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コロナ後「GAFAやBAT」に続く急成長企業の息吹

8/9 8:10 配信

東洋経済オンライン

 5月25日の緊急事態宣言解除後、ぼんやりと漂った「このまま、緩やかに終息していくのではないか……」というような希望的観測もむなしく、新型コロナウイルス新規感染者がここにきて急増している。

 はたして人類はどうなっていくのか? 

答えは誰にもわからないが、だからこそ参考にしたいのが、『コロナ後の世界』(ジャレド・ダイアモンド、ポール・クルーグマン、リンダ・グラットン、マックス・テグマーク、スティーブン・ピンカー、スコット・ギャロウェイ 著、大野和基 編、文春新書)だ。

後世の歴史家は、コロナ以前・コロナ以後で年表に一線を画すかもしれません。わが国だけでなく、世界的にますます混迷が深まる中、私たちはどうなるのか、人類の未来に羅針盤はあるのか――世界を代表する知性6人に問いました。(「はじめに」より)
 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)地理学教授のジャレド・ダイアモンド氏を筆頭に、世界で最も影響力を持つ経済学者の1人として知られるポール・クルーグマン氏まで、各領域の重要人物が独自の考え方を述べたもの。

 新型コロナはもちろん、少子高齢化や格差問題、人工知能やGAFAが作る未来像など、テーマも多岐にわたっている。その中から、ニューヨーク大学スターン経営大学院のスコット・ギャロウェイ教授が考える「パンデミック後のGAFAの動向」に焦点を当ててみたい。

 言うまでもなく、『the four GAFA』(東洋経済新報社)において、Google、Apple、Facebook、Amazonを「ヨハネの黙示録の四騎士(それぞれが地上の4分の1を支配し、剣、飢饉、悪疫、獣によって地上の人類を滅ぼす権威を与えられた者たち)」に例えた人物である。

■ますますパワフルになった? 

 新型コロナウイルスのパンデミックは、GAFAを筆頭とするビッグテック企業にどのような影響を及ぼしたのだろうか?  この点についてギャロウェイ氏は「全般的にますますパワフルになっている」と指摘している。

 彼らは巨額のキャッシュを貯め込んでいるため、ロックダウン(都市封鎖)によって困窮したほかの企業が守勢に回らざるをえないときでさえ、攻勢に出られるからだ。

ほとんどの企業が従業員を自宅待機させ、すでにレイオフ(一時解雇)しているところも少なくない中、フェイスブックはインドの通信最大手ジオ・プラットフォームズに57億ドルを出資し、動画サイトであるGIPHYの買収を発表するなど、攻めに攻めています。雇用も増やしていますし、5月22日に株価は過去最高値を更新しました。アップルも6月10日に株価最高値を更新し、時価総額で1兆5000億ドルを超えました。(141ページより)

 したがって今後しばらくは、ビッグテックによる企業統合の動きが続くという。パンデミックが始まったころ、デジタルマーケティングの60%をコントロールしていたグーグルとフェイスブックのシェアは今後、70~80%まで高まると予測するのである。

 とくに注目すべきは、eコマースの売り上げが急増しているという事実。コロナの影響で食料品もオンライン購入に大きくシフトしているということで、事実アマゾンの株価は4月に過去最高値を更新したそうだ。

 なおアメリカの緊急経済対策は追加分も含めて3兆ドル規模だが、その恩恵にあずかるのはアマゾンとウォルマートの2社のみ。そしてアメリカ政府は、この2社が受け取るであろう莫大な資金に加え、競合する企業の98%に閉鎖を命じた。

 それは感染拡大防止のためにほかならないが、アマゾンとウォルマートの株主にとって、これが絶対的に有利なシナリオであることは間違いないだろう。

■たいていの場合、勝つのは? 

 GAFAの中で、アップル以外の3社は20%の成長率を維持している。とはいえGAFAといえども、ただ現在の事業を続けていくだけでは永遠に成長することなどできない。必然的に、お互いのビジネス領域を食い合うことになるからだ。

 事実、食い合いはすでに始まっている。グーグルのほか、フェイスブックを親会社に持つインスタグラムが、アマゾンの領域であるショッピングに参入していることがそのいい例だ。

 フェイスブックも、投稿によって消費者の購買欲をかき立てることで、商品を検索するグーグルやアマゾンからマーケットシェアを奪っている。そしてアマゾンの扱う商品数は最大だ。

 それだけではない。ほかにも新たな成長戦略として、フェイスブックは仮想通貨のリブラを計画し、アマゾンは輸送業に参入しつつある。言うまでもなく、イノベーションの継続こそが成長のカギとなるからだ。

では、GAFAの中で最も生き残る可能性があるのはどれか? 
難しい質問ですが、私はアマゾンだと思います。もし私が『the four GAFA』の続編として『the one』というタイトルの本を書くならば、それはアマゾンについての本になるはずです。(157ページより)
 例えばその根拠の1つとして氏が引き合いに出しているのは、クラウド・ビジネスの分野においてAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)の存在感が圧倒的に増している点。2006年に設立されたAWSは、企業向けのクラウドサービスを提供する子会社である。

AWSは世界のクラウド事業におけるシェアが32%でトップです。2位のマイクロソフトのシェアは17%にすぎません。新型コロナで在宅勤務をする人が一気に増えましたが、仕事のためにクラウドを通じてデータをやり取りすることが多かったはずです。これもAWSに多大な利益を与えたことでしょう。(158ページより)
 この5年間で最も革新的なハードウェアはアマゾン・エコーだという。ご存じのとおり、「アレクサ」の愛称でも知られる、AIを搭載したスマート・スピーカーだ。

