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日本でも銀行の取り付け騒ぎは起こりうる!? コロナ不況深刻化のリスクシナリオ

7/5 20:00 配信

LIMO

新型コロナ不況が深刻化して銀行の不良債権が増えると、取り付け騒ぎが発生する可能性も考えておくべきだ、と筆者(塚崎公義)は考えています。

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新型コロナ不況の深刻化にともなって、金融危機の発生を心配する人が増え始めているようです。そこで、リスクシナリオとして金融危機を考えるシリーズを記すことにしました。第3回の今回は、銀行の取り付け騒ぎの可能性です。

取り付け騒ぎは合理的な行動に基づくから対応が困難

「あの銀行が倒産しそうだ」という噂やデマが流れた時、預金者が取るべき合理的な行動は、急いで預金を引き出すことでしょう。噂が誤りであった場合でも失うものはありません。強いて言えば銀行まで行く手間くらいです。

一方で、噂が本当であれば、預金を失ってしまうかもしれないわけですから、引き出しに行くのが合理的です。

そう考えて多くの預金者が預金の引き出しに殺到すると、銀行が倒産する確率は高まります。そうなると一層、「自分も引き出す」ことが預金者としての合理的な行動になるわけです。

したがって、取り付け騒ぎは厄介です。そこで、様々な対策が採られているわけです。

銀行の健全性確保に多様な取り組み

一般企業がハイリスク・ハイリターンのビジネスを行なって倒産したとしても、自己責任です。しかし、銀行が倒産すると、一般企業の倒産とは比較にならないほどの悪影響を経済全体に及ぼします。

そこで、銀行が倒産しないように、健全性を維持させる様々な取り組みがなされています。

まず、銀行はハイリスク・ハイリターンなビジネスを手がけることが制約されています。自己資本比率規制なども課されていて、自己資本に比べて貸出残高が一定以上に増やせないようになっています。

たとえば「貸出残高の8%が回収不能となっても銀行が潰れない」ということが貸出実行の条件となっていたりするわけです。

また、銀行の不良債権が増えていないか等々を確認するための検査も定期的に行われていて、不良債権が増えていると改善命令が出されたりすることになります。

こうした対策によって、預金者たちは「政府が銀行の安全性を確保してくれているから、銀行は倒産しないだろう」と安心できるわけですね。

預金保険制度がある

預金保険という制度があります。大雑把に言えば「銀行が倒産しても、残高1000万円までの預金は政府が代わりに払い戻してあげます」というものです。

主目的は、銀行倒産の被害から庶民を守ることなのでしょうが、これには取り付け騒ぎを防ぐ効果もあります。「銀行が倒産しても、あなたの預金は政府が代わりに払い戻しますから、銀行に殺到しなくても大丈夫ですよ」ということだからです。

これは、理屈上は良くできた制度なのですが、残念なのは、この制度があることを知っている預金者が少ないので、実際には殺到する必要のない預金者たちが銀行に殺到してしまうだろう、ということです。

余談ですが、日本政府はせっかく良い制度を作っても広報宣伝が巧くありませんね。預金保険制度もですが、新型コロナに関する資金繰り支援策も色々と策定されているのに必要な人に必要な情報が行き渡っていないようですから。

政府は地銀等に公的資金を注入しやすくする方針ですから、これも人々に周知されれば銀行倒産の噂を信じる人が減り、取り付け騒ぎが起きにくくなると期待されます。もっとも、政府が上手に広報すれば、という前提ですが(笑)。

日銀が現金輸送車で駆けつける

いざ、取り付け騒ぎが起こってしまうと、銀行の金庫は簡単に底を突きます。取り付け騒ぎが起きないことを前提に、金庫には少ししか現金を置いていないからです。

しかし、押し寄せる預金者に向かって「金庫がカラだから払い戻しには応じられません」などと言えば、預金者の間に「噂は本当らしい」という噂が広がり、事態は収集がつかなくなるでしょう。

そうした事態を避けるため、日銀が現金輸送車で札束を届けてくれる場合が多いようです。窓口に札束を積み上げただけで、押しかけた預金者たちは安心して、預金を引き出さずに帰る預金者も少なくない、と言われています。

倒産増加で銀行が赤字に

このように、様々な対策が講じられているので、取り付け騒ぎで銀行が破綻するといったことは起きないと思われますが、可能性が皆無とは言い切れません。

新型コロナ不況は、非常に深刻です。政府は資金繰り支援等々を行なっていますが、それでも返済困難や倒産の激増は避けられないでしょう。そうなると銀行の不良債権は激増し、銀行の収益は大幅に悪化します。中には赤字に転落する所も出てくるでしょう。

銀行は、新型コロナ以前から長引くゼロ成長とゼロ金利に苦しめられて来ましたから、基礎体力の落ちている所に新型コロナショックが加わった、ということですね。

事態が悪化すると、不安を感じた預金者たちの間で「あの銀行は危ない」といった噂やデマが広がりやすくなります。そうなると、「急いで預金を引き出そう」と考えた預金者が銀行に殺到し、それを見た他の預金者も急いで殺到する、といったことが起きないとは限らないのです。

以上、色々と記して来ましたが、本シリーズは予測ではなくリスクシナリオですので、リスクの存在を頭の片隅に置いておこう、ということであって、過度な懸念は不要です。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

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最終更新:7/5(日) 22:55

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