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コロナ直撃のJリート市場、回復軌道に乗るのはいつか~メインシナリオは2,000ポイント回復も、ホテル型は相当厳しく~

8/9 15:30 配信

週刊 金融財政事情

新型コロナウイルス問題を発端とした経済活動の低迷は不動産賃貸市場に影響を与え、Jリート市場を直撃した。東証リート指数は2020年2月までは2,200ポイントを超過して堅調に推移していたものの、3月には一時1,200ポイントを下回る水準にまで急落した。6月末時点では1,666ポイントにまで回復したものの、反発力に欠ける展開が続いている。今後のJリート市場の見通しとともに投資家動向や各用途のファンダメンタルズ状況について言及したい。

1,000ポイント以上変動した1~6月の東証リート指数

 2020年6月末の東証リート指数は1,666.83ポイントとなり、19年12月末の2,145.49ポイントから22.3%下落した水準にある。
 今年に入ってからの同指数の動きを振り返ると、1月から2月半ばにかけては堅調に推移していた。同期間においては、株式市場が新型コロナ問題に対するリスクに敏感となり始めて軟調となり、長期金利が低下するなか、Jリートが「安定投資先」とみられていた。それによりJリート市場では資金流入が活発となり、2月20日には19年11月以来の2,250ポイントを超過した。
 ところが、2月21日以降の同指数は下落に転じた。2月後半は株式市場が大幅下落したことに伴い、これまで値持ちの良かったJリートを利益確定売りする動きが加速したことや、コロナ問題を発端としてホテルや商業施設を中心に賃料収入が大きく減少する懸念を織り込む展開になった。3月に入ってからもクレジット市場の混乱等により同指数は下落を続け、3月12日には19年1月以来の1,800ポイントを下回り、その後は地域金融機関等からのロスカット売りも加わり、3月19日には13年1月以来の安値である1,145.53ポイントにまで下落した。
 一方、4月中ごろから5月中ごろまではクレジット市場にも落ち着きが見られたことや長期金利も0%前後で低位安定して推移したことから、1,550ポイント台半ばから1,600ポイントのレンジで比較的安定した推移となった。そして、5月中ごろからはコロナ問題が収束に向かい始めることを期待されたこともあり反発基調となった。ただし、6月後半は再び感染拡大によるリスク回避姿勢や賃料収入の下落リスクが意識されて下落基調となり、6月末時点では1,666.83ポイントで終えた。

コロナ収束を前提に今年後半の需給は回復へ

 今年前半のJリート市場を取り巻く需給構造を見ると、次の3点が指摘できる。
 第一に、今年前半の個人投資家によるJリート特化型投信への資金流入の動きは旺盛であった。Jリートに対する割安感やインカムゲインニーズが強かったと考える。特に3月以降はJリートによるエクイティファイナンスも大きく減少したことから、セカンダリー市場での買い越しも目立った。
 第二に、国内長期金利がゼロ近辺もしくはマイナス圏で推移する環境下で、Jリートのインカムゲインに着目した地域金融機関の需要は2月までは旺盛だった。しかし、3月中旬以降は東証リート指数が急落する中で一部ロスカット売りも余儀なくされ、売り手に転じた。新年度入りした4~6月については一部打診買いも見られたが、全般的には様子見姿勢であった。
 第三に、海外投資家は、3月は世界的なリスクオフ相場となる中でJリートの売却を早める一方、投資口価格の急落後は割安感に着目して買い姿勢となった投資家も散見された。そして、4~6月はJリート市場が反発した局面で利益確定売りが見られた。
 今年後半の見通しとしては、新型コロナ問題が収束に向かい、かつ長期金利が低位安定推移する状況であれば引き続き個人投資家からのインカムゲインニーズは期待できよう。加えて、4~6月は様子見姿勢であった地域金融機関が、同ニーズにより再び買い主体に転じることも考えられる。また、3月のJリート市場での急落局面で買い越し主体となったヘッジファンド等は4~6月に利益確定売りをいったん済ませたとみられ、需給環境は良好になると考える。いずれにしろ、新型コロナ問題はファンダメンタルズだけでなく、Jリート市場の需給面でも大きな影響を及ぼすといえよう。

