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フォション破綻報道に驚いた人が知らない真実

7/4 11:20 配信

東洋経済オンライン

 フランスの「FAUCHON(フォション)が破綻した」というニュースが飛び込んできた。

 共同通信は6月26日付で、「130年以上の歴史を持つフランスの高級食料品店フォションは25日までに、パリ中心部にある本社と店舗を運営するグループ企業に関し、商業裁判所へ更生手続きを申し立てたと発表した。事実上の破綻」とする記事を配信した。これを受けて日本の地方紙やテレビ局なども同様の内容を報じている。

 フォションは、日本でもジャムや紅茶などでおなじみの老舗ブランドなので、驚いた人も多いだろう。この文章を書いている私も、「あのフォションが……」と信じられない気持ちになった。思わずニュースをSNSでシェアした人もいると思う。

■「フォション」は本当に破綻したのか

 だが、検証してみると意外な事実が見えてきた。

 フォションは創始者のオーギュスト・フォションが1886年に、パリのマドレーヌ(8区)に店をオープンしたのが始まりで、今や世界的な有名ブランドとなった。パリの本店には、チョコレートやケーキ、ワインやサーモン、フォアグラなどがきらめくように並び、パリの観光スポットとしても知られている。

 日本では1972年から髙島屋が取り扱いを始め、1980年からは同社とのライセンスビジネスがスタート。全国に店舗がある。

 そんなフォションの、今回のニュース。日本の事業を展開するフォションの関連会社に話を聞くと、実際は「フォション破綻」というショッキングな見出しから受けるイメージとはかなり異なっている。フォション自体が経営破綻したわけではなく、内容はこうだ。

 現在のフォションの親会社はGROUPE FAUCHON S.A.。今回ニュースとなったのは、数ある関連会社の1つ、FAUCHON S.A.Sで、まず、親会社の話ではない。

 FAUCHON S.A.Sはパリのマドレーヌ広場にある本店を含む路面店・2店舗を経営しており、この2店(「FAUCHON LA MADELEINE」「FAUCHON PARIS, 24-26 PLACE DE LA MADELEINE」)の運営が、新型コロナウイルスの影響などにより立ち行かなくなったため、FAUCHON S.A.Sがパリの商事裁判所に申請し、2店の運営に関する更生手続を行った。

 さらにいうと、今回の更生手続きは、FAUCHON S.A.Sの全事業のうち、2店舗の運営に関してのみ。この関連会社自体が倒産したわけでもないという。もちろん、親会社も健在だ。

 また、現在フォションは世界中で事業を展開し、パリ、ロンドン、ドバイ、ソウル、東京などにあわせて70店舗以上がある。FAUCHON S.A.Sが運営するマドレーヌの店の売り上げは一部にすぎず、「グループ全体の売り上げの1割」との報道もある。これらが事実なら、「フォション破綻」とはやや大ざっぱと言えないだろうか。そのうえFAUCHON S.A.Sは、2店舗の経営について、着実に再建を図っていくという。

■デモ、ストにコロナが追い打ちを

 それにしても近年、パリの観光地には厳しい風が吹いている。ニュースとなった2店は、パリの中心部、マドレーヌ広場にある。パリ観光の拠点ともいえるオペラ座からも歩けるエリアで、目の前はマドレーヌ寺院。有名ブランドが軒を連ね、普段なら世界中から観光客がひっきりなしに訪れるエリアだ。

 ところが、2015年には同時テロ、2019年には「黄色いベスト運動」(抗議運動)や大規模な公共交通機関のストライキが起きた。その都度、痛手を受けてきたうえに、今年は新型コロナウイルスが追い打ちをかけた。パリの一等地ともいえる観光地にあるからこそのフォション本店の業績悪化は、致し方ないことのようにも思えてくる。

 一方、日本では初めてフォションが髙島屋にオープンしてから48年。日本中に根強い「フォションファン」がいる。全国各地の髙島屋にショップやカフェがあり、その多くは50年近く続いていることから、知名度も高い。今は髙島屋以外の百貨店でもフォションの店舗や商品の取り扱いがある。

■日本橋には「親子3代、フォションのファン」のお客も

 日本橋髙島屋S.C.に話を聞くと「ニュースをご覧になったお客様から電話で数件、フォションの店の今後について問い合わせがありましたが、日本に影響はないとお伝えすると、ご安心いただけました。店舗の売り上げにもとくに影響はございません」とのことだった。また髙島屋の広報・IR室の担当者も「私たちにはまったく影響はありません。フォションの商品供給も従来どおり行われています」と話した。

 フォションはエレガントなパリをイメージさせるブランドで、日本では「FAUCHON」というロゴがデザインされたエコバッグやトートバッグを片手に歩く女性の姿をよく見かける。「日本橋には『親子3代、フォションのファンよ』というようなお客さまが大勢いらっしゃいます。日本橋のお客さまはお気に召すと長年ファンでいてくださるからです」(日本橋髙島屋S.C.)。

 フォションは今、ホスピタリティー業界にも参入している。2018年にはパリのマドレーヌに「FAUCHON L’Hotêl Paris(フォション ロテル パリ)」をオープン、2020年末には、パリに次ぐ2号店となる「フォションホテル京都」のオープンが予定されている。

 日本のフォションに影響はなく、フォション自体が揺らいだわけでもないとわかったが、やはりルーツであるパリ本店が閉まっているのは残念だ。新型コロナウイルスの感染収束とともに、パリの美食の老舗が、再オープンする未来を願いたい。

東洋経済オンライン

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最終更新:7/4(土) 11:20

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