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「利回り30%も可能」のはずが損失3500万…ホステル投資の実態《楽待新聞》

8/12 20:00 配信

不動産投資の楽待

「実質30%の高利回りも可能」「初期投資金平均回収年数は3年以内が90%」といった謳い文句で宣伝されていたホステル物件投資をめぐり、一部のホステルで業者側のシミュレーションとかけ離れた多額の赤字が発生し、投資家が自己破産寸前に追い込まれていることが分かった。

宿泊単価が当初の想定を大きく下回り、稼働率も2、3割にとどまっているため、賃料の支払いやローン返済を賄えず毎月40~50万円の赤字を垂れ流している投資家もいる。物件の「購入」ではなく「転貸」による投資のため、売却で負債を穴埋めすることもできず、さらに新型コロナウイルスも追い打ちをかけて八方ふさがりの状態だ。

このホステル投資の実態は、どのようなものなのだろうか。実際に参入した投資家に話を聞いた。

■「実質利回り44.5%」

「すでに初期投資と運営で総額3500万円ほどの損失が発生し、毎月40~50万の赤字が膨らみ続けている状態。撤退するのにも数百万かかるので、このままでは自己破産も遠くないと思っています」

東京都の会社員・袴田俊光さん(仮名、40代)は2018年夏、「実質利回り40%の実績も」という広告に興味を持ち、ある不動産業者のセミナーに参加した。投資家が空き家や空きビルをオーナーから賃貸し、業者が必要な設備を施工することで、旅館業の営業許可を得て簡易宿所(ホステル)を運営する―という内容。「低コスト・高利回りの新しいビジネス」「五輪前で宿泊需要が高まる今がチャンス」との触れ込みだった。

セミナーの最後には、目白や四谷、神田など都心の立地で利回り38~44%といった複数の案件の紹介があったという。「五輪前でインバウンド需要が見込めて、投資額を2年半で回収できるという高利回りビジネスに魅力を感じた」という袴田さんは後日、実際に稼働している四谷のホステルの見学会に参加。「狭いながらも洒落た内装で、外国人を中心にしっかり埋まっているなと感じて投資することを決断しました」

袴田さんが紹介物件の中から選んだのは、城東エリアの駅徒歩5分のビルの1フロア。賃料が30万円弱と紹介された中では比較的安く、利回りの高さに惹かれたという。

業者側が提示したシミュレーションを見ると、施工や諸費用などの初期投資は約2500万円。全20室の宿泊単価は平日3000円、土日祝4000円という想定で、稼働率100%の場合の月間売上が228万円という試算になっている。そこから賃料や運営委託費、経費などを差し引いた月の収益は93万円で、実質利回りは「44.5%」という内容だった。

袴田さんは「業者は『年間を通じて8割の稼働は固く、東京五輪を控えて外国人も増えているので9割も狙えます』と言われました」と主張する。「このシミュレーション上は、仮に稼働率が5割まで下がってもローン返済は賄える計算なので、大丈夫だろうと判断してしまいました」

最終的な工事請負金額は2400万円で、諸費用を含めた総投資額は2700万円。日本政策金融公庫から金利2%台前半・15年、2000万円の融資を引き、残りは自己資金を入れた。投資用不動産向けの融資ではなく、旅館業の許認可を得た事業性融資であったため、審査はスムーズに進んだと袴田さんは振り返る。

■待っていた悪夢

無事に内装工事が完了し、その業者のグループ会社に運営を委託。昨年5月、ホステルとしての運営が始まったが、袴田さんを待っていたのは当初の想定とはかけ離れた惨状だった。

「昨年6月から12月までの稼働率はわずか20、30%台で、8~9割という数字とは程遠いものでした。宿泊単価は想定より低い平日1000円台、土日2000円程度。月間売上は60万~70万円ほどしかない状況だったんです」

