IDでもっと便利に新規取得

ログイン

【特集】アメリカでブームを巻き起こすDeFi(分散型金融)──高利回りをしかけるイールドファーミング

7/12 8:00 配信

CoinDesk Japan

DeFi(分散型金融)は今、かつてのICOブームのような状況にある。このDeFiブームを牽引しているのが「イールドファーミング」。日本ではまだ聞き慣れないこの仕組みを解説する。前編では前提となる基礎知識を整理しよう。

DeFi Pulseによると、現在DeFiにロックされている(預け入れられている)暗号資産(仮想通貨)は19億ドル(約2000億円)にのぼる。CoinDesk ICO Trackerによると、ICO市場が10億ドルを超えたのは2017年7月、数カ月後にはトークンセールスがテレビで話題になった。

数字を並べて議論することもできるが、明確なことが1つある。暗号資産ユーザーはDeFiアプリケーションにますます多くの資産を投入しており、これは主に新たに登場した「コンパウンド(Compound)」のガバナンストークン「COMP」が引き起こしたということだ。

ガバナンストークン:分散型プロトコルの運営について、ユーザーをはじめとする関係者が投票するためのトークン。現在、DeFiサービスにお金を集めるための新しい手法となっている。

そしてこの新しい舞台の主役には、新しい名前がある。「イールドファーマー(yield farmer)」だ。

きっかけ

イーサリアムベースの融資サービス「コンパウンド」は6月15日に、ガバナンストークン「COMP」のユーザーへの配布を開始。COMPの需要は急速に高まり、コンパウンドはDeFiのリーダー的ポジションに躍り出た。

暗号資産業界で今注目の用語は「イールドファーミング」だ。これは、DeFiスタートアップのアプリケーションに一時的に暗号資産を預け入れることで、より多くの暗号資産を稼ぐ巧妙な戦略を表したものだ。

別の言い方として「流動性マイニング」も使われる。

これらの用語は、多くの人たちが興味を持つにつれて徐々に広がってきた。だが日頃、暗号資産にあまり関心がない人は、なにやらわけのわからないことが起きているように感じているかもしれない。

こうした用語──トークン、DeFi、イールドファーミング──は難しいギリシャ語ではない。1つずつ見ていこう。

トークンとは?

トークンは、ビデオゲームでプレーヤーがモンスターとの戦闘中に稼ぐポイントやコインのようなものだ。ポイントやコインは武器や装備と交換できる。

だがブロックチェーンを使うと、トークンは単一のオンラインゲームに限定されず、他のゲームでも使えるようになる。トークンは通常、何かの所有権、あるいはサービスの利用権を表わす。

イーサリアムブロックチェーンでは、トークンを使ったさまざまなユースケースが開発されている。ちなみに、イーサリアムにおけるトークンとは「ERC-20トークン」のこと。

ERC-20トークンはある種のソフトウエア規格で、トークン作成者は利用に関するルールを作成できる。トークンは複数の方法で使用できるが、多くの場合、アプリケーション内でお金として利用される。

ガバナンストークンは違う。ビデオゲームのポイントやコインのようなものではない。所有者にプロトコル変更について投票する権利を与える。

例えば、DeFiのパイオニア的存在であり、レンディング(融資)サービスを展開するメイカーダオ(MakerDAO)では、ガバナンストークン「MKR」の保有者はほぼ毎週、融資にかかる費用や貸し手の収入などを管理する指標の変更について投票している。

だが、あらゆるトークンに共通していることは、取引が可能で、価格が設定されていること。そのため、トークンにお金としての価値がある場合、トークンを銀行に預けるか、少なくとも銀行に非常によく似たサービスを利用することができる。すなわち、DeFi(分散型金融)だ。

DeFiとは?

当初は「オープン・ファイナンス」と呼ばれていたが、今では「DeFi(分散型金融)」が定着している。

DeFiは従来の「お金」を使って行うすべてが可能で、違いは暗号資産ウォレットがあることくらいだ。

イーサリアムのウォレットに20ドル相当の暗号資産を持っているなら、ユニスワップ(Uniswap)でFUN(ギャンブルアプリ用トークン)やWBTC(Wrapped Bitcoin=ビットコインに連動したERC-20トークン)を購入してみよう。

メーカーダオでイーサリアムを使って5ドル分のステーブルコイン「DAI」を作ってみよう。コンパウンドで、10ドルをドルに連動したステーブルコイン「USDC」で借りてみよう。

私が提案していることは、金額が非常に小さいことに留意してほしい。DeFiは非常に複雑で間違いやすい。これらは「貯蓄」のためのサービスかもしれないが、彼らはあなたの老後の貯蓄を考えてはいない

DeFiは未成熟で実験的なものかもしれないが、テクノロジーは驚異的だ。通常のウェブサイトでは、サイトオーナーに十分な個人情報を渡さなければミキサーを買うこともできない。DeFiでは、名前を明かさずにお金を借りることができる。

DeFiアプリはユーザーの借金の担保を持っているので、信用状況を気にしない(例えば、コンパウンドでは10ドルの借金には、20ドル程度の担保が必要になる)。

では、すでにお金を持っている人が借金をする意味は何だろうか?

ほとんどの人にとっては、ある種の取引のためだ。最もわかりやすい例は、トークンをショートするケースだ。

ショート:価格が下落した場合に利益を得る取引手法。例えば、トークンを担保にお金を借りて、その後、トークンが値下がりすると、担保のトークンを取り戻すために必要なお金は少なくて済む。つまり差額分が利益となる。

また、トークンを保有したまま、市場で取引がしたいという人にも適している。

DeFiサービスには多額のお金が必要?

