IDでもっと便利に新規取得

ログイン

子供の教育費を払いながら老後資金を貯める方法

8/9 6:11 配信

東洋経済オンライン

JKで高2女子の大里花実は、新型コロナをきっかけに、人生についていろいろ考え始めた。すると、自分がいかに世間知らずでお金のことも知らなさすぎることに気づいた。第6回は「人生のお金のプランをどう立てるか」について。
第1回 JKだって超知りたい「大学はいくらかかるのか」第2回 「大学費用1000万、20年返済」なら毎月いくらか第3回 親は「子供の大学費用」をどれくらい出すべきか第4回 教育費が足りない家庭が実行すべき3つの計画第5回 誰でもできる「人生に絶対必要なお金」の貯め方

 まずは前回までのあらすじから。高2女子の大里花実は、所属する「生活科学クラブ」の顧問であるロンドン・エマ先生からアドバイスを受け、父母が稼ぐ家の収入と支出を計算することになった。ポイントは、ひとそれぞれの老後に備え、収入と支出、貯金や借金などを見える化したうえで、今貯めるべきお金である「必要貯蓄額」を計算することだった。

■「自分の老後資金」を「見える化」する方法とは? 

 さて、花実を含め4人家族の大里家は、父(48歳)母(45歳)とも働いているが、大学3年生の姉が大学を卒業すると、家計は500万円まで貯蓄が減ることがわかっている。花実の大学の学費はもちろん、父母の老後のことを考えると、やや不安だ。

 いったい、大里家はこれからいくら貯めていかなければならないのか……。今日は、特別にエマ先生と2人だけのミーティング。Zoomを使って話をすることも多いが、久しぶりの「リアル会議」だ。

 「エマ先生!?  こんにちは!」

 「ハイ!  ハナミ、こんにちは。ご両親へのインタビューはうまくいきましたか?」

 「はい、今後の平均手取り年収、現在資産額がいくらか、そして人生プランシートもたぶんバッチリです」

 花実は、昨夜、エマ先生から渡された「人生プランシート」をもとに、両親の老後の希望を聞いた。「人生プランシート」というのは、家計の現状を把握するためのものだ。今後の働き方、家族構成、ライフイベントは人それぞれなので、自分の老後資金がいくら必要かを考えるベースになる。

 花実は早速、エマ先生に注意深く確かめながら、以下の「人生プランシート」の空欄に、両親から聞いた数字を埋めていく。

■今30歳以下なら100歳まで生きることを想定

 花実の父は現在48歳。60歳が定年だけど、継続雇用で65歳まで働く予定だ。母は45歳で現在派遣社員。でも、頑張って正社員になって65歳まで働きたいと言っている。ということは、父はあと17年、母は20年働くことになる。

 「現役年数(a)は、パパとママ、共働きだけど、どっちを入れるの?」

「夫婦合算して考える場合は、収入の多いほうの年数を入れましょう。老後年数(b)は寿命が長いほうを入れてね」

 ということは、大里家は、「現役年数(a)」は、パパの年数「17年」を入れて、「老後年数(b)」は、寿命が長いだろう女性のほうで、95歳くらいまで生きることを想定する。母のほうで、「33年」だ。

 「今30歳以下の人は100歳まで生きることを想定しておいたほうがいいわね」

 「人生100年時代だもんね」

 「今後の平均手取り年収」に入れる金額は、2人の今後の年収の推移をざっくりこんな感じで出して平均した。父の収入は、コロナによる業績悪化で低下してしまった。

 花実は、人生プランシートをもとに「人生設計の基本公式」に数字を入れていく。

 大里家の人生プランシートは以下のとおりだ。

 これに基づいて、注意深く、老後に貯めるべきお金がすぐにわかる「人生設計の基本公式」に当てはめていく。

■「老後生活費率」という大切な考え方

 まず、大里家の「今後の平均手取り年収 (Y)」は、夫婦合算すると約840万円だ。次に、大里家の貯蓄額だ。今の貯金は740万円。これからお姉ちゃんが卒業するとジワっと減るところまではわかっていたが、さらに花実の教育費が、予備校代や受験料も含めてトータル1540万円と予定すると、「現在貯蓄額(A)」は差し引き「-800万円」になる。

 「そうね。今後使うお金は、「現在貯蓄額(A)」からマイナスし、逆に退職一時金や貯蓄の増加など将来増えるお金はプラスすることがポイントね」

 続いては、「老後生活費率(x)」。これは、今の生活費を老後どれだけ下げられるかということだけど、大里家は、現在、姉の大学の授業料と花実の授業料や塾代で大きな金額になっている。でも、今後、花実たちが社会人になって独立して、住宅ローンも完済すれば、生活費の支出は大きく下がる。相談の結果、「老後生活費率(x)」は50%として計算してみることにした。

 「人生プランには、どういう老後を送りたいかという希望も盛り込みます。現役時代と変わらない生活レベルを保とうと思うなら100%、3割くらい減ると思えば70%という具合ね。ただ、老後、あまり大きく減ることを期待しないほうがいいわね。身に付いた習慣を変えるのは難しいし、ゆとりも大切だから。見当がつかなければ、ざっくり0.7くらいにしておいて、最後まで計算してから修正すればいいですよ。続けましょう」

