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外食産業、売り上げ9割減も 各社模索、どうなる今後?【#コロナとどう暮らす】

7/7 17:34 配信

THE PAGE

 「引き続き壊滅的な状況となった……」

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛や休業によって外食産業は4月、5月と大きな影響を受け、一部業態は業界団体の調査で上記のような表現をされるに至りました。自粛解除後も各店舗では感染拡大防止のため、客席を減らしてソーシャルディスタンスを確保するなど「間引き営業」が行われており、客数を思うように増やせない状況です。Yahoo!ニュースのコメント欄には、「しばらくは飲食店なんか行く気にならない」「コロナ前と同じような客入りなんて絶対無理」などの声が寄せられています。一方、コロナ禍にあっても売り上げが前年同期比を上回る「勝ち組」の業態もあります。ウィズコロナ時代の外食産業は、どうなっていくのでしょうか。

業態によっては売り上げ9割減

 「新しい生活様式ということで自宅での飲食が増え、人々の気持ちが外食から離れていってしまわないか心配です」
 
 こう話すのは、外食チェーンの業界団体である日本フードサービス協会の事務局の担当者です。同協会が会員企業を対象に毎月行っている市場動向調査によると、4月の外食全体の売り上げは前年同月比で4割減の60.4%となり、調査を始めた1994年1月以降、最大の下げ幅となりました。

 中でも、落ち込みが激しいのが「パブ・居酒屋」で、4月(8.6%)、5月(10.0%)と2か月続けて前年比9割減となりました。他にも、ディナーレストランが4月(16.0%)、5月(28.5%)、ファミリーレストランも4月(40.9%)、5月(50.6%)など軒並み大きく落ち込みました。

 国が緊急事態宣言を発した後、外食業界は都道府県からの要請を受けて店舗の臨時休業や営業時間の短縮を実施。市民の外出自粛も加わって来店客数が大幅に減少し、売り上げに大きなダメージを与えたのです。

店舗を大量閉店する企業も

 厳しい環境下で、店舗数の縮小を決断する動きも出ています。全国に居酒屋「甘太郎」や焼き肉店「牛角」などを展開するコロワイドは5月22日、居酒屋を中心に収益改善が厳しいと判断した196店舗を閉店すると発表しました。広報担当によると、196店舗は9月までに順次閉めていく予定です。

 国の緊急事態宣言を受け、同社は全国に展開する居酒屋約600店舗の9割強にあたる約550店舗、レストランは約1800店舗中の4割強の約740店舗で臨時休業もしくは時短営業を実施。この影響により、単月の売上高は4月が前年同月比で41.3%、5月が60.1%と低迷しました。

 同社は今後、テレワークの増加や宅配・オンラインショッピングの拡大など、社会の仕組みや人々の消費行動が大きく変化すると予測。広報担当は「劇的に変化する市場に合わせてすばやく順応する必要があります」として、地域ごとのニーズに合った営業展開を検討中だそうです。

居酒屋を食堂に

 既存の店舗を別の業態に転換する企業もあります。居酒屋チェーン「塚田農場」を展開するエー・ピーカンパニーは5月15日に東京・渋谷、同18日に神奈川・武蔵小杉、6月9日には東京・池袋に、食事目的やちょい呑み目的など居酒屋より幅広い客層をターゲットにした食堂業態の「つかだ食堂」を新たにオープンしました。いずれも、これまでは「塚田農場」の店舗でした。

 取締役の野本周作さんは、ここ数年は忘年会や歓送迎会などの宴会需要が減ってきており「塚田農場」などの従来型の居酒屋では客のニーズに応えきれていないとの問題意識を抱えていた、と話します。そして、この傾向はコロナ禍で一層進むとみて、日中の食事需要を取り込むとともに、会社帰りの「ちょい飲み」需要にも対応できる食堂への転換を図った、とのことです。

 野本さんは「『つかだ食堂』が当たるかどうか、まだ始めたばかりなのでなんとも言えません」と説明。同社は「塚田農場」より客単価が高い店も安い店も展開しており、今後も多様な業態の店舗を運営しつつ、市場の動向を注視して力点を置く業態を見極めていく方針です。

好調なマクドナルド

 外食産業の中にあって、比較的堅調だったのが、ファストフードです。日本フードサービス協会の調べでは、前年同月比で4月(84.4%)、5月(90.7%)と他の業態に比べると減り幅は大きくありませんでした。特に、ハンバーガーなどの洋風ファストフードは4月(102.8%)、5月(110.9%)と前の年の実績を上回りました。

 日本マクドナルドホールディングスでは、4月の売上高は前年同月比で106.7%、5月は115.4%となりました。同社は、4月20日から東京都、大阪府など13都道府県内の約1910店で客席の利用を終日中止し、同29日には全国の全約2900店舗に拡大。店内での飲食が一切出来ない状況にも関わらず、ドライブスルーや持ち帰り、デリバリーの販売が大きく増加したのです。

 緊急事態宣言の解除を受けて店内での飲食を再開するにあたり、同社はソーシャルディスタンス確保のためにイスの間隔を空けるなどの対応を行った結果、来店客の収容可能人数が従来の半分程度に減りました。それに伴う影響はまだ明らかではなく、同社の広報担当は「ウィズコロナ時代にお客様の行動がどう変わっていくのか、まだしばらくは注視しなければならないと考えています」と気を引き締めます。

コンサルタントの見解は?

 外食産業の現状について、三菱UFJリサーチ&コンサルティングのコンサルタントの熊崎有希さんは、「外食各社の業績を見ると4月に底を打ち、5月に回復しているところが多いことから、産業全体で回復基調にあるのは間違いありません」と見ます。

 営業自粛期間中、テイクアウトなど新たな営業展開に取り組んだ店もありました。これに対して、熊崎さんは「デリバリーやテイクアウトを始めるにしても、多少時間が経ってもおいしく食べられるようなメニュー開発が必要になるなど、すぐに業績を上向かせるのは難しいでしょう。コロナ以前から、外食市場は縮小してきました。その中でいかに売り上げを上げるかを考え、実行してきたところは、ウィズコロナの時代でも優位にあると言えそうです」と語ります。

 今後、外食産業はどうやって生き残りを図るのか。熊崎さんは、コスト削減を一つのキーポイントとして挙げます。「感染拡大防止のために『間引き営業』をすると客の回転率低下は避けられません。新しい生活様式によって以前より売り上げを上げにくい状況に対応するために、コストを削減することが重要です。そもそも、外食産業は売り上げのうち利益は1割も残らないような利益率の低さが課題です。これを機に、ホールサービスを含めた業務の効率化や、ICTの活用などによる生産性の向上に取り組んで収益構造を改善し、利益率をより高めてはどうでしょうか」と提案します。


(取材・文:具志堅浩二)

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最終更新:7/9(木) 17:41

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