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オフィスレス会社の進化形は「社員レス会社」だ

7/8 7:40 配信

東洋経済オンライン

 リモートワークを前提とした働き方の変化が、会社の経営や組織づくりにも大きな影響をおよぼしている。以前からシェアリングエコノミーの流れはあったが、会社経営についても「持つ」ことが以前ほど重要ではない時代が来ているのかもしれない。

 これを読んでいる人の中にも家でリモートワークをしている人は多いと思う。そうした方は新型コロナウイルスの感染拡大以降、どれくらいオフィスに出社しただろうか。たまに出社するだけだったり、中にはもう4カ月は出社していない人もいるかもしれない。

■コロナ禍を契機にオフィスを解約

 そんな中、経営者の立場からどうしてももったいないと感じてしまうのが「オフィス賃料」だ。まったく使っていないという場合もあれば、一部メンバーは出社しているものの床面積すべては使っていないという会社もあるのではないだろうか。

 とあるインターネット大手ベンチャー企業は、港区の著名なオフィスビルに複数フロア借りているが、もう年内は全員フルリモートワークと意思決定したという噂も聞いた。

 サンフランシスコにあるTwitter社は希望者は今後永久に在宅勤務にすると発表した。サンフランシスコ在住の友人によると、Twitter以外の会社もその姿勢に追随していっているという。また先日、富士通がオフィススペースを約3年かけて半減させることを正式発表していた。

 こうした話を聞くとひとつの問いに達する。これからの時代、オフィスは本当に必要なのだろうか。

 実は私が経営している会社も4月末にオフィスの解約申請を出した。オフィスは解約するためには3カ月から半年前の告知が必要なので、まだ完全にオフィスがなくなったという会社は少ないが、知人の経営者からも「解約した」という話は最近本当によく聞くし、経営者同士での話題はもっぱらオフィスをどうするかになっている。

 使っていないオフィスの一部を知人の会社に貸している会社があったり、曜日を分けてオフィスをシェアしないか、という提案も聞く。

 外国語学習者向けQ&Aサービス「HiNative」を運営するLang-8社もオフィスを解約すると公表していた。コストメリットだけではなく、過去の常識にとらわれない迅速な意思決定もこれからを生き残る経営者には必須のスキルなのかもしれない。

■オフィスを解約することの賛否

 わが社も結果的にオフィスの解約をしたが、もちろんデメリットもあるので、すぐに意思決定できたわけではない。

 個人差はあるが、筆者自身リモートワークによって仕事の作業効率は格段にあがった。作業中に誰かに話しかけられたり、背後で気になる雑談が始まったりしないからだ。ミーティングと作業時間が完全に分断されるのでミーティングはミーティング、作業時間は作業時間とパキッと境界ができ、それぞれに集中できるようになった。

 経営者にとって利益にそのままヒットする固定費は削減できるものなら削減したいものである。固定費は今の時代、リスクなのかもしれない。だから毎月ただただ出ていくオフィス賃料は無視できなかった。

 その分マーケティングや採用にお金を回せるじゃないか、とやきもきする日々が続いた。家賃の固定費を削減した分を、インターネットや在宅勤務の環境を整えるという手当の名目で一定部分を従業員に還元すれば満足度も得られる。

 ただ、すぐにオフィスを解約すればいいじゃないかというとそこまで簡単な話ではない。オフィスがあったことで生まれていた価値やそこで生まれる文化のことは忘れてはいけない。

 立ち話から生まれる新しいアイデアや、タバコ部屋などで生まれる他部署との人間関係から仕事がやりやすくなった経験は、誰にでも心当たりがあると思う。そういう偶然の出会いや人間関係が生まれなくなるのである。完全にリモートワークにするのであれば、何かしら仕組みでカバーしなければそういうものをただ捨てることになってしまう。

 また、リモートワークでは会社独自の文化を醸成していくのはだいぶ難しいと思っている。同じ釜の飯を食う、とはよく言ったもので、仕事終わりに流れで飲みに行ったり、一服がてらランチに出たり、そうでなくともオフィスで同じ空気を感じて働いていたのとはわけが違う。そういう空気を共有できていたものを何かしらでカバーする必要があるように考えている。

 まだこれからの新しい働き方の明確な解はどこの会社も手探りの状態だが、週1~2回の出社でそれ以外はリモートというような働き方がいいのではないかと考えている。リモートワークのいい部分と、オフィス出社のいい側面を「いいとこ取り」するのである。集中する時間と集まって新しいアイデアや人間関係を深める時間を日単位で分けるのである。

 実際、わが社はそのようにしていこうという話が出ており、幸運にも株主のオフィスを間借りさせてもらえることになった。毎日出社する必要はもはやないが、人間同士たまには膝を突き合わせてみんなで仕事をしたいものである。

 VUCA(Volatility=変動、Uncertainty=不確実、Complexity=複雑、Ambiguity=曖昧)な時代と言われているが、想像以上に先行きが不透明になり、経営には守りの強さや柔軟性が以前よりも求められるようになった。たしかに固定費を持たないで利益があげられる会社があったらどんなに強いだろう。何が正解かは業態によるが、柔軟な意思決定を迅速にできる会社は強い。

■「オフィスレス」の次は「社員レス」の時代に

 そうした際にオフィスのほかにどこの会社も必ず抱えている大きな固定費がある。「人件費」だ。

 日本において、正社員を簡単にクビにすることはできない。自分は元採用担当なので人に対しては並々ならぬ思い入れがある。だが、それでも会社経営者という立場からすると正社員は無視できない固定費である。

 そのような中、正社員として採用しないまでも、「副業メンバー」で人材を確保している会社が増え始めている。われわれのお客様の中にも「正社員として採用予定だったが、固定費を増やしたくないので副業の採用枠に変更した」という会社が少なくない。

 従業員は2人のみで、残り30人はすべて副業メンバーで固めているという会社もあった。ベンチャーのみならず大手のライオンも副業人材の公募を始めた。かくいうわが社でも採用の話が出ると「正社員を採用する前になんとか副業の方にお願いできたりしないものか」という議論が起きる。

 逆に自社の従業員に給料が満額払えないので、社員に副業を推奨しているという話も聞くようになった。こんな形で副業が広まるとはゆめゆめ思っていなかったが、身軽な経営を考えれば、正社員にこだわらない世界は加速するように感じる。

 今までは企業内の同僚と仕事をするのが当たり前だったが、これからは社外の友人やビジネスパートナーとゆるやかにつながったコミュニティの中で、雇用形態にこだわらず仕事をするようになるのではないだろうか。

 会社やプロジェクトが立ち上がり、コミュニティの中から適任な人たちが集まって推進していく。それが終われば、解散してまた違うプロジェクトに、異なるメンバーが集まる――。そうした、プロジェクトごとに集合と離散を繰り返す世界になるのではないだろうか。

 その世界では、正社員も業務委託もアルバイトも契約社員も雇用ステータスは自分の好きに選べるし、それ自体もあまり重要なことではなくなるだろう。ただ、そういう世界においてちゃんと面白い仕事を獲得できるかは、今までの実績や着実に仕事をこなしてきたかといった、「信頼貯金」によるのかもしれない。

 会社という形にとらわれず好きなメンバーと好きなことをするために働ける世界になるかもしれない。筆者はそういう世界が来るのが楽しみだったりする。

東洋経済オンライン

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最終更新:7/8(水) 7:40

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