 「はあい。最後の数字は年金の手取り額(P)ですね」

 年金額は、毎年お誕生日月に送られてくる「ねんきん定期便」が目安になる。花実も昨日、ママにはがきを見せてもらった。35歳、45歳、59歳のときには、封書で全加入期間の年金記録情報が届くんだって。

「50歳以上の人は、今後働き方が変わらない前提で、おおよその年金額を知ることができますよ。50歳未満の人は、これまでの加入実績に応じた年金額が記されているわ。もっと詳しく知りたい場合は、ねんきんネットで調べてみてね」

■おおよその年金額は…

じゃあ、ねんきんJK花実が、おおよその金額を計算する方法を紹介するね。年金のしくみは前に説明したとおりよ。(4回目参照)

 まず、すべての人が対象になる1階部分の老齢基礎年金は、年収に関係なく、加入期間1年ごとに2万円増えて、20歳から60歳になるまでの40年間(480カ月)保険料を納めれば、満額の78万1700円(令和2年度)になります。

 2階部分は、会社員や公務員が加入する老齢厚生年金で、加入期間、給与、賞与の額に応じて人それぞれ違うの。ざっくり、「ねんきん定期便の金額(老齢厚生年金)+今後の平均年収 × 0.0055 × 働く期間」で求められるよ。

 「うちのパパとママの年金額は、合算すると341万円。ここから社会保険料や住民税が引かれるので、『手取り年金額(P)』に入れるのは、290万円(※)。額面の金額からざっくり、額面×0.85で計算してみました」

 「住んでいるところによって違うし、計算もややこしいので、あくまでざっくりね。これで6つの数字が入りましたね。必要貯蓄率はいくらになった?」

 じゃん!  「必要貯蓄率(S)」は約18%でした!  今後、パパとママは65歳まで、手取り年収の18%を貯蓄していけば、老後、月額約28万6000円で生活費をキープできまーす! 

「OK!  皆さんも、計算ツールを使って、自分の必要貯蓄率をぜひ計算してみてね」

 「でもね、エマ先生、大問題があるの」。ここまできて、花実はエマ先生につぶやいた。

 「大問題?」

 そうなのだ。実は、父と母の楽しみは、2人であちこち旅行に行くことなのだ。コロナ禍で行きづらくなって旅行熱はますます高まり、「行きたいところリスト」はどんどん増えている。

 そんな2人の希望を「人生プラン」に盛り込み、つくったプランに旅費50万円×10回で500万円をマイナスすると、「④現在貯蓄額(A)」は「-800万円」から「-1300万円」になるではないか。さらに、花実は老後生活費は20万円以上もあるから余裕だと思っていたが、そうではなさそうだ。母は、「老後生活費が約28万6000円では心もとない。せめて33万円くらいは欲しいわ」というのだ。

■老後は毎月いくら必要か? 

 「花実のおじいちゃんとおばあちゃんは70代だけど、コロナ前は、とっても元気にあちこち旅行に行って楽しそうだった。だから、パパとママにも好きなことをして、いつまでも若々しくいてほしいなって思うんだ。でね、老後生活費率を上げて計算すると、必要貯蓄率(S)も上がっちゃうでしょう?  お年をとっていくパパとママが大変だなって。エマ先生、どうすればいい?」

 「老後に余裕も欲しいけれど、今の生活もきつきつにはしたくない。それはそうよね。ポイントはやっぱり教育費でしょうね。親子でどう負担していくかを考えなくちゃね。親の負担が大きすぎると、老後が苦しいものになるし、そもそも計画どおりの貯蓄ができなければ、結果的に子供に負担をかけることになるでしょう?  逆に、子供の負担が大きすぎると、子供自身が貯蓄ができなくなる」

 「それはヤバい!」

 「教育費をどうしていくか、奨学金をいくらまで借りられるか、ハナミの必要貯蓄率を出して具体的に考えてみましょう」

 ※年金額は令和2年の年金額をベースにした手取り額です。20歳未満60歳以降の厚生年金加入期間は、基礎年金の合算対象期間として、相当額が厚生年金の「経過的加算」として反映されます。年金額の算出方法等は『人生にお金はいくら必要か』(東洋経済新報社)をご参考にしてください。

FPエマ先生からアドバイス
 教育費の基本的な考え方は、高校までの費用は貯蓄を取り崩さず、月々の生活費の中から賄えるのが理想です。教育費を支払いながら、必要貯蓄率を貯蓄していかなければなりません。言い換えれば、必要貯蓄率を守れる範囲で、教育費の支出を抑えることが必要になります。しかし、子供の希望をかなえてあげたい、教育費は聖域であるという親の思いもわかります。そのうえ、教育費は年々上がり、家計を圧迫しています。

 解決の道は、「人生設計の基本公式」で将来の見通しを立て、長期的な視点を持って親子で話し合うことでしょう。さて、大里家の家計はいかに。次回に続く。

 次回は8月16日掲載の予定です。

東洋経済オンライン

関連ニュース

最終更新:8/9(日) 6:11

東洋経済オンライン

投資信託ランキング