クレジット市場動向が分配金利回りスプレッドを左右

 20年6月末時点のJリート市場全体における弊社予想分配金利回りは4.4%、長期金利に対する分配金利回りスプレッドも4.4%であった。19年12月末時点の同分配金利回りは3.5%、同スプレッドも3.5%であったが、今年前半の投資口価格大幅下落に伴い分配金利回りおよび同スプレッドは大きく上昇した。
 特に20年3月19日には分配金利回りスプレッドは09年3月以来の6.5%に達した。01年9月のJリート市場創設以後、同スプレッドが5%を超過した時期は08年後半から09年のリーマンショック後と、11年後半から12年初にかけての欧州債務問題時の2局面のみであり、6.5%を超過したのはリーマンショック後のみであった。いずれのケースにおいてもCDSスプレッドの上昇をはじめとしてクレジット市場が大きく混乱した状況にあった。クレジット市場の悪化により投資家のリスク許容度が低下することでJリートに求められる要求リスクプレミアムが上昇することに加え、景況感の悪化による賃料下落リスク、資金繰り悪化による金融費用増加リスクにつながることが背景にあろう。20年4月以降はクレジット市場が落ち着きを取り戻したものの、今後もJリートの分配金利回りを見通す上では長期金利見通しに加え、グローバルでのクレジット市場動向にも注視したい。
 Jリート市場およびそれを取り巻く外部環境が安定していた13~15年の同スプレッドは3.0~3.5%で推移していた。そのため、新型コロナ問題が世界的に収束し、クレジット市場も19年までの水準で継続的に落ち着くことが確認されれば、Jリートの分配金利回りスプレッドが3.0~3.5%に低下することは十分可能であると考える。
 20年6月末時点のJリート市場全体におけるNAV倍率(株式における株価純資産倍率に相当。鑑定評価額ベース)は、投資口価格急落により0.99倍となり、19年12月末時点の1.20倍から大きく低下した。19年12月末までの過去10年間および過去7年間における平均NAV倍率はそれぞれ1.12倍、1.21倍であった。19年12月末時点では過去7年間の平均値とおおむね同水準にあったが、20年6月末時点の同倍率は過去10年間および過去7年間での平均値をいずれも下回る。
 各リートが決算ごとに公表する鑑定評価額は上昇傾向にあり、含み益(鑑定評価額-帳簿価格)の金額および含み益率は改善が続いている。Jリート市場全体での保有物件の含み益(鑑定評価ベース)は、20年4月末時点で3.9兆円へと拡大し、含み損益率は+22%と拡大が続いており、Jリート市場発足来最高の含み益率となっている。ただし、足元では新型コロナの影響により賃料上昇を見込みにくいこと、特にホテルや商業施設では、一時的とはいえ20年のNOI(=Net Operating Income、不動産賃貸利益+減価償却費で算出)もしくはNCF(=Net Cash Flow、NOIから資本的支出を控除したもの)は大きく減少する見通しであることから、今後の鑑定評価額の動向には注視したい。

今後のメインシナリオは2,000ポイント

 筆者の東証リート指数の見通しとして、メインシナリオでのターゲットは2,000ポイントとしている。一部リスクを意識しつつも、新型コロナ問題が収束し、Jリート市場を取り巻く環境が19年の状況に近い水準にまで回復することを期待するシナリオである。
 同シナリオに基づくJリート市場全体の1口当たり分配金(DPU)成長率の前提は、20年が前年比-7.2%と想定している(図表1)。新型コロナの影響を受け、20年下期のオフィス空室率が19年末比2%ポイント上昇することに加え、商業施設において3カ月間の賃料収入が前年比-20%(都市型商業施設の半分で賃料減免されるイメージとして想定)、ホテルの賃料収入が6カ月間で同-50%(変動賃料がゼロでかつ固定賃料の一部減免というイメージとして想定)、その他は横ばいと想定している。
 20年後半には新型コロナ問題が収束し、21年のDPUは20年比+5.8%となり、ホテルセクター以外はおおむね19年水準に回復することを想定する。22年および23年は賃料増額(内部成長)によりそれぞれ前年比+3.3%、+2.0%と見込む。
 一方で、新型コロナが意識される環境下におけるシナリオとしては、賃料収入減少や資金繰りリスクが意識されることにより、1,550~1,800ポイントのレンジで推移すると考えている。なお、「1,800ポイント」という水準は、20年にJリート市場全体で減配となった後、21年以降も賃貸市況に落ち着きが見られずにDPUが回復しないシナリオであり、「1,550ポイント」という水準はさらなる賃貸市況悪化に加え、資金繰りリスクが悪化することにより21年以降も減配が続くシナリオである。

