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なぜ政府は緊急事態宣言を拒むのか?その「不都合すぎる理由」

7/14 8:00 配信

マネー現代

4日連続の200人超えを記録

(文 町田 徹) 新型コロナウイルス感染症が首都・東京で猛威を奮い、再び全国で症例が増えている。7月9日と10日、東京都では新型コロナウイルス感染症の新規感染者数がそれぞれ224人と243人に達し、2日連続で今年4月17日に記録した過去最多の206人を上回った。

 この結果、埼玉県の44人、神奈川県の32人、大阪府の22人などをあわせた7月10日の全国の新規感染者数は430人で、1日の感染者数が4月24日以来85日ぶりに400人を突破。さらに東京は11日と12日もそれぞれ206人の感染者が新たに確認され、初めて4日連続の200人超えを記録した。

 だが、政府や東京都は感染の拡大防止よりも、計画通りの経済活動の再開に軸足を置いている。

 象徴的なのが、大規模なイベントを予定通り解禁することへの拘りだ。こうした姿勢を受けて、プロ野球とJリーグは、7月10日から最大5000人の観客を入れての興行に踏み切ったのに続き、来月1日からは会場の収容人員の半分まで観客を入れていく方針だ。

 地方から感染拡大を助長することにならないかと不安の声があがっているにもかかわらず、7月22日からは、コロナ・ショックの影響を受けた地域における需要喚起と再活性化を目指し、今年度の補正予算で1兆6794億円が確保された「Go Toキャンペーン」も断行するという。

 その一方で、西村康稔・経済再生担当大臣は連日のように「(前回、緊急事態宣言を発出した)4月とは状況が違う」「感染者は30代以下が非常に多く、重症化する例が比較的少ない。医療体制もひっ迫しておらず、PCR検査の体制も整ってきている」と繰り返し、緊急事態宣言を出す考えがないと強調している。

 クラスター(集団感染)の温床となっている“夜の街”のホストクラブやキャバクラへの本格的な営業自粛要請についても、西村大臣は「新宿が駄目なら池袋、六本木、渋谷と他の店で働くこともあり、逆に感染を拡大することになりかねない」と慎重な考えを示してきた。

世界的な流行はいまだ衰えず

 何もしなければ、日本国民が何千万人も感染して集団免疫を獲得するまで、新型コロナウイルス感染症の拡大は続くだろう。結果として、政府の無策が原因で数万、数十万人単位の人の命が危険にさらされることになりかねない。

 新型コロナウイルス感染症が猛威を奮っているのは、何も日本だけではない。

 米ジョンズ・ホプキンス大学によると、世界の新型コロナウイルス感染症の患者数は日本時間の日曜日夜、1274万人と1日で21万9400人増えた。その前日の7月10日の新規感染者数は22万9900人で1日として過去最多を更新、一向に流行が衰えを見せる気配がない。

 このところ感染者の急増が目立つのは、7月6日にロシアを抜いて、アメリカ、ブラジルに次ぐ感染者数世界第3位になったインドだが、日本時間の日曜日夜の段階で5位にペルー、6位にチリ、7位にメキシコが続いており、2位ブラジルを含めて中南米でのパンデミックの深刻さが浮き彫りになっている。

 また、感染者数第9位に南アフリカ共和国が顔を出しているのも、今後のアフリカでの感染爆発の予兆として注目を集めている。

 そうした中で、感染者数2位のブラジルでは7月7日、ボルソナロ大統領が新型コロナに感染していたことが判明、世界に衝撃が走った。

 当人はこの日、現地テレビの取材に応じ、検査で陽性反応が出たことを明らかにしたうえで、前夜には38度あった熱がすでに下がっており、「私はとても元気で、散歩に行きたいくらいだ」と健在をアピール。マスクを外して記者団に話しかけ、記者たちが大統領を告発する騒ぎになったという。

米国では再び規制をかける動きへ

 ボルソナロ大統領は当面、在宅で職務を続けると気丈に振る舞ったが、北欧スウェーデンをモデルに経済活動の維持と感染抑止の両立を目指すという施策に失敗して、自ら引き起こした感染爆発にのみ込まれたのは明らか。ブラジルは、単なるコロナ危機を通り越して、経済に続き、国家財政も悪化の一途を辿る複合危機の様相を呈している。

 また、ソーシャルメディア各社がフェイクニュースを垂れ流したとして閉鎖したアカウントの保有者が、同大統領やその親族に繋がるという衝撃的なニュースも飛び込んで来た。

 感染者数世界第1位の米国も事態は深刻だ。

 日本時間の日曜日夜の感染者数は324万人。1日当たりの新規感染者数は過去のピークを大きく上回り、11日までの5日連続で6万人を超えている。特に南部や西部での感染拡大が目立ち、カリフォルニア州は7月8日に1万1694人と新規感染者数が最多を更新。フロリダ州やテキサス州でも1日で1万人を超える日がある。

 米国は、5月からの段階的な経済再開が人々の接触機会を増やして、感染が加速したとされており、我々日本人はそのコロナ対応を反面教師とすべきだろう。

 米国の経済再開戦略は頓挫し、再び規制をかける動きが広がっている。

 フロリダ州マイアミのある地域では、先週からレストランやジムの営業を停止。ニューヨーク州は7月6日に予定していたレストラン店内の飲食解禁を延期せざるを得なくなった。

 一方、ニューヨーク州ニューヨーク市は6月に小売店の営業を制限付きで再開したものの、人出の回復は今なお鈍い。原因は、在宅勤務者が今なお多いことで、オフィスでの勤務が本格回復するのは秋以降とみられている。

