉孝さんです。バイオ燃料などユーグレナ事業のことで相談に行ったところ、前例がないビジネスなので、新しい歴史をつくっていく気概で頑張りなさいと、激励してもらいました。そのときに、経営者としての不安な心情を打ち明けたら、人間力を高めるために漢学者・安岡正篤氏の教え、いわゆる「安岡教学」を学ぶのがいい、とアドバイスしてくださった。北尾さんの著書『実践版 安岡正篤』などを参考に、安岡正篤氏の解説を手がかりにして、『論語』を学び出したのです。

 それから数年ほど経った頃でしょうか、大学の先輩で人材ビジネスをしている縄文アソシエイツ代表取締役の古田英明さんから、経営者が集まる『論語』の勉強会に来ませんか、とお誘いをいただきました。聞くと、講師は私が師と仰いでいる安岡正篤さんの孫、安岡定子先生だというではありませんか。

 『論語』の勉強会では、安岡定子先生の指導のもと素読をし、そのあと初学者にもわかるように解説してくださいます。その話を聞いて、考え方や仕事のエピソードなどを経営者同士が率直に話し合う。そういうやりとりをしていくなかで、ビジネスに役に立つ『論語』の考え方が、自然と頭の中に入っていくのです。

 ただ、『論語』は学んですぐに効果が出るものではありません。いざというとき、たとえば今回のコロナショックや大事な決断をしなければならいときになって、ふと『論語』の言葉に思いが及ぶのです。すると、考え方が整理され、進むべき方向性が見えてきます。現代にも通用する普遍的価値観が詰まった古典、私の場合は勉強会のテキスト『仮名論語』をいつも身近に置いているのは、そのためです。

■もう一つの心の支えは坐禅

 30歳そこそこ、若手経営者として心が揺らいでいたときに、出会ったもう一つが「坐禅」です。何か心のよりどころになるものを持つようにしたほうがいいと、ある方に上野谷中の全生庵・平井正修住職を紹介してもらいました。政界・財界人も多く参禅している、山岡鉄舟ゆかりの由緒ある禅寺。分不相応かなと思っていたのですが、平井正修住職には、快く迎えていただきました。それ以来、M&Aなど社として大事なことがあるときには、全生庵で坐禅をし、気持ちを整えています。

 最近は海外の若手経営者ともビジネスのやりとりをする機会が増えましたが、彼らのなかでマインドフルネスが浸透していて、禅や坐禅の話で盛り上がり、打ち合わせがスムーズにいくことがあります。これも坐禅の効用ですね。

 ところで、この全生庵で安岡定子先生が「谷中寺子屋」と称して、「おやこでたのしむ 『こども論語&坐禅』」教室の講師もされているのですが、そのことまでは知りませんでした。あるとき、平井住職から、「出雲さん、最近『論語』頑張っているらしいね」と言われたのです。どうしてご存じなのですかと聞いてみると、ここで教室をしている安岡定子先生が、「経営者の勉強会にユーグレナの社長さんが入門してきて、熱心に勉強されている」とおっしゃっていた、というのです。

 『論語』と坐禅。それが安岡定子先生と平井正修住職を通して、私のなかでつながったのです。人の縁とはありがたいものです。

■「遠き慮り」で社員の仲間を率いる

 仕事をするうえで、とても役に立っている『論語』の言葉が「人にして遠き慮りなければ、必ず近き憂いあり」です。遠い将来まで見通す深い考え方ができないと、必ず近いうちに困ったことになるだろう、という意味で、まさに、リーダーは会社全体のことを先々まで見通して仕事をやらなければならない。

 それを実践するときに、大事なことがあります、と安岡定子先生が教えてくださったのが、「辞は達するのみ」。これも孔子の言葉で、相手にその意味がわかるように伝えることが大切だ、ということです。

 リーダーがどんなに先々のことまで考えていても、つまり「遠き慮り」をしていても、そのことを会社の仲間や関係者がわかっていないと、つまり「辞が達していない」と、組織やビジネスは思うように回っていきません。

 いまユーグレナ社は10社ほどのグループ会社を抱えていますが、M&Aによって傘下に収めたところばかりです。企業風土も仕事のやり方も全然違う人たちが、ある日を境に、ユーグレナグループの一員に加わるわけです。

 予期しない突然の変化に、その会社の社員はこれからどうなるんだろう、と不安を抱いている。まずはそれを取り除いてあげないといけない。ユーグレナ社はこういう事業戦略を描いていて、あなたがたの会社にはこういう役割を期待して買収したのです、という「遠き慮り」を、皆がわかるように説明しないといけない。「辞は達するのみ」です。

 目標や事業戦略を共有できるようなるまでは、時間がかかるでしょう。いずれ持てる力を今まで以上に発揮してもらえればいい。そういう思いで、傘下に収めたグループ各社の訪問に、時間と労力をかなり割くようになりました。

■いかなる人を師とし、学ぶのか

 『論語』や坐禅を自分の支えにしていくうえで、大事なことは、誰から学ぶのか、どんな師から教わるのか、ということです。

 『論語』と同じくらい考え方の拠り所にしているのが、森信三先生の『修身教授録』です。その本で、人物評の一丁目一番地ともいえる指標として掲げてあるのが「その人がいかなる人を師匠としているか」ということ。まさに至言です。

 『論語』では、SBIホールディングスCEOの北尾吉孝さんを通して安岡正篤氏を知り、そして孫にあたる安岡定子先生に学んでいる。「坐禅」では、平井正修住職に導かれている。こういう「よき師」に恵まれて、本当によかった。

 現在40歳。これからの経営者人生にどんな困難が待ち受けているかもしれません。それを乗り越え、さらにユーグレナグループを成長させていくためにも、生き方・考え方の支えとなるものを学び続けていきます。

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安岡 定子(やすおか・さだこ)氏
安岡定子事務所代表。公益財団法人 郷学研修所・安岡正篤記念館理事長。二松学舎大学文学部中国文学科卒業。漢学者・安岡正篤氏の孫。論語教育の第一人者として知られ、「こども論語塾」の講師として全国各地で講座を開催するほか、企業やビジネスマン向けのセミナー、講演活動を行っている。『実践・論語塾』(ポプラ社)、『子や孫に読み聞かせたい論語』(幻冬舎)、『はじめての論語』(講談社)など著書多数。

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出雲 充(いずも・みつる)
ユーグレナ代表取締役社長
東京大学農学部卒業後、2002年東京三菱銀行入行。2005年株式会社ユーグレナを創業、代表取締役社長就任。同年12月に、世界でも初となる微細藻類ミドリムシ(学名:ユーグレナ)の食用屋外大量培養に成功。世界経済フォーラム(ダボス会議)Young Global Leaders、第一回日本ベンチャー大賞「内閣総理大臣賞」受賞。著書に『僕はミドリムシで世界を救うことに決めた。』がある。
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最終更新:9/17(木) 11:16

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