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菅義偉「安倍首相との間にすきま風は全くない」

7/11 8:10 配信

東洋経済オンライン

桜を見る会、検察庁法改正案、河井克行元法務相の逮捕など、安倍政権の支持率低下につながった問題を菅義偉官房長官はどう振り返るのか。世間では安倍晋三首相と菅義偉官房長官の間で足並みが乱れ、両者の間にすきま風が吹き、対立しているという指摘もある。『菅義偉「コロナ対応、あらゆる支援を用意した」』(2020年7月10日配信)に続く独占インタビューの第2回をお届けする。

■桜の会は「もう少し気をつけるべきだった」

 塩田潮(以下、塩田):6月17日に幕を閉じた通常国会では、安倍晋三内閣の「桜を見る会」の問題が続けて取り上げられ、追及が続いていたとき、一方でコロナ危機が発生しました。

 菅義偉(以下、菅):「桜を見る会」の問題は国会であれだけ追及され、安倍総理があれだけ答弁しました。まったく総理に問題なかったと思っています。「桜を見る会」を所管する内閣府の大臣官房総務課を担当する大臣は私なので、当然、私も説明しました。

 だけど、記者会見などで、公文書管理の問題で細かい条文のことが出てきて苦労しました。何年も前の話で、正直言って、私自身がまったく関与していなかったことばかりでした。政権が長くなり、「桜を見る会」の参加者も、回を重ねるごとに増えていった。もう少し気をつけるべきだったと思っています。会場も広いから、ある程度は増えてもいいだろうという気持ちがあったことは事実です。

 塩田:国会に提出された検察官定年延長の検察庁法改正案が5月18日、世論の反発などで成立断念に追い込まれ、おまけに「時の人」となっていた東京高等検察庁の黒川弘務検事長が22日に賭けマージャン報道で辞職となりました。もともと1月31日に行われた黒川検事長の定年延長の閣議決定が首相官邸の強い意向だったのではと問題になっていました。

 菅:定年延長の閣議決定は法務省から「黒川さんが必要だ」ということで閣議請議があり、それを認めたということですよ。自然な形だったと思いますね。

 塩田:安倍首相や菅官房長官が、次期検事総長にという含みで定年延長を認めたのでは、と疑う見方もありました。

 菅:よく言われましたが、まったくそういうことはありません。法務省での話です。法務省から上がってきたものを閣議決定で認めたということです。

 それと検察庁法改正は全然別です。高齢化社会を見据えて、高齢期の職員の知識や経験を最大限に生かしたいということで、一般職の公務員の定年を、現在の60歳から65歳に引き上げるべきだという声があり、その中で出てきた。検察庁法も国家公務員法などと一緒にやろうということで、まとめて国会に出しましたが、さまざまな意見が出た。総理は「国民的なコンセンサスが必要。立ち止まって考えたい」と国会でも言っています。法案提出について、改めて検討していくことにしたわけです。

 塩田:検察庁法改正は法務省が職員の定年延長を望んだのが原因ということですか。

 菅:そういうことです。例えば副検事の人たちも年金を受け取るまで時間が空いてしまうんですよ。定年延長をやらないと駄目なんです。

 塩田:菅官房長官は黒川前検事長と親密な間柄という記事も目にしました。もともとはどういうお付き合いですか。

 菅:黒川さんは民主党政権のときに法務省の官房長だった。その後、安倍内閣になって、2017年7月にテロ等準備罪新設の改正組織犯罪処罰法が施行になりますが、法案作りの根回しは法務省の黒川官房長、法案に関する答弁の準備は現東京高検検事長の林眞琴刑事局長がやっていた。私は法務省関係の法律作りや法務行政に長く関わってきましたから、行政官としての彼らとはいろいろと一緒にやりました。ずっとそういう付き合いでした。2人とも優秀ですよ。だけど、高検の検事長になってからは、やはり一線を引いていました。

 塩田:今年前半、安倍首相は給付金案の撤回・変更、検察庁法改正の成立断念に加え、前向きだった学校の9月始業・入学問題でも、「前広に検討」と表明しながら、慎重論の高まりで事実上、断念しました。3度のつまずきも含め、政策決定などで中央省庁出身の秘書官や補佐官など「官邸官僚」の意見や助言に傾斜しすぎる「側近重視政治」が原因ではないかという指摘も少なくありません。首相官邸の意思決定の内実をどう見ていますか。