運営委託費は売上の3割という契約だが、最低金額が設定されている(稼働当初は43万2000円)。つまり、稼働率がどれだけ低くてもその金額は毎月払い続けることになる。さらにシステム利用料10万8000円と経費15万円を差し引くと、毎月の収益はわずか数万円。この状態で賃料30万円弱とローン返済約20万円の支払いがのしかかるため、毎月40~50万円の赤字が発生することになる。

複数の宿泊予約サイトを通じて集客するものの、周辺には競合も多く、稼働率が思うように上がらない状況が続いた。

このような中でコロナの問題が発生し、宿泊需要はさらに激減。4、5月はほぼ閉鎖状態となり、その間は売上ゼロで賃料と一部経費の支払い、ローン返済だけを続けた。「建物の完成からこれまでに800万円弱の手出しが発生しているので、最初の投資額と合わせると3500万円近い損害。貯蓄を取り崩して何とか耐えていますが、いつまで持つか…」

袴田さんは、2400万円という工事請負金額にも疑問を感じているという。見積書を見ると、申請・許認可取得、旅行サイト登録、スタッフ募集にそれぞれ100万円が計上されている。「相場を調べてみても、こんなにかかると思えず、個人的にはかなり金額が割高だと思っています」と語る。

今は強い後悔の念に苛まれている。

「稼働率8、9割という説明だったにもかかわらず、実際は2、3割で宿泊単価も想定より低い。もう少ししっかりと調べておけばという反省はありますが、彼らが提示したシミュレーションとは程遠く、毎月マイナスが発生していることについては、『もともとリスクが高いことが分かっていたのでは』という憤りを感じています」

■オーナー側弁護士「自己破産者増える可能性」

この問題でオーナー側の代理人を務める加藤博太郎弁護士は「私のところにはすでに3人から相談がきていて、さらに多くの被害者がいると聞いている。『かぼちゃの馬車』などの問題とは違い、今回のホステル投資は借入金の返済だけでなく賃料の支払いが毎月発生し、売却による損切りで負債を穴埋めすることもできない。赤字がどんどん膨らみ、自己破産に追い込まれる人が増えていく可能性がある」と指摘する。

この投資に参入した人の多くは、日本政策金融公庫から融資を受けていた。加藤弁護士は「こういった投資案件ではこれまで、業者がスルガ銀行をはじめとした不動産投資用ローンを利用することが多かった。しかし、スルガショックで投資用不動産向けの融資が厳しくなったため、公庫の事業性融資に目を付け、旅館業の許認可によって融資を引くことで投資勧誘をしている形」と分析する。

■安易に手を出さない

業者が提示したシミュレーション資料には「上記シミュレーションは予想であり、事業を保証するものではない」という主旨の記載がある。シミュレーションと実際の稼働状況に大きな差が出ているとはいえ、最終的に投資を決断したのは投資家自身。周辺宿泊施設の宿泊単価や稼働率がどれぐらいか、慎重に調べておく必要があったことも事実だ。

加藤弁護士は「契約段階でもう少し調べておくべきだったという見方もあるが、普通のアパートや戸建と違って、一般の投資家が収支の問題点を見抜くのは難しかった面はある。一般的な投資方法ではないために魅力的に映る部分もあるが、やはり見慣れない投資については通常以上に警戒し、安易に手を出さないことが重要になる」と注意を呼びかける。

■業者「事業に『絶対』はない」

楽待新聞は、このホステル事業を展開する業者に質問を送った。

一部の投資家がシミュレーションと実際の稼働状況に大きな差が出ていると指摘している点については、「事業を行う以上、絶対ということは当然ない。契約者に対してはそれを必ず説明しており、十分に理解いただけているものと認識している」という回答だった。

初期投資金額や運営委託費が割高という指摘については「当社としては適切な金額であると認識しており、契約者には事前に十分説明した上で納得いただいていると思っている」との見解を示した。

不動産投資の楽待

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最終更新:8/12(水) 20:00

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