オフィス・賃貸住宅・物流は総じて底堅い

 今後のオフィス市況に関しては若干の空室率上昇が想定され、新型コロナ問題の影響からその動きには注意が必要であるものの、過度な悲観論には疑問を持っている。三鬼商事が公表する東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)のオフィス空室率は、20年2月末には1.49%にまで低下した。3月以降は上昇に転じたものの、6月末時点で1.97%にとどまっている。弊社では、東京都心5区の空室率を20年末3.9%、21年末3.4%、22年末3.1%と予想している。「コロナ後」のオフィス市場見通しでは環境に配慮し、最先端のITに対応できるオフィスへの需要が高まることに加え、21~22年のオフィス新規供給が限定的なこともあり、オフィス市場は底堅いとの見解を持つ(図表2)。
 賃貸住宅市場では稼働率は高水準で安定し、賃料はテナント入れ替え時に着実に増加する基調が続いている。東京都心の賃貸住宅の空室率は高級賃貸住宅、一般賃貸住宅いずれも09年後半以降改善が続いてきた。Jリートが保有する住宅の空室率は20年4月末時点で3.3%であり、3%前後で安定的に高稼働状況を維持している。賃料単価に関しては、高級賃貸住宅では14年以降上昇傾向となって19年からは高止まり、一般賃貸住宅は16年以降上昇基調にある。ただし、新型コロナの影響で足元では転入退去の動きが鈍ることにより、賃料増額を実行する機会や礼金収入を確保する機会が減少している可能性がある。住宅型リートに対しては安定した賃料収入を確保することは期待される一方、賃料増額期待を過度に持つことは禁物であると考える。
 物流施設はEコマース市場の拡大等で需要が旺盛であり、今後も安定した賃料収入が期待できる。CBREのデータによると、20年3月末時点の首都圏の大型マルチテナント型物流施設の平均空室率は0.5%(19年12月末:1.1%)、既存物件(竣工1年以上)では0.4%(同0.4%)となっている。同月末の近畿圏の空室率は平均で3.7%(同4.0%)、既存物件の空室率は3.6%(同4.4%)である。
 中長期的にもEコマース専業企業のみならず一般小売業等のEコマース事業の進展等により電子商取引市場は拡大を続け、大規模な先進的物流施設に対する需要は大きいと考えられる。充実した管理体制や従業員が働きやすい環境を提供する先進的な物流施設へのニーズは拡大しよう。

ホテル型リートは激烈な落ち込みに

 商業施設に関しては、平常時であればテナントと長期契約を締結しているため高水準の稼働率が想定される一方、20年は新型コロナを背景とした一時的な賃料減額や減免が想定される。20年4~6月に発表された商業施設型等のリートの決算状況等のデータに基づくと、新型コロナの影響は食品スーパーやドラッグストア、ホームセンターは軽微もしくはむしろ堅調であった。緊急事態宣言下での外出自粛要請中であっても、これらは生活必需品を扱う業種であり、需要は旺盛であった。
 一方、都心部の路面店(ファッションブランド)や飲食店舗、アミューズメントストアやフィットネスクラブは不要不急の外出制限や閉鎖的な空間での活動制限をされる中で厳しい状況であった。また、その大半は自治体からの要請に基づき一部もしくは全部が営業休止となった。このような業種の商業施設・店舗を保有する複合・総合型リートには、テナントから賃料減額や支払猶予が要請された。リート各社によって対応は異なるものの、一時的な賃料減免に応じる姿勢であった。
 ホテルについては大量供給等により市況が調整局面に入っていたところに新型コロナによる悪影響がそれに拍車を掛けた状況にあり、足元では相当厳しい状況にある(図表3)。ジャパン・ホテル・リート(JHR)の主要変動賃料等導入ホテルのRevPAR(=Revenue Per Available Room、販売可能な客室1室当たりの収益)の動きを見ると、15年は前年比+11.2%と高い伸びを示し、16年も上昇幅は縮小したものの+6.3%と好調を維持した。
 しかし、17~18年にかけては大量供給の影響を受けて前年比プラスは維持したものの鈍化が鮮明となり、19年はホテルの大量供給に加えて韓国人旅行者の減少等により前年比-2.1%とマイナスに転じた。そして、新型コロナ問題が深刻さを増した20年2月以降はかなり厳しい状況となり、直近発表データである20年5月のRevPARは前年同月比-94.0%(稼働率:-78.8ppt、平均客室単価:-37.8%)となり、4月の-92.4%からさらに悪化。6月のRevPARは同90%程度減少する可能性がある。他のホテル型リートについても同様の傾向にある。(「週刊金融財政事情」きんざいOnline限定記事より転載)

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最終更新:8/9(日) 15:30

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