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女子ゴルフ「4カ月遅れの開幕戦」が示したツアーの未来像

7/11 7:50 配信

東洋経済オンライン

 新型コロナウイルスはゴルフ業界にも暗い影を落としている。ファンが楽しみにしている国内ゴルフトーナメントも、相次いで中止が発表されている。女子ツアーは3月に予定されていた開幕戦「ダイキンオーキッドレディス」以降、16試合の中止が決まっている。

 そうした中、6月最終週に「アース・モンダミンカップ」が開催された。実に約4カ月遅れの今シーズン開幕戦である。過去に例のない日程となったこの開幕戦は、ほかに2つの点で「コロナ下でのゴルフトーナメントのニューノーマル」を示す大会となった。

■感染防止を徹底した大会運営

 アース・モンダミンカップは、新型コロナの感染予防対策が徹底された、初めての大会だった。

 昨年の渋野日向子の全英女子オープン優勝をきっかけとする「しぶこフィーバー」によって、全英女子以降の大会は多数のギャラリーがトーナメント会場に押し寄せていた。しかし、今大会は3密を避けるため、無観客で開催された。

 大会が開催された千葉県袖ケ浦市のカメリアヒルズカントリークラブには、出場選手とキャディーは入場できるが、コーチ、トレーナー、マネジャー、家族、メーカー関係者は入場不可。トーナメントを取材するメディアも、代表取材で現場に入った数人を除き、すべてリモートで取材・会見に臨んだ。ここまで入場を制限したことは過去に例がない。

 加えて、出場するプロ144人はもちろんのこと、大会に関わるスタッフなど総勢821人全員にPCR検査を実施した。選手が安心感を持って安全にプレーできる環境を整備するとともに、大会関係者も安心して業務に従事し、クラスター発生のリスクを軽減させるためだ。

 選手は大会練習日の6月23日に全員PCR検査を受診した。4人の再検査が出たが、最終的には全員が陰性。6月25日の大会本番には無事、選手全員がスタートできた。

 もう1つ、今大会で特徴的だったことは、トーナメント中継だ。地上波を使ったテレビ中継でなく、YouTubeを使って大会4日間が無料で生中継されたのである。

 インターネット中継はトーナメント全体中継、注目ホール中継、9番パー3中継、選手インタビューの合計4チャンネルが用意された。生中継にはCMが入らず、刻々と変わる試合状況を中断なく見ることができた。

 優勝争いは最終日、鈴木愛と渡邉彩香のプレーオフに突入した。この白熱の戦いを余すところなく、リアルタイムで勝負の決着を目の当たりにできた。4日間・約40時間に及ぶ生中継は、多くのゴルフファンを楽しませた。

 このインターネット中継は6万2800人がチャンネル登録。最終日の7時間以上にわたる生中継の視聴回数は130万を超えた。大会4日間を通じた視聴回数はトータル677万3987だった。この驚異的な数字は、今回の試みが多くのゴルフファンの気持ちをつかんだ証左だろう。

■主催者が担った大きな役割

 この2つの意味における「ニューノーマル」の構築に大きな役割を担ったのが、大会の主催者であるアース製薬の大塚達也会長だ。

 今回のインターネット中継は全ホールをカバーするために41台のカメラが使われた。また、ゴルフボールの弾道やボール初速・飛距離を表示するシステムも導入。少しでもファンに楽しんでもらえる工夫がなされていた。

 中継に関わるスタッフも、現地スタッフ80人、リモートスタッフ70人の合計150人態勢で実施したという。中継にかかった費用については明かされていないが、通常のテレビ中継に関わる人員は250人前後で費用も1億円以上といわれている。それより少ないにしても、インターネット中継経費はかなりの額に上るとみられる。

 また、大会賞金総額2億4000万円、優勝賞金4320万円は、女子の大会ではトップクラスである。加えて今回は、感染防止の観点からPCR検査も実施している。これらの費用は大会主催者であるアース製薬が負担している。

 費用を負担する主催者がトーナメントを実施する目的は、大きく2つある。

 1つは、主催者の取引先や得意客を招待して、大会の前に行われるプロアマ大会や前夜祭を楽しんでもらうことだ。ここでプロと親しく交流してもらい、ビジネスチャンスにつなげるわけである。

 もう1つは、テレビ中継でCMを流して自社の製品やブランド力のアピールするほか、大会が多くのメディアに取り上げられることによって社名やブランド名を拡散し、ブランド価値を高めることだ。

 これらの点から、今回のアース・モンダミンカップを振り返ってみると、コロナ禍でプロアマ大会や前夜祭は行われず、中継ではCMも流されなかった。しかし、緊急事態宣言終了後の初のゴルフトーナメントで多くのメディアに取り上げられ、ブランド価値の向上につながったことは間違いない。

 5年ぶりに復活優勝した渡邉彩香に優勝杯を渡したあとのリモート会見で、大塚会長はこう語った。

 「最初から最後まで各ホールで多くの選手を生中継できたことは、ゴルフの新しい見方を提案できたのではないか。インタビューチャンネルで全選手のインタビューを中継して、大会価値と選手の魅力を違う形でファンの方々にお伝えできたと思う」

 さらに、今年の中継にCMを入れなかったことについて、「存分にトーナメントを楽しんでもらうことが主目的で、ビジネスに利用することはマイナーな目的。CMを入れないことで視聴者が楽しめるのであれば、そのほうがいい。来年も引き続きCMなしでやっていきたい」と明言した。

■ツアー2戦目はどうなる? 

 渋野日向子をはじめとした黄金世代の活躍や、それに続く安田祐香などのミレニアム世代が注目される中、アメリカで活躍する畑岡奈紗や昨年の賞金女王・鈴木愛も加わり、女子トーナメントは大きな盛り上がりをみせている。

 4カ月遅れの開幕戦は、新しいゴルフトーナメントの1つのあり方を示した。ただ、ウィズコロナの状況下、トーナメントを主催する企業がどのような考え方を持っているかによって、対応は大きく変わる。その意味において、ツアー2戦目がどのような形で運営されるかが注目される。

東洋経済オンライン

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最終更新:7/11(土) 7:50

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