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給付金は効果あり? 街角景気が急改善 カギ握る倒産件数

7/11 11:41 配信

THE PAGE

 内閣府が7月8日に発表した「景気ウォッチャー」調査では景況感の急激な改善が浮き彫りになりました。しかし景気の先行きは必ずしも楽観的とは言えないようです。第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストに寄稿してもらいました。

10万円給付金が家電買い換え財源に?

 日本経済の動向をつかむ上で有用な指標として景気ウォッチャー調査があります。この指標は消費者に身近なところでビジネスを展開する人たち(約2000人)が肌で感じた景況感を数値化したものです。調査対象にはスーパーやコンビニ、家電量販店、アパレル、ホームセンターに自動車販売など小売業に従事する人のほか、不動産業、人材派遣業、さらにはタクシードライバーなど幅広い業種が含まれます。調査期間は毎月25日から月末までで、公表は毎月第6営業日(今月は8日)です。調査から公表に至るまでの期間が2週間と短いため、速報性に優れた経済指標として重宝されています。

 景気ウォッチャー調査はコロナ禍の初期段階にあたる2月に急落した後、3月に一段と水準を切り下げ、4月は歴史的低水準に沈みました。緊急事態宣言が解除された5月(下旬)に底打ちすると、6月は鋭い改善を示し昨秋と同レベルまで戻しました。緊急事態宣言解除に伴い、飲食店・小売店などの営業が再開されたことに加え、特別定額給付金10万円の支給が効果を発揮した模様です。

 10万円の給付金については、その効果を疑問視する向きも多いですが、実際、家電量販店の売上は5月中旬頃から顕著に伸びています。テレワーク対応でPCの売れ行きが順調なのはよく報じられていましたが、エアコンや洗濯機、冷蔵庫など広範な品目が伸びています(データは経済産業が公表しているPOSデータを参照)。今から10年ほど前、2009年5月から約2年間実施された「家電エコポイント」制度時に購入された家電が買い替えサイクルに入っていることもあり、給付金が家電などの耐久財に向かっている可能性が指摘できます。

 もっとも、先行きについては慎重にならざるを得ません。給付金の景気刺激効果が薄れていくほか、「密」を避けるための営業コストや海外経済の落ち込みが重くのしかかるからです。飲食店などのような「BtoC」の事業を展開する業種ではコロナ禍以前の状態に戻ることは時間がかかると予想され、製造業では世界経済の減速を受け自動車などの輸出停滞が予想されます。

通常の景気後退局面と異なり倒産は抑制

 そうした不透明感が漂う中、人々が最も恐れるのは「失業」でしょう。その点、重要なのは「倒産」の抑制です。特に中小企業における倒産は、そこで働く従業員の失業を意味するので要注意です。雇用者の約7割が中小企業に雇われていることを踏まえれば、「倒産=失業」と解釈してもさほど問題はないでしょう。

 現在得られているデータから判断すると、倒産の発生は抑制されています。やや意外かもしれませんが、倒産件数は4~6月平均が612件と1~3月平均の721件を下回っています。背景にあるのは政府と日銀による資金繰り支援策でしょう。景気対策の柱として講じられた実質無利子・無担保融資(セーフティーネットや政策金融公庫による融資)が奏功したほか、日銀が実施している「資金繰り支援のための特別プログラム」が効いた模様です。後者は、日銀が金融機関にゼロ金利で資金を供給し、コロナ禍で苦しむ企業への融資を後押しする仕組みです。

 通常の景気後退局面では、銀行が融資基準を厳格化することで企業の資金繰りが途絶え、倒産が増加し、失業率が上昇します。しかしながら、コロナ禍においては、政策当局が半ば政策的に銀行の融資姿勢をコントロールしたことで、倒産の封じ込めに成功しているようにみえます。過去の景気後退局面では銀行の融資姿勢の厳格化が企業に資金ショートを意識させ、それが複数の経路を通じて経済を蝕んできましたが、その点で今回は過去の景気後退局面とは異なる構図となっています。過度な倒産抑制はゾンビ企業を発生させるといった副作用もありますが、現時点の評価として企業の資金調達環境が安定していることの意味は大きいと考えられます。今後、コロナ禍の景気対策をめぐっては、企業の資金調達環境及び倒産動向を注視していく必要があります。

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※本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

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最終更新:7/11(土) 11:41

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