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コロナ後に「活躍できる人」「できない人」の差

7/13 8:01 配信

東洋経済オンライン

新型コロナウイルスによる自粛要請期間は、日本の多くの人にとって、これまで経験したことのなかった事態となりました。しかし、その正解が見えない時期に、活躍したリーダーもいます。そのひとりが、マッキンゼーや楽天など10数社で働き、IT批評家としても活躍する尾原和啓氏です。「変化の時代に活躍できる人の条件」について、尾原氏の著書『あえて数字からおりる働き方』より抜粋してご紹介します。

■変化の時代に活躍できる人の条件とは? 

 どんな時代が来ても揺らがない人とは、世の中の需要をしっかり確認し、誰がどの需要を埋めているか、どの役割がまだ埋まっていないのかを見渡したうえで、自分の役割をきちんと全うできる人のことだと僕は思います。 

 インターネットは、これらの需要を可視化してくれます。まだ供給できていない場所や、自分にしかできない役割なども、ニュースやSNSのタイムラインなどを駆使することで、より見えやすくなるのです。

 例えばワクチン開発について、僕に何ができるかを考えながら、世界中のニュースを調べるとします。そこで、ビル・ゲイツがワクチン開発について動き出したことを知ったとき、僕は彼がやってくれるなら、これ以上自分がワクチン開発について何か考える役割はないと考えました。あとは僕なりにやるべきことをやるために、まずは「ワクチン開発」という役割をあえて閉じることで、次の役割を効率的に探します。

 役割を効率的に見つけるには、すでに需要を埋めてくれている誰かに役割を任せ、選択肢をあえて絞る作業も必要です。そのうえで、自分にできることで、需要を埋めていけるといいでしょう。

 仮に、外出自粛の要請が出ているとき、あなたが社内で何かのチーム長だったとしたら、社会への貢献の仕方や自分の役割をどう考えるでしょうか?  例えばミュージシャンのようにユーチューブで演奏して感染防止を呼びかけることはできなくても、「自宅で豊かな時間を過ごすための施策は誰かがやってくれているのだから、自分は社内のことに特化しよう」と考えて、普段やりとりの少ない部署とも話をして、今できることを考え、新たな施策を会社に提案していくこともできるし、今後のための勉強をしておく、という選択肢もあるでしょう。

 つまり、組織のなかにいてもいなくても、普段の生活範囲だけではなく、より広い視点から自分ができることを整理できるようになると、かえって自分の役割に集中しやすくなると思います。

■フューチャリストよりも「ナウイスト」

 自分なりの貢献を、自分なりの規模でしていくにはどうすればいいでしょうか。そのいいお手本になるのが、Yahoo! アカデミア学長の伊藤羊一さんです。

 伊藤さんは、コロナ感染防止のための学校閉鎖を受けて、立教大学の中原淳教授らとともにたった5日間で人を集め「ニッポンのオンライン授業カンファレンス2020」と題し、オンライン教育や授業のノウハウを、全国の学校や企業の教育関係者へ無料で開放しています。

 彼のように、社会の需要に対して瞬時にイノベーションを起こせる人を「ナウイスト」と言います。これはMITメディアラボの元所長である伊藤穣一さんが、TEDで「これからイノベーションを起こすのなら、未来をあれこれ思い描くフューチャリストではなく、“今ここ”で創造するナウイストになろう」と話したのを機に広まった言葉です。

 僕は伊藤羊一さんのように、学校が閉鎖して教育が止まってしまう“今ここ”の瞬間に、いち早く教育現場の人たちにオンラインカンファレンスを開いた行動こそ、ナウイストらしい行動だと考えています。

 伊藤羊一さんのもとに瞬時に人が集まるのは、ご自身が「これで偉くなろう」とか「尊敬されよう」などとは1ミリも思っていないからだと思います。彼は平時から、教育や学習についてつねに考え続けている人です。さらに、教育分野に対し深い愛情を持っていることを、誰もが知っているから、いざというときに人を集め、物事を動かしていくことができるのです。つまり、動機の中心に「自分がやりたいこと・役立てることの軸」と、「他者への愛や貢献の気持ち」が明確にあるから、波紋が広がり、彼に共鳴する人が集まってくるのでしょう。

 もちろん、規模の大小は問題ではありません。「軸」と「愛」が中心にあれば、自分が住んでいる地域、オンラインサロンやSNSのつながりなど、自分にできる範囲のなかで行動できればいいと思います。

 これからは課題やルールを新しく定義したり、新しい課題解決の仕方を定義したりする人が生き残りやすい時代になるといえます。伊藤穰一さんは著書『9プリンシプルズ』や自身のインタビューで、たびたび、変化の時代で向かうべき9つの原則を紹介しています(ここでは2012年のインタビューで語られていた原則に基づいて解説しています)。

1. 強さではなくしなやかさを持つこと。つまり、失敗に抵抗しようとするのではなく、失敗を認め、受け入れたうえで、そこから跳ね上がっていくこと。
2. 「押す」のではなく「引く」こと。資源を中央に集めてコントロールするのではなく、必要に応じてネットワークから引き出すこと。
3. 安全に焦点を当てるのではなく、リスクをとること。
4. モノではなく、システムに焦点を合わせること。
5. 地図ではなく、よいコンパスを持つこと。

6. 理論ではなく、実践に基づくこと。なぜそれが機能するのかわからないときもあるが、大事なのは、理論を知っていることではなく、それが機能するということだ。
7. 服従ではなく、反抗すること。人に言われたことをしても、ノーベル賞は取れない。多くの学校は服従について教えるが、われわれは反抗を賞賛するべきだ。
8. 専門家ではなく、クラウド(人々)に向かうこと。
9. 教育ではなく、学習に焦点を当てること。

 ここでは、僕がこれからの時代においてとくに大事だと思う5と9について、僕なりの解釈をお話しさせてください。

■「変化の時代のコンパス」とは? 