 グーグル・ホームもあるとはいえ、アメリカではエコーがシェアの7割を占めているというのだ、その点を鑑みたうえで、さまざまな分野で食い合うGAFAにおいては、たいていの場合アマゾンが勝つと分析しているのである。

■企業はいつか必ず死ぬ

 とはいえ歴史的に見た場合、企業の死亡率は100%だという。「フォーチュン100」(雑誌『Fortune』が掲載する、グローバル企業の総収入ランキング)の企業の中で、100年前から続く企業はわずか11社。つまり生き物と同じように、世界中のすべての企業には“終わり”があるのだ。

加えて新型コロナという想定外の事態です。このウイルスが経済面に及ぼす影響は、「変化の担い手(change agent)」というよりも、「促進剤(accelerant)」としての側面が強いようです。もともと苦境に陥っていた映画館やデパートは、もう臨終寸前にまで追いやられました。ブティックやセレクトショップのような衣料専門店も、ショッピングモールから激減するでしょう。(159ページより)

 しかしパンデミックでもGAFAはパワフルになり、全体の70~80%の企業は弱体化する。格差がさらに拡大するわけだ。結局はそういうことかとモヤモヤした気持ちにもなるが、そんななか、ギャロウェイ氏は新たな潮流に注目してもいるようだ。

■リスクテイキングを認めよ

 パンデミック後にも成長を期待できる“NEXT GAFA”として、中国のBAT(検索エンジンの「百度(バイドゥ)」、IT企業の「阿里巴巴(アリババ)」、SNSの「騰訊(テンセント)」)の名を挙げているのだ。BATが世界で最も価値のある10の企業に入ることは間違いないだろうと。

「今や、インターネットは2つある」と言われます。2つとは、西洋のインターネットと、中国のインターネット「Great Firewall」(万里の長城Great Wallとネットワークの壁であるFirewallをかけた言葉)です。

しかし、現在のところ、中国の企業がアメリカに入ってくる様子はありません。アメリカを成長市場と見ていないわけではなく、中国政権とアメリカが、非常に外国人嫌いで、愛国主義的だからです。(164ページより)
 そんなこともあって氏は、「BATとGAFAがぶつかり合う場所は、アメリカではなく、アフリカやインドだろう」と考える。なぜならBATは中国国内だけではなく、東南アジア全体で成長しているからだ。

 また、中国にはGAFAが進出しづらい理由がもう1つある。まずGAFAのような企業を迎え入れたのち、知的財産を盗んでから追い出し、「まねして起業した国内企業で利益の大半を獲得する」というビジネスモデルを選択していることだ。それは国同士が結ぶ、さまざまな貿易協定に違反している。

 中国では国が中心となって個人データの収集を進めており、それがBATの巨大なポテンシャルになっていることは否定できない。だが同時に、アメリカやヨーロッパが、国民の自由やプライバシーを重んじることにも重要な価値がある。

 そして、その違いは今回のパンデミックへの対処法でも明白なものとなった。たしかに短期的には、国民のデータを収集できるというメリットがあるかもしれない。だが長期的に見れば、無制限にデータを収集されることを人々から嫌がられるというデメリットもあるわけだ。

 とはいえ、BATの動向から目が離せないことは間違いないだろう。ちなみに日本企業にも“NEXT GAFA”のプレーヤーになる可能性はあるものの、もっとリスクテイキングを文化として認めるべきだともいう。

 その根拠は、アメリカを見れば明らかだ。失敗を許し、イノベーションを受け入れる文化があるからこそ、アメリカには世界中から優秀なエンジニアたちが集まってくるわけである。

■次の1000億ドル長者は

 さて、ではGAFAやBATに続く企業はどのようなものになるのだろうか?  この点についてギャロウェイ氏は、「次の1000億ドル長者は、テクノロジーとイノベーションをヘルスケアに投資し、応用する人」だと予測している。

なぜなら、ヘルスケアの進化は時間の節約になるからです。これまで病院で無駄にした待ち時間や、治療にかかった時間を、他のことに使えるからです。今、大半の人がコスト節約に重点を置きますが、ビッグウィナーとなるのは、時間を節約してくれる企業です。(65ページより)
 いささか唐突にも思えるが、例えば余計なCMを見なくて済む動画配信のストリーミング・メディアが大きな成功を遂げていることを考えてみれば、時間の節約にそれだけ重要な意味があるかを察することは可能だ。

 ヘルスケアについても同じで、スマート・カメラとAIがあれば時間短縮は容易に実現できる。スマート・カメラを利用してX線で肺を撮影し、その画像を世界のどこかにいる放射線科医に送る。次いでペイパルで支払いをし、報告書を手に入れると、主治医が20~30分のうちに報告書を読み、異常があればすぐに治療する――。例えば、そんなことも可能になるのだ。

 ただし“NEXT GAFA”を占う前に、いま一度、認めなければならないことがあるそうだ。すなわち現実問題として、生活のほとんどすべてをGAFAに頼っているという事実である。

 私たちがイノベーターを偶像崇拝し、その対象であるGAFAが政府をも動かす資金力を持っていることは、“危険な組み合わせ”だというのだ。もちろん、GAFAが何十億人もの生活の価値を高めているのは間違いない。だが彼らの目的は、がんの撲滅や貧困の根絶ではなく、つまるところ金儲けに主眼があるからだ。

 だとすればやはり、「テクノロジーとイノベーションをヘルスケアに投資し、応用する人」の登場に望みをかけるしかない。彼らの活躍は、コロナ後の世界を生きていくすべての人が望むところなのだから。

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最終更新:8/9(日) 8:10

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