IDでもっと便利に新規取得

ログイン

タクシー業界の活路は? ウィズコロナ時代、生き残れるか【#コロナとどう暮らす】

8/13 16:18 配信

THE PAGE

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛やテレワークの拡大などによって人々の生活は大きく変わりました。タクシーの利用客は全国的に大幅に減少。厳しい需要の収縮にこらえきれずに廃業するタクシー会社がある一方、飲食物の有償デリバリー事業に取り組む会社も相次いでいます。交通経済学の専門家は、人を輸送する従来の業務だけでなく、他分野への進出がタクシー業界の活路となり得ると指摘します。

本当に人の動きがなくなってしまった

 「肌感覚では、3月にもイベント自粛の動きによって需要が減りましたが、国の緊急事態宣言が出た4月以降は、本当に人の動きがなくなってしまった」

 こう語るのは、東京の大手タクシー会社・日本交通の広報担当者です。

 国が緊急事態宣言を出した4月における同社グループの売上高は、前年同月に比べて約7割減に。5月も約6割減と、いずれも前年の半分以下にまで落ち込みました。需要の減少に対応するため、同社では緊急事態宣言の期間中、稼働するタクシーを保有車両の4割程度に落として供給量を調整。それによって休まざるを得なくなった乗務員には、会社から休業手当を支給して、従来の給与とほぼ同額を受け取れるよう調整しました。

 タクシーの業界団体である全国ハイヤー・タクシー連合会が、新型コロナウイルスの感染拡大の影響による営業収入の変化についてサンプル調査(各都道府県で5社以上を抽出)を行ったところ、4月の全国の営業収入は前年同月の37.9%、5月も37.2%と、需要が大きく落ち込んだことを示す結果が出ました。特に、世界的な観光地である京都府は国内外の観光客の急減を受けてか、4月が同20.1%、5月も同14.0%と全国平均の約半分に低迷しています。

 外出自粛やテレワークの拡大に加え、訪日外国人も4月、5月はそれぞれ前年同月に比べてなんと99.9%減に(政府観光局調べ)。移動ニーズは大幅に縮小し、タクシー業界は大打撃を受けました。国土交通省自動車局によると、新型コロナウイルスの影響を理由に事業廃止届を出したタクシー会社は、5月末時点で9社(栃木が2社、山梨、大阪、愛媛、徳島、北海道、山形、福岡は各1社)あったそうです。7月17日の時点で、6月以降のとりまとめはまだ行っていないとのことでしたが、更に増えている可能性もありそうです。

タクシーが飲食物を宅配

 タクシー需要が縮小するなか、国交省は4月21日、タクシー事業者が特例的な許可を受けることで、飲食物に限り有償での運送を認めると発表しました。本来、貨物事業をするには国交省から許可を得る必要がありますが、タクシー需要が落ち込む一方で、飲食物の宅配ニーズが増加している状況を踏まえ、国は期間限定で認めることにしました。これにより、タクシー事業者はこの特例許可を受ければ、出前館などの配達事業者のように飲食物の宅配が行えるようになりました。

 あくまでも特例措置ということで、当初は5月13日が期限でした。しかし、全国のタクシー事業者から申請する動きが広がったことから9月30日まで期間が延長されました。国交省自動車局によると、この特例許可を受けたタクシー事業者は、7月10日時点で、全国で1625事業者(法人タクシー1600社・個人タクシー25人)にのぼります。

 先述の日本交通も、特例許可を受けました。落ち込んだ売り上げをどの程度穴埋めできるか不明なものの、「こういう時期だから何でもチャレンジすべき」と判断し、4月25日から飲食物のデリバリーを開始しました。広報担当者は「まだ件数は少ないものの明らかに新たなニーズがあったという手応えを感じています。恒久的な制度になれば、新しいサービスとしてもっともっとご利用いただけるようになるんじゃないかと思います」と、期限を区切らない措置を期待します。

 このタクシーによる飲食物デリバリーについて、国交省の一見勝之自動車局長は5月27日の衆議院国土交通委員会で、「恒久化ということも念頭に置きながら考えていきたい」と発言し、恒久化に含みをもたせました。ただ、7月17日に国交省自動車局に問い合わせたところ「10月1日以降も続けるかどうかはまだ白紙」としており、今後どうなるかはまだ分かりません。

識者「他分野に進出せよ」

 大阪府河内長野市の乗り合いタクシーを運営する委員会に名を連ねるなど、地域公共交通の改善に関わってきた近畿大学経済学部の新井圭太准教授(交通経済学)は、「タクシー業界は、今後も人々の暮らしに貢献できるメリットを十分持っているが、それを生かしきれていない」ともどかしげに語ります。

 新井准教授はタクシー業界が貨物事業や乗合事業という同じ自動車を用いるいわば「お隣」の事業へ進出することを提言しています。貨物事業なら今回の特例許可のようにタクシーを使った飲食物のデリバリーやネット販売の商品配送サービスなど。乗合事業では、他人同士を乗車させ、路線バスのように決められた路線を決められた時間で走るタイプや、乗客の乗り降りする場所や時間に合わせてルートと運行時間を変えるタイプの展開が考えられると言います。いずれも、貨物事業許可、乗合事業許可を受けるなどの条件をクリアすれば実現可能です。
 
 両事業とも既存事業者が存在します。しかし、「貨物については、ネット通販が急増する中、宅配業者はドライバー不足などによって需要をまかないきれない恐れがあります。ネット販売はますます拡大して供給がひっ迫すると予想されますので、タクシーが宅配輸送の一部をまかなう余地は十分あるでしょう」と新井准教授は述べます。乗合についても、バスが定員11人以上の車両を使うのに対し、タクシー車両は最大でも定員10人以下であるため、需要の大小でバスとタクシーのすみ分けは可能と見ています。

 新井准教授は、「人口減少と少子高齢化が進む中、地域における輸送手段もダウンサイジング化が求められます。タクシー業界は、従来の営業スタイルにとらわれず、外の世界に事業を拡張して新たなビジネスモデルを構築してほしい 」として、積極的な挑戦を期待しています。

(取材・文:具志堅浩二)


※この記事のコメント欄に、さらに知りたいことや専門家に聞いてみたいことなどがあればぜひお書きください。次の記事作成のヒントにさせていただきます。

THE PAGE

関連ニュース

最終更新:8/13(木) 18:58

THE PAGE

投資信託ランキング