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「秋に解散」を振り回す麻生副総理のある思惑

7/4 5:01 配信

東洋経済オンライン

 コロナ国会では、あまり存在が目立たなかった麻生太郎副総理兼財務相が、ここにきて永田町を騒がせている。

 安倍晋三首相と6月だけで8回も会談した麻生氏が、同月29日に公明党の斉藤鉄夫幹事長に「秋に解散をやるべきだ」と持ち掛けるなど、「政局の仕掛け人」として動き出したからだ。

 安倍首相の盟友で後見人も自任する麻生氏だけに、政界では「首相と打ち合わせたうえでの動き」(閣僚経験者)との見方も多く、与野党を問わずに解散風に身構える。ここにきて東京を中心に新型コロナ第2波の不安も急拡大しており、石破茂元幹事長が「この状況で(解散は)やるべきではない」と発言するなど、与党内には秋解散反対の声も広がっている。

■秋解散への地ならしか

 安倍首相自身は解散について「やれるときにやる。その時期は神のみぞ知る」と漏らしたとされる。麻生氏との会談と並行して、安倍首相は連日、与党幹部らとの会談も続けており、「秋解散への地ならし」(自民幹部)との指摘もある。

 麻生氏が「解散するなら秋しかないと進言した」(側近)のは、安倍首相の求心力回復への援護射撃ともみえる。その一方で、細田派に次ぐ党内第2勢力の麻生派の領袖として、本格化しつつあるポスト安倍レースでの「キングメーカー狙い」との見方も出る。

 麻生氏の唱える秋解散説には、さまざまな政治的要素が絡む。現在の衆院議員の任期は2021年10月満了で、2020年10月で前回衆院選から3年となり、「平均2年半」とされる衆院選の間隔をすでに上回っている。

 しかも、任期満了直前の2021年9月末には安倍首相の自民党総裁としての任期が切れる。コロナ禍での経済対策や東京五輪開催を前提に政治日程を予測すると、政界では「次期衆院選のタイミングは『年内』か『来秋』の2択」(自民長老)との見方が支配的となる。

 このうち「来秋」は事実上の任期満了選挙となる可能性が高く、政治的には安倍首相による解散権行使との意味合いは消え、政局運営の武器とはなりそうもない。だからこそ麻生氏は「解散するなら秋しかない」と首相の背中を押すのだ。

 夏以降に予想される内外の政治日程も麻生氏の主張を裏付ける。アメリカが議長となるG7サミットは8月末が想定され。安倍首相の盟友・トランプ大統領の再選がかかる大統領選は11月3日だ。さらに、国際オリンピック委員会が東京五輪開催の可否について検討を本格化させるのも10月ごろとみられている。

■解散説の原因となった「3A1S」会談

 さらに、医療専門家の多くが11月以降にコロナ第2波の襲来を予測している。となれば、政治的にみても「秋口解散ー10月選挙しかない」(自民選対)。「選挙の神様」との異名もあった小沢一郎氏(国民民主党)も「選挙をやるとすれば10月だ」と断言する。

 与党内では、臨時国会を9月28日に召集して冒頭解散し、投開票日を10月25日とする具体的な選挙日程も取り沙汰されている。公明党が党大会を9月27日に設定し、安倍首相の出身派閥である細田派の政治資金パーティが同28日開催予定であることや、10月25日が衆参統一補欠選挙の実施日となることから組み立てられた仮説だ。

 麻生氏の言動とともに、今回の解散風加速の原因となったのは、いわゆる「3A1S」と呼ばれる安倍、麻生両氏と菅義偉官房長官、甘利明自民党税制調査会長の4者会談(6月19日夜)だ。「政権の真の中枢」と位置付けられてきた4氏の会談は、2017年7月以来3年ぶり。「前回の会談では解散時期も話し合われ、それが9月28日解散ー10月22日投開票という前回衆院選につながった」(自民幹部)とされる。「まさにビデオテープでもう一度」(閣僚経験者)ともみえる。

