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結局、ヤマダ電機は大塚家具に「何も期待していない」のかもしれない

7/14 9:01 配信

マネー現代

コラボ店舗はどうなっているか

(文 中沢 光昭) 昨年の12月30日、ヤマダ電機による大塚家具への資本参加が実現し、大塚家具は子会社化されました。出資額43億円でヤマダ傘下に入った大塚家具ですが、現在はコラボレーションとして、両社の売り場を共有してそれぞれの商品を販売する動きを進めています。

 大塚家具の新宿、みなとみらい、名古屋栄ある店舗が顕著な例で、家電専用のフロアも設けられました。また、池袋にある店舗のように、ヤマダ電機のワンフロアに大塚家具の商品が並べられ、そのインテリアの一部として家電が販売されているパターンもあります。

 実際にヤマダ電機と大塚家具のコラボ店舗に行きますと、ヤマダ電機の店舗内コラボは、家具コーナーにある陳列のほとんどはヤマダ電機のプライベートブランドでした。大塚家具の製品は、それらPB商品の2~3割ほど高い価格設定で少しだけ置いてあります。

 ユーザー目線で店員の話を聞きながら比較してしまうと、自分だけのものをカスタマイズして作りこむようなことに価値を見出す人は、多様にカスタマイズできる大塚家具の製品を買いたいと思うのでしょう。ですが、ヤマダ電機の店舗に来る人のほとんどは、カスタマイズできなくても安価なヤマダのPB商品を選ぶと思います。

 一方で、大塚家具の旗艦店とも言える新宿ショールームを訪れると、まず1階はほとんどヤマダ電機をそのまま持ってきて、色合いだけもともとの大塚家具のトーンに合わせたようになっています。

 デザインのセンスは人それぞれですが、豪華な建物の色調に、家電量販店でよく見かける、売り場やフェアを案内するプレートが多数ぶら下がっていて、ミスマッチな感もあります。エレベーターもアジアの豪華なデパートのような雰囲気の中になかなか溶け込めないヤマダ感溢れるポスターが貼ってあったりもします。

 古い時代の大塚家具のユーザーは、店舗での扱われ方や雰囲気などを全部含めて価値を見出して対価を払っていたことでしょう。その顧客像とヤマダ色とのアンマッチは容易に想像できてしまいます。念のため記しておきますが、節約好きの著者はヤマダ電機のヘビーユーザーです。

うまくいくとは思えない

 また、大塚家具が改めて力を入れるEC販売においても、家電は扱われています。ですが、ざっと見た限り、わざわざ大塚家具で家電を買うメリットを感じにくいです。例えば有線キーボードのエレコム TK-FCM103BKは、大塚家具のサイトでは1,188円、Amazonでは同じ型番のものが1,080円、ヤマダウェブコムでは1,050円(ポイント10%発生)となっています。

 同様にサーキュレーターのヤマゼン YAR-BDA181DCは、大塚家具では12,800円、Amazonでは11,000円。ヤマダウェブコムでは12,980円(ポイントなし)となっています(価格は全て税込、7月5日現在のデータ)。

 同じく家具業界で優良企業のニトリでも家電を扱っていますが、一般家電品の市場価格と同等で売られているようです。他社で販売されているものと同じものや類似の商品も多いですが、品番を変えたり、微妙にデザインを変えたり、すぐネットで比較されないように工夫しています。

 そのため、ニトリを日常的に利用している人からすると、ニトリの家電は家具や寝具と同じように、安価で「お値段以上」のメリットがある商品であるとの信用があります。ですから、「テーブルやシーツと一緒に家電を買う」ことへの躊躇は少ないのでしょう。

 映画館や遊園地のドリンクが量販店で買うよりも割高であるように、一物多価(同一の商品がさまざまな値段で売られていること)は昔からあるものです。そこでドリンクを買うしかないから高い値段でも売れるというだけで、高い顧客満足度が得られるものではありません。

 ECなども含めて「最安値」を実現できないのであれば、その店舗で買った方がいいメリットや付加価値を何らかの形で作っていくしかありません。先に述べたように、かつての大塚家具は、顧客に「大塚家具で買う」というプレミアムを与えられていたのだと思います。