 フロリダ州は8月に学校を再開する方針だが、教師からは反発が強まっている。直近では、頑なにマスク着用の効果を認めなかったトランプ大統領が、病院視察にかこつけてマスク姿で現れる映像がニュースで放映された。

なぜ政府と東京都は煮え切らないのか

 筆者は、経済ジャーナリストとして経済の大切さを十分に理解しているが、それでも、このような局面で、人命や健康と経済をはかりにかけることはできない。

 今は、まず、コロナの収束に全力を傾ける時だろう。そうした観点で見ると、日本政府や感染拡大の中心地である東京都の姿勢はあまりにも頼りない。

 例えば、東京都の小池知事は、1日の新規感染者が224人とそれまでの過去最悪になった7月9日、206人でそれ以前の過去最悪だった4月17日と比べて、検査数が919件から3400件と3.6倍に増えたことが原因だと指摘しただけで、たいして深刻な状況ではないと言わんばかりだった。

 3、4月の時点では、政府による緊急事態宣言の早期発出を催促するかのようだった小池知事にして、こうなのだ。政府が緊急事態宣言発出に及び腰になるのは当たり前かもしれない。

 実際、新型コロナウイルス対策に関し、西村大臣は7月8日の衆院内閣委員会と同9日の参院内閣委員会で答弁に立ち、緊急事態宣言の再発令については「今は宣言を発出した4月7日前後の状況とは違う。直ちに宣言を発するような状況ではない」と重ねて強く否定した。そして、西村大臣は11日の記者会見でも、再び緊急事態宣言を出す状況にはないという認識を示したのだ。

 いったい、なぜ政府や東京都は煮え切らないのか。現状では推測するしかないが、第一に検証すべきは、公的債務の問題だろう。

 IMF(国際通貨基金)の予測によると、先進国の公的債務はGDP比で今年141%となり、第2次世界大戦下の1945年の116%を大幅に上回るという。先進国の中で、特に日本は268%と前年から30ポイントも上昇して、財政資金不足からコロナ対策を打ちづらくなりかねないと示唆されている。

財政資金難と支持率低下への懸念

 振り返れば、安倍政権は今年度に入ってすでに2度も補正予算を組み、小池都政もこれまでの5度の補正でコロナ対策に大盤振る舞いをして、今年3月末に過去最高の9345億円あった「財政調整基金」が10分の1以下になり、青島幸男知事時代に都の「財政危機」宣言した1998年度の水準に近づいているという。

 営業自粛を要請するには十分な補償ができないという、財政資金問題が制約になっている可能性は否定できない。

 このところの内閣支持率の低下も検証する必要がありそうだ。

 元法務大臣の河井克行氏夫妻が去年夏の参議院選挙で、公職選挙法に違反した容疑で起訴された事件で、すでに安倍政権は強い逆風の中にある。このうえ国民の不興を買うのが確実な外出・自粛規制や緊急事態宣言を出すことに躊躇してもおかしくないからだ。

 しかし、それでも、拡大する新型コロナ・ショックをこれ以上放置することは許されない。

 感染者の内訳では、依然として、ホストクラブなど「夜の繁華街」の関係者や20~30代の若者が多くを占めるが、専門家は、重症化リスクの高い年齢層の患者の入院が次第に増えていることや、「夜の繁華街」関係者の家族や会食参加者に感染経路が広がり、もはや夜の街にとどまっていないとの指摘が増えている。

 特に、西村大臣は一連の発言の中で、感染例が多い「夜の街」に対象を絞った休業要請を出すことについてさえ、「新宿が駄目なら池袋、六本木、渋谷と他の店で働くこともあり、逆に感染を拡大することになりかねない」と慎重な考えを示したのは大きな問題点だろう。

 同大臣は12日の会見でも、今月22日から「Go Toキャンペーン」が始まるのにあたり「首都圏での感染が広がっていることに注意しながら進めていかなければならない。感染防止策を徹底しながら、経済活動を広げていく」と述べる一方で、東京、神奈川、埼玉、千葉の4都県を挙げて、「感染状況をみながら休業要請を考えないといけない」「(東京都が実施しているホストクラブなど接待を伴う飲食店での検査を)まずは応援したい」と強調、新たな対策を手控える考えを強調したのだ。

「責任放棄」と言わざるをえない

 だが、実は、安倍内閣は今年1月28日の閣議で、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症予防法)に基づく政令の改正を行い、新型コロナウイルス感染症を同法の「指定感染症」に指定している。

 この結果、同法に基づいて、厚生労働大臣や都道府県知事は感染が疑われる人に必要とみられる検査や健康診断を受けさせたりするだけでなく、医師の所見があれば10日以内の入院をさせることもできるのだ。入院期間の延長も可能だし、その際、患者の負担を無くすため、入院費を公費負担にすることもできる。

 こうした法規を活用せずに、「新宿が駄目なら池袋、六本木、渋谷と他の店で働くこともあり、逆に感染を拡大することになりかねない」というのは政府としての責任放棄としか言いようがない。

 万が一、同法に抜け穴があるならば、国会をただちに召集して法改正をしてでも、速やかにこれ以上の感染拡大を予防する責任が政府にはあるはずだ。

 感染を抑え込んだとして5月から外出や経済活動の制限を段階的に緩和してきたオーストラリアのビクトリア州は7月8日、オーストラリア第2の都市メルボルンとその周辺について、地元感染者が急増していることを理由に住民を対象にした外出制限を再び敷いた。

 こうした勇気ある決断がなければ、何カ月も前から感染の温床とされながら、悪化の一途を辿っている“夜の街”での感染の収束は覚束ないだろう。政府や東京都のトップに、今一度、自らの責務を真摯に考えていただきたい。

マネー現代

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最終更新:7/14(火) 8:00

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