 もちろん、与党幹部の中では「コロナ禍での解散などありえない」との声が多数派だ。ポスト安倍の人気ナンバーワンとなっている石破氏は、7月2日の講演で「(前回は)国難突破解散だったが、(今回は)何を国民に問うのか。『いまなら勝てるだろう解散』はやるべきでないし、憲法の趣旨にも大きく反する」と、秋解散説を厳しく批判した。

 その一方で、選挙で自民党が最大の頼りとする公明党も、山口那津男代表や斉藤幹事長が秋解散に否定的見解を繰り返している。「コロナショックで集会も開けず、選挙準備が整わない」(斎藤氏)のが理由だ。にもかかわらず、同党は2日、次期衆院選での小選挙区公認候補を発表した。

 「(衆院議員の)任期が1年ちょっとだから、当然のスケジュール」(斉藤氏)と強調するが、野党は「秋解散への準備」(立憲民主幹部)と色めき立つ。

 そうした中、自民党内ではポスト安倍レースも本格化している。石破氏や岸田文雄政調会長ら後継総裁の有力候補と、安倍首相や麻生、二階俊博幹事長、菅各氏との会談が連日行われている。一連の会談は「解散時期やそれに先立つ党・内閣人事での感触を探る目的」(細田派幹部)とみられており、これも解散風をあおる要因となっている。

 中でも、麻生、二階両氏の「縦横無尽な動き」(自民幹部)が際立つ。麻生氏は安倍首相との連続会談と並行して、各派閥の領袖や幹部との会談を繰り返している。これに対抗するように、二階氏も石破、岸田両氏とそれぞれ個別に会談する一方、菅氏とも意見交換するなど、「政界随一の寝業師」(二階派幹部)としてにらみを利かす。まさに「麻生氏と二階氏による政局運営での主導権争い」(岸田派幹部)ともみえる。

■二階氏は幹事長続投に布石

 二階氏は9月8日に幹事長在任日数が歴代最長となる。2日の岸田氏との会談では「前途洋々、次に期待する」とエールを送る一方、岸田、二階両派を含めたお祝いの会を開催することも話題になったという。「9月の党役員任期切れに絡めた人事での幹事長続投への布石」(岸田派幹部)との見方も広がる。

 麻生氏は首相に就任した2008年9月に、臨時国会での解散を模索したが、リーマンショックで断念した経緯がある。当時も衆院議員の任期満了が約1年後に迫っており、結果的に2009年8月末の「政権交代選挙」で自民党は惨敗、民主党政権が誕生した。「安倍首相にその轍は踏ませたくない」との思いが麻生氏の活発な動きにつながっているとの見方もある。

 そうした中、首相サイドからは秋解散に否定的な声も漏れてくる。「国民がコロナ禍で苦しむ中、感染防止や経済対策に専念すべきで、解散による政治空白などありえない」(官邸筋)という判断だ。首相側近も「首相には、この状況であえて伝家の宝刀を抜く気はない」と断言する。

 「多弱」と呼ばれて久しい立憲民主、国民民主など主要野党の足並みの乱れが続く現状から、自民党内には「秋に解散しても負けない」(幹部)との声も少なくない。しかし、自民党が秘かに実施した全国的調査では「今やれば自民過半数割れもありうる」(自民選対)との厳しい結果が出ているとされる。

 そもそも安倍首相にとって「伝家の宝刀を抜くかどうかは、まずはコロナ次第だが、ポスト安倍レースの状況も見極める必要がある」(側近)のは間違いない。現状では、安倍首相が後継者に期待する岸田氏への国民的期待は依然として広がりを欠き、安倍首相の足元の細田派内でも「岸田氏は担げない」との声が多数派だとされる。

 安倍首相が来秋の事実上の任期満了選挙を選択すれば、その前段となるはずの自民総裁選で石破氏勝利の可能性も広がる。このため、党内からは「首相が秋解散を決断する場合は、選挙後に退陣して両院議員総会の投票で岸田後継を実現する戦略」(閣僚経験者)とのうがった見方もささやかれる。

 梅雨明け間近の永田町は「コロナと解散説での暑苦しさ」(自民若手)が増すばかり。盟友の麻生氏の仕掛けた解散政局に首相がどう反応するのか。それこそが「神のみぞ知る」の実態だ。

東洋経済オンライン

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最終更新:7/4(土) 5:01

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