 ですが、ヤマダの商品と並列する売り場で、ヤマダ目当ての顧客にそれが可能でしょうか。店頭で客が商品を見たとき、スマホでアマゾン価格と比較されるような時点で、「大塚家具で家電を売る」コラボが今後上手くいくとは思えないのです。

「広告」に過ぎなかった

 果たして、大塚家具を傘下に入れたヤマダ電機の狙いに、大塚家具の復活という文字はあったのでしょうか? 
 ヤマダ電機と聞いても家具を連想する人はほぼおらず、大塚家具と聞いたら家具しか連想しません。近年、ヤマダは「くらしをシアワセにする、ぜんぶ」を掲げ、家電依存度を減らすことに邁進していました。

 そのため、抜群の知名度を誇る大塚家具を取り込むことで、数多の人に「ヤマダ電機って、本気で家具もやってるんだ?」という認識を埋め込んだことは、ヤマダにとって大きな成果だったと思います。

 しかし、ヤマダにとって、大塚家具の「役目」はそれだけだったのではないか、とも邪推してしまいます。ヤマダ電機の大塚家具への出資額は43億円ですが、ヤマダ電機の年間広告宣伝費は260億円です。子会社化の「騒動」も含め、何かとニュースになる大塚家具は費用対効果の高い「広告」にすぎなかった、と見ることもできます。

 大塚家具は現在四期連続の赤字で、7月末の有価証券報告書提出後、2年間のジャスダック上場廃止猶予期間に突入するとされています。上場廃止になれば、ヤマダ電機が大塚家具の経営を完全に支配できるようになるでしょう。

 2011年にヤマダ電機は住宅メーカーのエス・バイ・エルを買収、2018年に「ヤマダホームズ」に改称してグループの一部へと取り込んで行きました。同じように、大塚家具がやがて「ヤマダ家具」となっていく可能性は十分にあると見ています。

 看板が大塚からヤマダへかけ変わることは、社員にとって寂しさ等はあったとしても、むしろ雇用という点では安心なのかもしれません。実際、大塚家具の会計処理を見ると、次のフェーズへの「地場固め」が進められています。

久美子社長の「退職金」

 それはどういうことか。

 大塚家具は、今年の2月に棚卸評価損を約19億円発生させています。ヤマダ電機の会計方針に合わせることで処理方法が変わったことによるとはいえ、売上350億円弱、営業赤字76億円で経営危機が毎日のように騒がれる大塚家具にとってはずいぶんと厳しい処理です。

 棚卸評価損は、将来に損失を繰り延べしないための処理ですから、苦しい時期にあえて膿を出し切り、リスタートを図ろうとしているのかもしれません。

 そしてリスタートするからには、新規顧客を開拓しなければならない。今は、大塚家具で良質な家具を買うよりも、ニトリでコスパのいい家具を買うほうが「買い物上手」「普通」と捉える人が多い時代になってきています。これからの景気動向がどう変化するかますますわからないタイミングですから、「ヤマダ家具」も同様の路線を取ることになるのかもしれません。

 結局のところ、上場企業は結局のところあまりガバナンスは利きませんので、結果を出せなくとも経営者は居座れます。ただ、所有と経営が分離されている非上場企業のガバナンスは冷酷なものです。

 著者の親友は雇われ経営者としてのべ10期以上にわたって一度も業績を落としたことはなく、昨年より投資ファンドが買収した非上場企業の社長をしていました。ところがコロナショックがとどめを刺す形になり、業績を上げられなかった責任を取って1期で退任させられていました。役員退職慰労金も当然ゼロです。

 大塚家具の貸借対照表には、役員退職慰労金が5,000万円積みあがっています。これが、大塚久美子社長の「退職金」の原資になります。就任以来一度も業績を上げることなく、底の抜けたバケツのように会社のキャッシュを減らし続け、ついには屋号すらも失う一歩手前です。そんな経営者が退職金を受け取れるのであれば、恵まれすぎた最後と言ってもいいでしょう。

 今後、沈みかけた巨船となった大塚家具をヤマダ電機がどう舵取っていくのか、引き続き注視していきたいと思います。

マネー現代

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最終更新:7/29(水) 16:31

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