 菅:いろいろな指摘がありますが、そんなこと、ないと思います。それぞれの問題について、私を含めて議論したうえで方向性を決めています。批判があれば、私にも責任があるということですね。ですが、最終的には総理が判断している。緊急事態宣言のときも、私なんかは、感染者がゼロの県まで対象にしなくてもいいのでは、という思いがありましたが、知事会は「対象地域とそれ以外の地域の往来を自粛してほしい」と言う。いろいろな意見がきますが、最後は総理が判断するわけです。

■首相と対立していたら「政権運営ができない」

 塩田:安倍首相は自分で長く取り組んできた問題には当然、精通していると思いますが、そうでもない問題もあるはずです。そういう場合、接触する人たちの意見や話をじっくり聞いて、参考にしたり、そのうえで判断を下すという「聞き上手」のタイプですか。

 菅:実際はそうです。柔軟ですよ。

 塩田:2度目の安倍内閣が7年超の長期政権となり、最近、安倍首相と菅官房長官の二人三脚の足並みの乱れ、両者の間のすき間風、果ては対立も、という記事も目にします。

 菅:よく言われますけど、何でだろうと思う。まったくないですよ。そういうことがあったら、政権運営ができないと思います。皆さん、「総理と没交渉」と言っていますけど。私は1日に2~3回、会っています。私は何かあると、必ず総理に報告します。ずっとそうです。

 首相秘書官も必ず私の部屋に事前に来て全部、報告してくれる。相談もしますよ。私は出身の役所で見るのではなく、仕事ができる人を大事にします。そうでなければ、国のために働けないと思っていますから。

 塩田:去年5月の訪米の前後から、官房長官が日本を留守にして訪米するのは、「ポスト安倍」に野心を持ち始めたのではないか、という解説が流れ始め、神経をとがらせる安倍首相との心理戦を指摘する声も多くなりました。

 菅:訪米も、拉致問題担当大臣として、日米連携を確認・強化すべく働きかけるためのものでした。当然、総理には事前に相談し、「ぜひ行ってきてください」と言っていただいた。拉致問題担当大臣は官房長官との兼務になりますが、拉致問題について、中途半端にやっているのではないという思いで取り組んでいます。歴代の担当大臣はすべて国連で演説している。私の場合、前の大臣がやっていたことは最低限、すべてやるということでやってきた。国連でのシンポジウムは必ずやることになっているので、行かなかったら、逆に中途半端にやっていると思いますよね。

 塩田:去年9月の内閣改造での河井克行法相と菅原一秀経済産業相の起用をめぐって、安倍首相と菅官房長官の確執が取り沙汰されました。菅さんが入閣を強く推した両者が共に早期辞任に追い込まれ、安倍首相の菅さんへの不信感が高まったという解説も目にしました。

 菅:それはまったくないですね。大臣の人事は総理の専権事項です。口出しはしないですよ。

 塩田:「身体検査」と呼ばれる入閣候補者の事前の身辺調査は官房長官の役目ですか。

■「身辺調査は、やることになっていない」

 菅:いわゆる身辺調査は、やることになっていないですよ。週刊誌の情報くらいまでは集めていますけどね。

 塩田:両者の早期辞任について、どう受け止めましたか。

 菅:辞任の原因になったああいうことは、私は知らなかったんですよ。2人とは懇意にしていました。まあ、閣内に懇意にしている人はたくさんいますけどね。

 塩田:河井前法相は国会閉幕の翌日の6月18日に案里夫人とともに東京地検特捜部に公職選挙法違反容疑で逮捕されました。河井前法相との付き合いはいつからですか。

 菅:衆院選初当選の同期です。小選挙区が導入された初めての選挙の1996年10月の衆院選で初当選しました。そのころからです。同期の仲間はみんな仲がいいですよ。

 塩田:河井前法相が運営の中心となっていた「向日葵会」という会があるそうですね。

 菅:この会はもともと鳩山邦夫元総務相ですよ。それを河井さんが引き継いだのでしょう。私を囲む会ではない。それに年に1回か2回、呼んでもらったという感じです。

 塩田:河井前法相の人物像をどう見ていましたか。

 菅:結構、勉強家でしたね。刑事事件になっていますから、それ以上、私が言うべきではないと思います。

 塩田:昨年7月の参院選で、定数2の広島選挙区に、自民党は現職だった溝手顕正元国家公安委員長と河井前法相の案里夫人の2人を立て、溝手氏は落選し、河井候補は当選しました。今、この選挙で広範囲な買収行為が行われたと報道されています。

