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京都の観光会社がコロナ禍の苦難に見た「糸口」

7/4 8:01 配信

東洋経済オンライン

コロナショックの影響を大きく受けた産業の1つである、観光業界。移動自粛や渡航制限のあおりを受け、観光地からはにぎわいが消えた。近年の訪日外国人観光客(インバウンド)拡大は地域を活性化させ、幅広い産業に経済効果をもたらしていただけに、その喪失は痛手だ。
一方、観光業界では、新たなニーズを掘り起こす動きが、すでに始まっている。NHK大阪拠点放送局が制作する「ルソンの壺」では、7月5日の最新放送回(関西地域で7時45分~8時25分)で、関西企業をリモートで取材し、withコロナ時代を想定した対応や対策について取り上げた。

登場したのはチェルカトラベル、ウエダ本社、ハムス(いずれも本社は京都府京都市)、ミツフジ(京都府精華町)、大阪バス(大阪府東大阪市)、枚方信用金庫(大阪府枚方市)、ナカニ(大阪府堺市)の7社。このうち経済ジャーナリストの三神万里子氏と司会の狩野史長アナウンサーが、京都を拠点として女性客をターゲットにする旅行会社、チェルカトラベルの井上ゆき子社長に聞いたインタビューを、番組本編に収まりきらなかった部分も含めてお届けする。

■国内の団体旅行が減るのは確実

 三神万里子(以下、三神):県境を越える移動が解禁になり、観光需要も少しずつ回復していますが、井上社長は今後をどうご覧になっていますか。

 井上ゆき子(以下、井上):国内のお客様のグループツアー(団体旅行)が減るのは確実です。バスツアーの場合、感染リスク対策の観点からも40人乗りのバスだと半分の20人にしないと催行するのが難しい。当社ではバスツアーがいちばん売り上げに貢献していましたが、これが大きく望めなくなります。

 旅行業界全体でも、今後は個人旅行の手配のほうが中心になるでしょう。もともと旅行会社は、旅行の知識をお客様に提供するというのがサービスの内容だったので、ここに戻っていきそうです。

 狩野史長(以下、狩野):原点回帰ですね。

 三神:国内旅行は中国からの団体旅行客が増える前から、“大箱で団体客”というトレンドから、個のカップル単位や家族単位の“カスタム型”の旅行という流れがありました。

 そのために企画自体も、出発地点で企画する発地型から、着地地点で企画する着地型になっていたのですが、それが仕切り直しになったという印象を受けています。もう1回戻るのか、それとも、バージョンアップした形でこれから展開していくのか、どちらでしょう? 

 井上:戻るという予想はしていません。バスツアーや団体ツアーは、お客様の年齢層が非常に高く、推定で、参加者の年齢層が50歳以上、最年少でも50歳ぐらいの人たちというイメージです。いずれにしても団体ツアーに関しては、ここ10年ぐらいでビジネスとしての寿命を迎えていたのではないでしょうか。

 井上:一方で、個人旅行の増加に対応して、私たちはコンサルティング業に従事していく方向でした。旅行業全体もそのイメージで動いていたのではないかと。コロナの影響で、その動きが加速したと思います。

 狩野:旅行の参加者が少なくなる中で、どうやって収益を上げていきますか? 

 井上:例えば、1軒のホテルに10万円の宿泊予約を頼んだとすると、いったい旅行会社にどれだけお金が落ちるかということは、皆さんご存じないと思いますが、だいたい全部払ってしまう感じです。

 一方で当社の場合は、コンサルティング・相談料金として宿泊料とは別に5000円ほどをいただいて、予約を代行しています。そこには、ただ単に「このホテルを予約して」と言われたから予約をするのではなく、まず選定するところから始まります。

 「今度のお休み、1泊で家族旅行したい」と言われたら、そこで選択肢を絞っていく作業がありますが、それは2、3分で済むはずがなく、何時間もかかってしまいます。下手をすると丸1日かかってしまう。そこに5000円を投じていただくということになりますが、お客様の目からすると、10万円の宿泊に5000円の手数料を払うのは高いと感じていたのが、これまででした。今後は、それを高いと感じさせないサービスの展開をしていかなければなりません。

 三神:例えば? 