 そもそも地図とは、決まった目的地に迷いなく効率的にたどり着くためのツールです。しかし変化の時代では、どの道を通れば確実にゴールにたどり着けるかもわからなければ、そもそも目的地すら変化する可能性があるので、決まった道のりすらなくなってしまうのです。

 なので、ここでいう「コンパス」も、単にゴールにたどり着くための道具ではなく、“今の世の中ではどちらに向かうとより自分らしい道を歩けるのか“という大きな方向性を知るためのコンパスだと思うのです。

 例えば漫画『ONE PIECE』でイメージしてもらうとわかりやすいでしょう。ルフィたちが航海する「グランドライン」という航路は、通常の海とは違って、海流、気候の乱れの影響から、通常のコンパスが使えません。そこで、ログポース(記録指針)で島の磁気を記録することで、次の島へ進める、という設定になっています。

 さらに、より冒険の難易度が上がる航路「新世界」では、海流や気候のみならず磁気さえも変動する島が存在するため、ログポースも1つでは足りず、3つを用いて3本の航路を導き出し、どの航路で進むかを自身で決める設定が追加されています。

 5で示されている“コンパス”とは、このログポースに近いものだと思います。われわれの現実世界も『ONE PIECE』でいう「グランドライン」や「新世界」のようなもので、もともと決まった地図も航路もなければ、進んだ先ではこれまでのログポースすら使えなくなるかもしれません。さらに、進むべき道が突然増えたり減ったり、方向が変わってしまったりと、まったく予測不可能な世界です。

 つまり、これからは変化が起きるたびに新しい航路を自分で導き出さなくてはならないのです。

 例えばコロナショックに関しても、その都度、課題が変化していきました。ウイルスが発生した初期のころは、マスクは感染者がウイルスを他者にうつさないために使われるものだったので、あくまで感染者のみがマスクをすることが推奨されていました。しかし、感染が拡大して無自覚の感染者が多くなり、知らないうちに感染したりさせたりするリスクが増えると、今度は「全員がマスクをして、感染拡大を封じ込めよう」という新たな課題が設定されます。

 やがて治療薬が完成したら、今度は医療崩壊させないためにも各自で免疫力を上げていくための課題が生まれるかもしれません。このように、これからは向かうべき方向性を示すコンパスがつねに変わるつもりでいたほうがいいのだと思います。

■状況を認識し、最も適切なコンパスのもとで議論する

 そこで僕たちにとって大事なのは、今置かれている状況や段階をしっかりと認識したうえで、お互いのコンパスを持ち寄り、“誰のコンパスが僕たちにとって1番大事なコンパスか”をしっかり確認し合い、最も適切なコンパスを持つ人のもとで意見を募って議論していくことだと思います。

 議論をするときも、ひたすら「俺のコンパスはこっち!」と主張するだけではなく「なぜこの方向だと思うか」という前提条件をきちんと添えて発信しましょう。

 また、コンパスを持つ者同士が意見交換し合い、もし自分のコンパスより相手のコンパスのほうが正しいと思えたときや深く共感できたときは、素直に認める柔軟性が必要です。そのうえで、リーダーをサポートする役割に回ればいいと思います。

 例えばアップル創業当時の社員だったスティーブ・ウォズニアックは、「スティーブ・ジョブズは水平線の先に何があるかは見えているが、そこまで向かうための最初の1歩がわからなかった」という主旨のことを語っています。

 つまり、たとえすばらしいコンパスを持っているジョブズでも、たった1人で目的地へ向かうことはできなかったのです。ウォズニアックはそんなジョブズの最初の1歩を具体的に提案できる人材であり、彼らのような組み合わせや、彼らを支えるチームの存在があったからこそ、ジョブズはパーソナルコンピュータにおける革命を起こせた、とも言えるのです。

 大事なことを以下に3つまとめます。

1. コンパスが示す方向さえ変化し、進む段階によってさらに変化することを認識すること

2. コンパスを持つ者同士で柔軟に議論し合い、それぞれのコンパスの精度を高め合っていくこと
3. コンパスを持つリーダーが決まったら、チームで補い合って進み、試行錯誤していくこと
 1度コンパスを決めたらそのまま固定するのではなく、1~3をつねに繰り返しながら、その都度適切なコンパスを選び直し、段階に合わせて方向性を微調整し、また議論を重ね、全員で形にしていくことを忘れずに行っていきましょう。

東洋経済オンライン

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最終更新:7/13(月) 8:01

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