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「医療保険不要論」を鵜呑みにする人たちが、見逃している「重大な事実」

8/10 10:01 配信

マネー現代

(文 黒田 尚子) 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、保険の対面販売が自粛されている中、ネットチャネルなどによる医療保険の契約者が増えている。

 最近の医療保険のトレンドについては、『大人気「医療保険」、加入前に知っておくべき「3つのトレンド」と「注意点」』で紹介し、「入院期間の短期化」「がん・循環疾患への対応」「通院治療の増加」の3つのキーワードを挙げた。

 今回は「通院治療の増加」と医療保険選びのポイントについてアドバイスしよう。

契約者増加の「医療保険」! その最新トレンド

 前回記事で紹介したように、入院は短期化する一方、通院治療は増加傾向にある。

 厚生労働省の患者調査によると、退院後に通院した患者数について、平成20年は約98万人だったのに対して、平成29年は約115万人と約1.2倍に増えている。

 また、がんの三大治療といえば、手術、薬物療法(抗がん剤、ホルモン治療)、放射線治療の3つだが、手術を除く2つは、ほぼ通院による治療がスタンダードだ。

 これらを受けて、今やほとんどの医療保険には退院後の通院治療特約が付加できるようになっている。

 さらに、通院による薬物療法は中長期にわたる場合が多い。

 がんや心疾患、脳血管疾患、腎疾患、肝疾患、糖尿病など9疾病の薬剤治療を行っている患者に対する調査(※1)によると、診断から5年以上経過した人の場合、9疾病合計で、5年以上が60%を超えているという。

 なかでも糖尿病81.4%、脂質異常症75.6%など、いわゆる生活習慣病は長期化しやすい。これらは、脳卒中や急性心筋梗塞などの循環器疾患の要因ともなり、医療費負担がさらに増す可能性もある。

 しかし、入院がベースとなる医療保険では、原則として、入院を伴わなければ保障されず、限界があることは否めない。

 ※1:メディケア生命「薬剤治療に関するアンケート調査」(2020年3月16日)

新商品の選び方

 そこで、新しいコンセプトの医療保険を開発した保険会社もある。

 2020年6月発売のチューリッヒ生命「終身治療保険プレミアムDX」は、「多様な治療方法を長期的に保障する終身医療保険」をコンセプトとして、入院、手術、放射線治療はもちろん、入院前後の通院から在宅医療までを包括的に保障する。

 同商品は、あらかじめ設定された5~20万円の基準給付月額をベースに、それぞれの治療方法で定める月額給付金の中で最も高い金額が月単位で給付されるしくみだ。

 ‘医療保険不要’論を唱える人は、「日本には、公的医療保険の高額療養費制度があるから」という社会保障の充実を根拠にしていることも多い。しかし、この制度を利用しても、一定の自己負担分は必要だ。例えば、この制度を利用しても、一定の自己負担分はかかる(一般的な収入(年収370~770万円)の場合で月額約9万円にものぼる)。

 1ヵ月くらいは何とかなったとしても、3カ月なら約27万円。その上、病気の「治療費≠保険適用となる医療費」である。

 治療が長引けば、高額療養費を利用しても、負担が重いと感じる人は少なくない。同商品は、この高額療養費制度の自己負担分を考慮した合理的な備えというわけだ。

 支払い限度も、1入院あたりの日数のしばりはなく、通算で最長120カ月分となるので、長期入院への備えにも対応できる。

 さらに、短期の療養状態と長期の障害状態による収入減少をカバーできる収入サポートも付帯可。病気による収入減リスクは、医療費等の支出増リスクよりも、家計に与える影響が大きいことは、筆者も常々指摘している論点だ。

 一般的な就業不能保険には一定期間の免責期間が設けられ、支給要件もなかなか厳しいが、それに比べると、使い勝手は良さそうだ。

 同社は、2014年11月に「終身ガン治療保険プレミアム」を発売(2018年4月「終身ガン治療保険プレミアムDX」としてリニューアル)。

 抗がん剤や放射線など治療を受けた月ごとに給付金が受け取れる保障を主契約とし、従来のがん保険では主契約だった入院給付金や診断給付金を特約として選べるようにした。

 まさに逆転の発想ともいうべき新しいコンセプトのがん保険だったわけだが、今では、多くのがん保険が同じような治療保障特約を用意している。

 同社の新商品「終身治療保険プレミアムDX」は、その医療保険版とも言えるものだ。

 さらに、視点が全く異なるわけだから、既加入の医療保険に上乗せして加入することもできる。入院免責日数特約(60日型)を付帯すれば、入院については、既存の医療保険でカバーし、それ以降の長期入院に備えれば良い。そのため、同社では「終身医療保険プレミアムDX」も継続して取り扱われる。

 とまあ、なんだか良いことづくしの商品のような書きぶりで恐縮だが、問題は、このコンセプトやしくみが、きちんと消費者に理解されるかどうかだと考えている。

 保障内容をつぶさに見ていくと「ん? この場合はどうなるのかな?」とわかりにくい部分もあるし、日額タイプの医療保険に慣れ切った頭では、「結局、どういうパターンだと、治療保険の方が有利なの? !」と思ってしまう。