 井上:窓口で接客する担当者は、宿泊場所やホテルを実際に体験しないで、何となくのイメージで販売することがほとんどです。それを本当に熟知して、その周りの環境や観光も含めた形でトータルコーディネートして販売する。そうすることで、お客様に価値をわかっていただけるようになると見込んでいます。

■特徴的な“貸し切り”で密を避ける

 三神:宿泊を提供しているホテルや旅館の経営者の目線になると、密を避ける必要があるため、旅行客をたくさん受け入れられません。

 井上:“貸し切り”は具体的なテーマです。大型のホテルを貸し切ることは非常に難しいので、大体5部屋から10部屋ぐらいの旅館やホテルに対して、お1人様ごとに、1人部屋という設定をした状態で、“女性に限定したツアープラン”を検討しています。密を避けられるし、女性1人なので安心です。

 三神:チェルカトラベルは、旅の動画をライブ配信するオンラインツアーを始められたそうですね。

 井上:現在、無料で配信しています。

 三神:これは収益化できるのでしょうか。

 井上:私たちは“ど素人”なので、カメラワークがこなれていなかったり、音声などに不具合があったりするんですね。そのため今は有料化できず、無料にしているという事情があります。

 井上:とはいえ、今後は、ツアーごとに有料化する仕組みも検討しています。例えば、普段は人目に触れない秘仏を祭っていたり、拝観のタイミングが限定されていたりするようなお寺を拝観させてもらって、それをライブで有料配信するようなアイデアです。

 今、いろいろな企業に現状とこの先の展望をインタビューして、それも配信しています。

 インタビューの際には、「この先、何か展望や明るいお考えを前面に出してほしい」という条件をつけて、それをはっきり伝えることができる企業に出ていただいています。お店の商品の販売やコマーシャルもしています。販売できたら、そのお店から多少のコミッションをいただいており、集客につなげることができています。

 今まで顧客ではなかったお客様が、このオンラインツアーのホームページを見て、「ぜひ京都旅行をお願いしたい」と言っていただけるようになりました。

 三神:リアルとオンラインの両方をやってみて感じたことは? 

■オンラインツアーは面白くなければ離脱する

 井上:リアルのツアーは、最初から最後まで旅行会社がコースを決めて、そのとおりにお客様がついて行くというイメージがありますが、オンラインツアーに関しては面白くなければ途中で離脱ができます。つまり顧客が定着するかどうかをすぐに把握できます。

 三神:マーケティング調査にも利用できますね。リアルのツアーだと、恥ずかしがり屋の日本人は、挙手して質問などを滅多にしないのに対し、オンラインツアーの観光では、どんどん質問が上がってくるのではないでしょうか。

 井上:はい。気軽に意見をくださることは非常に有難いです。楽しんでいらっしゃることがじかにわかるので、励みになります。

 今はオンラインツアーが始まったばかりなので、皆さんはこのシステムを楽しんでいるというのが現状です。これをいかに続かせるかというのが、今の課題です。

 三神:ウェブだけで集客することは難しいと思います。

 井上:今、京都を紹介するしか旅のツールを利用することができないため、改めて京都を見る機会が増え、まだまだ知らない京都の魅力的なところをたくさん発見しました。私たちでさえそうなので、県外のお客様の中にはもっと京都を深掘りしたいと思う方がいるかもしれない。そこを追求して京都の魅力を広げていき、有料のライブ配信につなげていきたいと考えています。

 狩野:観光のプロでも知らないような、新しい場所の掘り起こしをされていますが、どのように見つけているのですか。

 井上:京都での横のつながりを利用しようと思い、周りやご年配の方に聞いてみたりしました。今まで余りにも広かったせいで見えていなかった部分が、今、コミュニティーが狭まっている分、深掘りでき、そこで拾った情報が非常に有効になっています。

■京都のお店やバスガイドとも連携

 三神:京都のお店やバスガイドさんとも連携されていますね。

 井上:今、バスガイドさんが非常に暇を持て余していると聞きました。バスガイドさんは、つねにお話する仕事なので、話ができなくなると舌が回らない。記憶もどんどん薄れてしまうので、何かこれを生かせる方法がないかと考え、オンラインツアーでぜひ披露してもらおうということになったのです。

 今、私たちのオンラインツアーの中ではたぶんいちばん人気があります。

 三神:例えば、老舗呉服店の店主の方や舞妓さんなど、京都ならではの方にツアーのご紹介をいただくというようなことも、切り口としてありそうですね。

 井上:そうですね。京都は非常に閉鎖的な部分があり、老舗と言われるお店はなかなか入りにくいことが多いのですが、こういう状況になったことで、今後は少しずつ出していこうという気にもなっていらっしゃいます。

 私たちは京都に住んでいることもあり、話をしていただきやすい環境にはなっており、それは非常に得をしている場面だと思います。

 三神:地元ならではですね。

 (構成:二宮 未央/ライター、コラムニスト)

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最終更新:8/7(金) 10:17

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