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コロナ危機で日本人が直面した「家が狭い」という切実すぎる問題

7/14 8:01 配信

マネー現代

(文 山下 和之) 2020年7月、新型コロナウイルス感染症の感染確認者数は高水準にあり、ポストコロナはみえず、当分はウィズコロナの「新たな生活様式」を模索する日々が続きそうだ。

 テレワーク、在宅勤務が長期化したり、常態化したりするのは避けられないが、現在、日本の住まいの多くは在宅勤務にふさわしい広さ、つくりになっていないことが、大きな問題になっている。

DVや児童虐待、コロナ離婚の原因?

 そもそも、日本の住まいの多くは、平日の昼間に在宅するのは妻や子どもだけ、または夫婦共働きで誰もいないことを前提につくられている。

 そこに、在宅勤務が長期化して、普段はいないはずの夫が24時間在宅したり、共働き夫婦がともに在宅勤務となると、家庭内の関係に軋轢が生じたり、ギクシャクするケースが増えるのも当然のことかもしれない。

 それが家庭内暴力や児童虐待につながったり、果てはコロナ離婚といった事態も少なくないようだ。

 そのため、在宅勤務の増加をきっかけに、ワークスペースを確保できる、ひと回り大きめの住まいへの引っ越しを考える人が増加しているともいわれる。そんな新たな時代の住まい選びを考える上で参考になるのが、昔ながらの日本の広い住まいだ。

日本海側の家は広い!

 総務省統計局の『平成30年住宅・土地統計調査』によると、1戸当たりの延べ床面積が最も広いのは、富山県の143.57平方メートルで、2位は福井県、3位が山形県となっている。反対に最も住まいが狭いのは東京都の65.18平方メートルで、沖縄県を除いて大都市圏の府県が下位に並んでいる。図表1にある通りだ。

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図表1 都道府県別の住宅の延べ床面積の広さ(単位:平方メートル)
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 一見してわかるように、延べ床面積の上位には日本海側の豪雪地帯の県が並んでいる。

 最近は減っているとはいえ、かつては半年近くの間、深い雪に閉ざされたエリアであり、冬場に住まいのなかで作業をするための場所が必要で、広い住まいが不可欠だったという事情がある。

 また、地域の絆も強く、ことあるごとに親戚・縁者が集まって集会や宴席などが設けられるため、広い住まいが必要だったともいわれる。

 現在も農村部などには、大きな空間を田の字型に襖などで区切り、それを取り払えば20畳、30畳大の広間になる住まいが多い。

広い家のエリアでは共働き率も高い

 それは主にかつての農村部での事情という印象があるが、現在でも東京圏、大阪圏などの大都市部に比べると住宅面積は広い。

 住宅金融支援機構の『2018年度フラット35利用者調査』によると、富山県の延べ床面積の平均は126.9平方メートルで、やはり全国で最も広くなっている。

 もちろん、大都市部に比べて地価が安いため、広い家をつくりやすい、買いやすいといった面もあるが、それだけはない。実は、これらのエリアでは共働き率が大都市部に比べて格段に高いといった背景がある。

 図表2にあるように、共働き率のトップは福井県の60.0%だが、それに山形県、富山県が続いている。この上位3県は、順番は異なるものの、図表1の住宅の延べ床面積上位3県と同じ顔ぶれだ。これは、決して偶然ではないだろう。

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図表2 都道府県別の共働き率(単位:%)
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 共働きしているからこそ、ダブルインカムで広い家が手に入るのはもちろんだが、広い家であれば、二世帯同居が可能で、親に孫の面倒をみてもらえるといった事情もあるだろう。

広い家ならワークスペースの確保も簡単

 共働きで広い家を手に入れているので、在宅勤務になったとしても、無理なくワークスペースを確保できる。もともと、夫婦それぞれに書斎や趣味のスペースを確保している住宅が多く、それを在宅勤務のベースにすれば、スムーズに対応できるはずだ。

 そうしたスペースがなかったとしても、広さに余裕があれば、リフォームによって仕事場所を設置することは難しくない。たとえば、広い収納スペースの一部をリフォームでワークスペースにするケースなどが少なくない。間取り図ふうにいえば、「ウォークインクローゼット」を「ワークインクローゼット」に変更するわけだ。どちらも略すればWICになる。

 リビングにワークスペースを設置するケースも少なくないが、リビングにある程度の広さがないと却って狭苦しくなって、仕事に集中できず、ストレスをためてしまうことになりかねない。やはり、在宅勤務時代においては、一定の広さが必要ということだろう。