 そして、通院や在宅医療など幅広く保障されるのはありがたいが、やはり「入院」がトリガーになるのは同じである。保険料に関しても、類似商品がないわけだから、保障内容に対して保険料が妥当かどうか比較しにくい。個人的に、発売後の消費者の反応がどうか楽しみだ。

バランスの取れた保険の見分け方

 さて、高スペックあるいは様々なコンセプトの保険商品が登場するのは、消費者としては喜ぶべきだろう。一方で、商品選択の難しさも感じている。保険商品は後出しジャンケンのようなものだからだ。

 パソコンやスマートフォンなどと同じく、基本的に、保険商品も後から出た商品の方がスペックもよく、保険料も割安な場合が多い。そうでなければ売れやしない。

 となると、医療保険のようなレッドオーシャンなマーケットでは、割安な保険料でどれだけの保障内容を提供できるか競争が激化するのも当然といえる。

 とはいえ、スペック競争となれば、その差はどんどん細かな部分になってくる。そこにこだわりすぎると、本当に必要な保障を見失いかねない。

 スペック競争の限界を感じつつある保険会社は、前掲のチューリッヒ生命のように、まったく新しいコンセプトの商品へとかじ取りをすることになるが、トップランナーとなるのもなかなか難しい。ちゃんとそのコンセプトを消費者が受け入れてくれるかわからない。

 これから医療保険に加入しようとお考えの方にお伝えしたいのは、保険商品のスペックやコンセプトを見極めるのも大切だか、それだけで選ぶと失敗するということである。

 おそらくそのような人は、新商品が出るとそちらに乗り換えたくなるだろう。うまく切り替えられれば良いか、年齢や健康状態によっては、加入できない場合もあるし、何の保障も受けられない「無保険期間」を作りかねない。

 保険選びは、「保険商品」だけをチェックすれば良いというものではない。終身型の商品であれば、30代で加入した場合、40年から50年にも長きにわたるお付き合いとなる可能性もある。

 「保険会社」の支払い能力や健全性、誠実性も重要だし、加入後の「保険担当者や窓口」の対応やフォローなどサポート体制もチェックしておきたい。

 これら「保険商品」「保険会社」「保険担当者・窓口」の3つのバランスが取れているかが、保険選びのポイントとも言える

医療保険不要論は本当か

 さて、最後にもう1つ、医療保険に関して、ファイナンシャルプランナー(FP)としてお伝えしておきたいのは、「医療保険は必要かどうか? 加入すべきか?」という論点についてである。

 結論からいえば、必要な人は加入すべきだし、不要な人は加入しなくても良い。そもそも以前から、この問いにあまり意味がないと感じている。

 必要かどうか、加入すべきかどうかは、FPなどが決めることではなく、あくまでも消費者自身が決めることだからだ。

 FPや保険商品を提供する側は、消費者が決定しやすいようフラットで正しい情報を提供すれば良い。もちろん、FPとして、個別のお客さまに対しては、状況を勘案した上で、要・不要をアドバイスはさせていただいている。

 筆者は、自身が乳がんサバイバーということもあって、がん患者など病気経験者やそのご家族の相談を受けることが少なくない。

 その立場から、近頃、危惧しているのは、医療保険やがん保険に加入しておくべき人が、「医療保険は不要」という専門家(? )の意見を鵜呑みにして、あるいは自分の都合の良いように解釈して、加入していないケースが増えているような気がすることだ。ちなみに、ここでいう「加入しておくべき人」は、現在のコロナ禍で、すでに経済的に困窮しているご家庭と重なるかもしれない。

 具体的には、非正規雇用で働く世帯、自営業・自由業者、シングルマザー、預貯金がない世帯(おおむね生活費×3カ月~6カ月以下)、住宅ローン・子どもの教育費等の固定費を妻のパート収入でまかなっている世帯などである。

 FPとして、保険料負担のことを考えると、不安感をあおって過剰に保険に加入するようなお勧めなどしたくない。

 しかし、「医療費の大部分は、公的制度や預貯金で賄えるし、医療保険は元が取りにくい商品だから、入らなくても良い」と言い切れるほど、病気になった場合の経済的リスクは甘くない。

 掛け捨てはもったいないというお気持ちはわかるが、根本的に「保険」は「貯蓄」と違う。

 皆さんは、健康保険や国民健康保険など、何らかの公的医療保険に加入しているだろう。でも、保険料を払っているから、病気になって治療を受けないとソンだとは誰も考えないはずだ。

「自分にとって」をしっかり考えて

 支払ったお金を確実に回収したいのであれば、積立定期など貯蓄をすれば良い(使わなかった分の保険料が戻ってくるリターン型医療保険もあるが、それについてはまた別の機会にでも)。

 今回のコロナ禍によって、病気がこれまで当たり前だと思っていた生活を根こそぎ奪っていくものだということを、多くの人が実感した今、自分や家族にとって、公的医療保険を補完する民間の医療保険が必要かどうか? 
 必要であれば、どのような商品が良いのかをじっくり考えてみてほしい。

マネー現代

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最終更新:9/7(月) 23:20

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