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「ななつ星」デザイナーが考えるコロナ後の世界

7/8 5:01 配信

東洋経済オンライン

工業デザイナーの水戸岡鋭治氏は、JR九州の豪華寝台列車「ななつ星 in 九州」や新幹線800系などを手掛けた鉄道デザインの第一人者。観光列車を地域活性化の起爆剤にしたいと考える各地の自治体や鉄道会社からひっぱりだこの存在だ。
鉄道以外の交通機関のデザインにも携わっており、2019年11月から東京・池袋周辺を回遊する路線バス「IKEBUS(イケバス)」のデザインも行った。
水戸岡氏がデザインする鉄道車両は、鉄やプラスチックの代わりに木材をふんだんに使っている。天然の素材を使うことで、利用者に環境意識や物を大切にする意識を高めてもらいたいという狙いがある。

そんな水戸岡氏は、アフターコロナの時代における鉄道の役割をどのように考えているのだろうか。6月下旬のある日、都内にある水戸岡氏の事務所を訪ねた。

■自宅をオフィスにできるデザインを

 ――水戸岡さんご自身は、外出自粛時はどのように仕事をしていたのですか。

 この3カ月くらい電話も少ないし、打ち合わせも半分以下。こんなにゆっくりしたのは生まれて初めて。でも、将来は現在とは違うウイルスが来るかもしれない。そのときにあわてないような、どんなウイルスが来ても対応できるような、生活環境や生き方を準備しておく必要がある。

 今回はそのときに備えて考える時間が与えられたと思っている。私たちデザイナーの仕事は豊かなコミュニケーションが生まれる場所を作って、みんなの生活を豊かにすることだけど、その前に「安心・安全」が先に来た。30年後くらいにこういう問題が来るんじゃないかと思っていたが、急に来たね。

 コロナで人と人が接近してはいけないということになり、多くの人が在宅勤務を余儀なくされているが、自宅に仕事場を確保できない人はたくさんいる。それぞれの家をオフィスにできるようなデザインを考えないといけない。

 自宅を必要に応じて一瞬でオフィスにできるパネルやカーテンがあるといいね。将来のオフィスも今とは変わる。広い空間だけあればよくて、スイッチを押すと天井からパネルが降りてきて、部屋を仕切るようなものにすればいい。

 ――鉄道のあり方も変わりますか。

 住宅を仕切るという考え方は鉄道の車両でも使える。例えば、客室内に車両を仕切るパネルがあちこちから出てきて、瞬時に個室化するといった仕組みかな。電車の中を個人のオフィスにするシステムを作って、そこを予約すれば、通勤しながら仕事ができるとかね。

 ――最近の電車は窓を開けて走って、空気を入れ換えています。イケバスも窓を開けて走るのがコンセプトですね。

 あれは予算の都合で空調機器を載せられなかった(笑)。だから冬は窓を閉めて、夏は窓を開ける。冬はお客様が服をきているから問題ないけど、夏は窓を開けても暑いよね。「暑いからなんとかしてほしい」というお客様のわがままを受け入れるかどうかが問われるのがこれからの社会。

 自然環境が変わっていく中で、国や都市に解決を求めるのではなく、個人が体力と気力と知力をステップアップしないと解決できないのではないか。

■自然の力をもう一度見直そう

 コロナ対策なんて、日本の住宅ではもともとできていた。木戸があって、障子があって、ふすまがあって。開けたら外ですよ。日本の住宅は広い空間を仕切りでさまざまな空間に区切ることによって、個室化できていた。

 それに畳の材料のいぐさは対湿性、殺菌効果、消臭効果があるという万能の草。こういうよいものが日本には昔からたくさんあるので、自然の力をもう一度見直して、私たちの生活空間に持ち込めばいい。

 ――昔の時代に戻る? 

 そうではない。昔のやり方も入れるし、新しいやり方も入れる。昔のよい部分を生かして、最先端の技術でデザインして造っていく。電車の窓でいえば、今でも手で開けていて大変だけど、ボタンを押したら自動的に開くようにすればいい。

 乗用車なんて、ずいぶん前から窓の開閉は自動ですよ。いちばん進んでいる乗り物は乗用車。その技術を電車に持ち込めばいい。窓だけでなく、いすもそう。自動車のシートはいちばん進んでいる。座り心地をよく研究しているし、大量に造られるからコストも安い。それに比べたら電車のいすなんてたかが知れている。

「週刊東洋経済プラス」のインタビュー拡大版では「電車通勤のスタイルはどう変わるか」「列車の旅のあり方」のほか、アフターコロナ時代におけるオフィスや衣服について、イラストをもとに話をしています。

東洋経済オンライン

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最終更新:7/8(水) 7:42

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