いまの住まいで在宅勤務しやすくするには

 そのため、ひと回り広い家、マンションから一戸建てへの引っ越し、買い換えなどを考える人が増えているといわれるが、それには一定のお金が必要で、いますぐにというわけにはいかないという人が多いだろう。それまでのつなぎとして、いまの家を在宅ワークしやすい家にする方法はないのだろうか。

 そんな人たちに向けて、積水ハウス住生活総合研究所では、次の5点を提唱している。これらの考え方は、在宅ワークを前提とした住まい選びの参考にもなるはずだ。

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1. 女性の家事負担を減らすキーワード「共存と両立」
2. 自宅を手軽にオフィス化する空間アイデア
3. 外出が自由にできないストレスを軽減する「グリーン」
4. 「自分スペース」をつくる、世界で一番シンプルな方法
5. 子どものおうち学習対策に、「複数遊び場」のある家
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家事はリフレッシュの機会に

 提唱に当たって、積水ハウス住生活研究所では、テレワークの増加による影響を調査した。その結果、男性に比べて女性のほうが在宅時間の長期化によるストレスが増えたとする割合が高いことが分かった。

 図表3にあるように、男性では、「非常にストレスが増えた」「どちらかといえばストレスが増えた」と回答した人の合計は51.3%だったのに対して、女性では70.0%に達している。

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図表3 在宅時間増加によるストレスの増加
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 さらに、在宅勤務で「家事負担が増えた」とする割合は男性が13.8%で、女性は39.1%と、女性への負担が重くなっているのは明らか。これが、家庭内の軋轢の原因になっている可能性が高い。

 その対策としては、何より男性も相応に家事を分担することが重要になる。

 同時に、「家事は義務」と感じると、この負担増加がストレスに直結するので、「家事は仕事や勉強に疲れたときの気分転換、リフレッシュ」などと捉え方を変えてみてはどうか。

 そうすれば家事も楽しく取り組めるし、あらかじめ一日のスケジュールに組み込んでおけば、メリハリがつくのではないかとしている。

 家族が別々のことを行いながらも「共存」、仕事と家事をうまく切り分けて「両立」を図ることが大切というわけだ。

「L・DK」から「D・LK」への発想転換

 第二に、現在の住まいを快適なオフィスにするための空間アイデアとして、「L・DK」から「D・LK」への発想の転換を提唱している。

 ほとんどの家庭では、リビングの隣がダイニングで、その先にキッチンがある。文字通りLDKの並びだ。積水ハウス住生活研究所では、このダイニングテーブルを思い切ってキッチンの反対側などに移動させて、ワークスペースとしてはどうかと提案している。

 ダイニングを独立させ、リビングキッチンから切り離して、仕事しやすい空間とする。LDKではなく、DLKの並びにしてはどうかというわけだ。

 次に、なかなか外出できないストレスを軽減するためには、住まいのなかに「グリーン」を配置するのが効果的だ。

 少しでも屋外気分を味わえるように、樹木や岩石の上でも育ち、手がかからない「エアプランツ」などの観葉植物であれば、初心者でも無理なく入ることができる。また廊下やベランダなどに人工芝を敷くのも気分転換になるとしている。

いまのうちに工夫や経験をすること

 第四のポイントとして住まいのなかに、「自分のスペース」を作り出すのもおすすめだ。

 特に、男性の場合には、住まいのなかに自分の場所といえるスペースがないケースが多いだろうから、廊下やホールなどにお気に入りの椅子やベンチを置いてみてはどうか。そこを、読書や趣味の場とすることで、思いがけず心地よい居場所になるものだ。

 最後に、子どもたちに「複数の遊び場」をつくってあげるのもいいのではないかとしている。

 簡単に外遊びできない環境では、住まいのなかで勉強、遊びが同じ場所になって、変化が乏しく、ついついストレスがたまってしまうもの。そうならないために、勉強や遊びの場を固定せず、複数の場所で過ごせるようにしてあげると、気分転換になる。たとえば、勉強にしても、座ってするだけではなく、たまには立って勉強する場所を用意してあげれば、リフレッシュできるものだ。

 これは、大人にもあてはまる。在宅ワークも座ってするだけではなく、たまには、立ってできるような場所を設置しておけば、在宅勤務で起こりがちな「集中しすぎて疲れる」といった事態を回避できるとしている。

 まずは、いまの住まいを在宅勤務しやいように工夫、在宅ワークしやすい環境づくりを経験しておけば、次のステップとして、より在宅ワークしやすい住まいを探すときに、その経験が必ず役立つはずだ。

マネー現代

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最終更新:7/14(火) 8:01

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