その通りだ。

そしてDeFiでは、お金は主にインターネット上の不特定多数から提供されている。そのためDeFiスタートアップ企業は、暗号資産を動かさずに長期保有している「HODLer(ホドラー)」を引き付ける賢い方法を考え出した。

流動性、つまり資金が十分にある状態を作り出すことは、すべてのDeFiスタートアップの最大の関心事だ。自社サービスにどれだけのお金をロックできるかが重要になる。

「ある種のサービスでは、流動性があればサービスの質や使い勝手がはるかに向上する。彼らはVCや投資家からお金を借りるのではなく、ユーザーから借りている」とElectric Capitalのマネージングパートナー、アビチャル・ガーグ(Avichal Garg)氏は述べる。

例として、ユニスワップ(Uniswap)を見てみよう。ユニスワップは「自動化マーケットメーカー(automated market maker)」、AMM。つまり、ユニスワップはインターネット上のロボットで、市場にある暗号資産の売買を常に試みる。

ユニスワップには、イーサリアムブロックチェーン上のほとんどすべてのトークンについて少なくとも1つの取引ペアがある。

つまりユニスワップはどんなトークンでも直接取引しているように見せることができるが、トークンがプールされていることが大前提。そして、取引ペアは大きなプールの方がよりうまく機能する。

プールの仕組み

より多くのお金(=より大きなプール)の方がうまく機能する理由を説明するために、ユニスワップの仕組みを見てみよう。

USDCとDAIの市場があるとする。この2つのトークンは(どちらもステーブルコインだが、価値を維持するメカニズムが異なり)、常にそれぞれ1ドルの価値を維持するよう設計されている。

ユニスワップが表示する取引ペアのトークン価格は、プール内の各トークン残高に基づいている。わかりやすく説明すると、USDCとDAIのプールを設定する場合は、同額のUSDCとDAIを預ける必要がある。

2USDCと2DAIのプールでは、価格は1DAIに対して1USDCとなる。だが、誰かがプールに1DAIを入れ、1USDCを取り出したとしよう。

つまり、プールは1USDC/3DAIとなり、きわめて異常な状態になる。経験豊かな投資家は、1USDCをプールに入れる。すると2USDC/3DAI。つまり、1USDCで1.5DAIを獲得でき、簡単に0.50ドルの利益を得ることができる。

これがいわゆる裁定取引(アービトラージ)で、この場合は50%の裁定利益となる。この状況は、流動性が限られている場合に起こる。

(ちなみに、これがユニスワップの価格が比較的正確な理由だ。トレーダーはより広範な市場との間の小さなズレを見つけ、裁定利益を得るために素早く取引を行う。結果的にズレは解消され、価格は正確なものになる)

流動性の意味

だが、プールに50万USDCと50万DAIがあった場合、通常規模の取引はそれぞれの価格にほとんど影響を与えない。流動性が大切な理由だ。

同様の効果はDeFi全体にも言える。だから市場はより多くの流動性を求めている。ユニスワップは取引ごとにわずかな手数料を取り、プールに残すことでこの問題を解決している。

つまり、1DAIは実際には0.997USDCで取引され、取引後はプール全体で0.003USDCの増加となる。これは流動性の提供者に利益をもたらす。なぜなら流動性の増加分は提供者たちでシェアするためだ。

プールで多くの取引が行われている場合、多くの手数料を獲得し、提供者たちのシェアの価値は大きくなっていく。

トークンに話を戻そう。

ユニスワップに追加された流動性は、口座ではなくトークンで表される。つまり「ボブがDAI/USDCプールの0.000000678%を所有している」ことを示す台帳は存在しない。ボブはウォレットの中にトークンを保有しているだけ。

しかもボブはトークンを保有し続ける必要はない。売ることも、他のトークンを買うこともでき、自由度が高い。これがDeFiが「お金のレゴ」と呼ばれる理由だ。

どれくらい稼げるのか?

伝統的な銀行にお金を預けるよりもはるかに稼ぐことができる。ただし、DeFiスタートアップがガバナンストークンの配布を始める前の話だ。

現在、最も人気を集めているコンパウンドを例に説明しよう。

記事執筆時点では、USDCをコンパウンドに預けると2.72%の金利を得ることができる。テザー(USDT)では2.11%。現在、ほとんどのアメリカの銀行口座の金利は0.1%にもならない。

しかし、いくつか注意点がある。

まず、金利がきわめて高いことには理由がある。つまり、DeFiは銀行に比べるとリスクがはるかに高い。お金を保護する連邦預金保険公社(FDIC)は存在しない。取り付け騒ぎが起これば、ユーザーはお金を引き出せなくなる可能性がある。

さらに、金利はかなり大きく変動する。1年でどれくらいになるかわからない。USDCの金利は今は高い。だが先週は低かった。通常は1%台で推移している。

つまり、コンパウンドに資産を預け入れると金利を稼ぐことができる。だが、それだけではあまりクリエイティブとは言えない。利回りを最大化する切り口を探しているユーザー、それが「イールドファーマー」だ。

後編では、イールドファーミングの仕組みを詳しく見ていこう。

翻訳:CoinDesk Japan編集部 | 編集:増田隆幸、佐藤茂 | 画像:Shutterstock | 原文:What Is Yield Farming? The Rocket Fuel of DeFi, Explained

CoinDesk Japan

関連ニュース

最終更新:7/14(火) 15:30

CoinDesk Japan

投資信託ランキング