 菅:私はまったく知りません。選挙は党本部の話で、官房長官の私の立場で言うべきことではありません。自民党が参議院で単独過半数を確保するのが至上命題でしたから、あそこは2人当選でいけるという読みで、2人擁立を判断したと思いますよ。

 塩田:選挙で党費の中から1億5000万円が投じられたと後に記事になりました。

 菅:それは知りませんでした。参院選では、重点区にはいろいろお金が出ているのではないか。あれは党の正式なお金で、重点区に、という形だったんだと思います。普通は県連に対して出します。河井候補は党本部で公認になったけど、広島県連は受け付けなかったのでしょう。そういう事情はあったんじゃないかな。

 塩田:2度目の安倍政権は誕生から7年半を超えました。菅官房長官は発足以来、安倍首相と全任期を共にしていますが、7年余りで安倍首相に大きな変化があったと感じる点は。

■第1次安倍政権の反省

 菅:総理は流れを見ながら戦略的に物事を判断しています。1回目の政権のとき、1年で辞めた経験が大きいと思いますね。1回目は重要法案を結構、仕上げた。仕上げれば、国民から評価されると思って、どんどんやったんですが、国民に届かなかった。

 今回は1つひとつ丁寧にやっています。賛否が分かれるような大きな法案を仕上げた後は少し時間を置いて、政権の支持率や体力を回復させてから、また次の重要法案に挑戦するといったことです。こうして、特定秘密保護法、平和・安全法制、テロ等準備罪を成立させました。テロ等準備罪は過去に3つの内閣が挑戦して失敗したものです。

 塩田:これだけはやり遂げたいという未達成の目標は。

 菅:それは憲法改正でしょう。総理ご本人も言っています。

 塩田:だけど、自民党総裁任期は残り1年2カ月しかありません。

菅:でも、6月19日の会食(安倍首相、麻生太郎副総理兼財務相、菅官房長官、甘利明元経産相の4人の会合。『第1部』冒頭参照)でも、総理は「やる」と言っていましたよ。まず議論すればいいんですよ。国民がやれと言っているんだから、当然、国会で議論すべきだと思います。

 塩田:コロナ危機の行方が不透明ですが、衆議院の解散・総選挙について、どんなスケジュールを想定していますか。

 菅:6月19日の会食でも、解散については、総理は「つねに」と言っていました。解散権は総理の専権事項ですから、それに私が触れるべきじゃないと思います。

 塩田:来年の7~8月に東京五輪があります。五輪後だと、来年10月に訪れる衆議院議員の任期満了の直前となります。来年の春までにやらなかったら、衆院選をやるときがなくなります。

 菅:いや、知りません(笑)。

 塩田:次期衆院選で、もし自民党が大勝すれば、党内で「総選挙に勝った総裁を自民党の都合で辞めさせるわけにはいかない」という主張が高まり、総裁4選論が強くなることも考えられます。安倍首相がその点を重視して解散戦略を組み立てることはありますか。

 菅:それはないと思います。総理ご自身は「4選はやらない」と皆におっしゃっています。ただ、解散は別ですよ。つねに解散権を持っているということです。

 塩田:次の内閣改造・自民党役員人事はいかがですか。8月実施説も流れています。

 菅:それもわからない。ただ党役員の任期切れがきます。どうするかは総理のご判断です。

■ポスト安倍の考えは? 

 塩田:菅官房長官は去年5月の令和改元の際、国民の間で「令和おじさん」と呼ばれて人気が高くなり、ポスト安倍の有力候補と見る人が急増しました。ですが、以前のインタビューで、「ポスト安倍といったことは毛頭考えていない」という回答でした。

 菅:今も一緒ですよ。前と同じです。

 塩田:安倍首相は昨年暮れのテレビで、ポスト安倍の候補として、岸田文雄政務調査会長、茂木敏充外相、加藤勝信厚生労働相と並べて、菅官房長官の名前を挙げていました。

 菅:それはわかりません。

 塩田:次の内閣改造で、続けて官房長官をやってほしいと言われたら、引き受けますか。

 菅:いえいえ、それは総理の専権事項ですので。

 第3回(7月12日公開予定)に続く

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最終更新:7/11(土) 8:10

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