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悩めるビジネスマンに勧めたい「第3の思考法」

7/4 7:50 配信

東洋経済オンライン

人工知能(AI)の台頭や新型コロナウイルスの脅威など、先が見えない時代。私たちは日々、複雑さを増すビジネスや生活でベストな意思決定をすること、そして人間の最高の知性である創造力を発揮することが問われています。
経営脳科学者の影山徹哉氏は、近著『Third thinking ~無意識思考~ 最先端の脳科学・心理学研究が証明した“最強の思考法”』の中で、「無意識思考」を活用することがこの時代を生き抜くために必要だと指摘します。

■最新の脳科学が見出した「無意識思考」

 人間の思考については長年、心理学をはじめとして、とくに「行動経済学」の分野において研究がなされてきました。

 ノーベル経済学賞を受賞したアメリカの行動経済学者ダニエル・カーネマンは、人間の思考には「直観(速い思考/システム1)」と「論理(遅い思考/システム2)」の2つがあるとしました。私たち人間は意思決定の対象が何であるかに合わせて、最もよい決定ができるように、これらを使い分けているというのです。

 さらに近年、これら2つの思考法に加えて、「第3の思考~Third thinking(システム3)」が最先端の脳科学・心理学研究において提唱されるようになりました。この第3の思考によって、現代社会で頻繁に直面する、複雑で難しい意思決定において最善の選択ができるようになり、創造性もアップすることが多くの研究で示されてきました。

 これこそが今回ご紹介する「無意識思考」です。端的に説明するなら、「課題に対して意識的な注意が向けられていないときの思考」という意味になります。思考していることすら気がつかない。それゆえ、無意識思考と呼ばれるのです。

 私たちは認識していないだけで、実はこの思考法を日常的に利用しています。

 例えば、新企画の構想を練るために何時間もかけて情報を集め、検討したのに、なかなかいい案が思い浮かばない。いったん切り上げて家に帰り、お風呂につかってゆっくりしていたら、不意に名案が思い浮かんだ。このような経験はありませんか。

 帰宅途中も、お風呂につかっている間も、脳は無意識に新企画について思考しています。私たちが気がつかないだけで、脳は新企画について思考し続けているのです。このような思考を「無意識思考」と言います。

 有名な心理学者のジークムント・フロイトは次のような言葉を残しました。

 「ささいな意思決定をするときは、長所と短所をすべて考慮したほうがよいとわかっています。しかし、パートナーや職業選択のような重要な選択になると、意思決定は自分自身のどこかから、無意識からくるかもしれません」

 フロイトの言う後者の思考法こそ、無意識思考なのです。当時は残念ながら、無意識思考の解明までは科学技術が進歩していませんでした。ところが、脳科学・心理学の急速な進展に伴い、私たちが無意識に思考しているという事実が次々と明らかにされています。

 無意識思考を使うことによって、採用試験や結婚相手などの選択の場面で人の本質を見抜くことが可能となります。ビジネスでは、顧客の要望にきちんと応えられるようになるでしょう。

■歴史上の偉人たちも活用してきた

 「無意識思考」と「論理(遅い思考/システム2)」――。限られた情報から正確な判断をしたり、単純な選択を行ったりするときには、「論理(遅い思考/システム2)」のほうがよい選択ができることは、実験でも証明されています。

 一方、複雑な選択を行うときには、扱える情報処理の量が格段に大きい無意識思考のほうが、正確な選択をするのに向いています。

 そして、AIでは代替できない、創造力を発揮することができるようになります。ひいては、人の「隠れた能力」を開花させ、発明・発見によるブレークスルーも起こせるようになるかもしれません。ビジネスにおいて「隠れた能力」を開花させるとは、わかりやすくいえば、類まれなアイデアを生み出せるということです。

 例えば、折れたら使えなくなる傘を、あえて折って持ち運びしやすくした折りたたみ傘が登場したときのように、小さな変化で世の中を大きく変えるイノベーションを生み出すことも夢ではありません。

 35年という短い生涯の間に、1000曲に近い名曲を世に送り出したオーストリアの天才音楽家モーツァルト。

 バレエ音楽『白鳥の湖』をはじめとして、誰もが聞いたことのある名曲を数多く残した、同じく天才的音楽家と名高いロシアのチャイコフスキー。

 数学者、物理学者、天文学者として数々の偉業を成し遂げ、特に「トポロジー」という新しい数学の概念を発見し、「ポアンカレ予想」を提言したことで知られフランスの数学者アンリ・ポアンカレ。

 多くの偉人は無意識思考を使っていると思われるエピソードが残されています。ソニーの創業者である盛田昭夫氏もその一人です。盛田氏の言葉をご紹介しましょう。

 「機械やコンピューターには創造はできません。創造には、既存の情報処理以上のものが必要だからです。人間の思考、ひらめき、そして多くの勇気が必要なのです」

 そうです。盛田氏は、機械的な情報処理では創造はできない、とはっきりと言っています。そのうえで、既存の情報処理以上の何か、つまり既存の認識を超えた、無意識的な人間の思考やひらめきといったものが必要であると断言しています。

■どうすれば上手に使えるのか

 アイデアなどが突然浮かんだ場合、無意識思考という存在を知らなければ、「直観(速い思考/システム1)」という言葉に集約されると考えられがちです。ただ、直観的に思い浮かんだアイデアは、実は無意識的に思考し続けたことによって浮かんだアイデアであったりします。

 では、どうすれば「無意識思考」を使いこなすことができるのでしょうか。それには、以下の3つのポイントがあります。順に説明していきましょう。

トリセツ① 「起動」させる時間が必要
 無意識思考を使いこなすために、何が最も重要なのか。それは、無意識思考を「起動」させるための時間を作ることです。

 実はこれが意外と難しいのです。私たちは、何かを決めたりアイデアを生成するとき、直観的に素早く考えたり、意識的にじっくり考えたりすることに慣れてしまっています。

 注意を問題の対象から外していても、気づかないだけで、私たちの無意識が思考し続けてくれています。そのための時間を確保することが必要です。

トリセツ② 他の何かに注意を向ける
 無意識思考を起動させるためには、問題とは関係のない対象に、注意を向ける必要があります。

 文字どおり、無意識思考は無意識に起こるもの。しかし、意識的な注意がまったく不要というわけではありません。

 無意識思考を行うためには、問題の対象とは違う“何か”に、意識的に注意を向けなければいけないのです。それも、あまり難しいことではなく、好きなこと、楽しいことをやったほうが得策です。

トリセツ③ 目的を明確にする
 無意識思考を無意識に行うためのトリガーとして、意識的に「目的意識」を持っておく必要があります。単に情報をつめこみ、放っておけば、勝手によい選択、よい結果がひらめくというわけではありません。

 自分は何を決めなければならないのか、という点が明確になっていないまま、無意識思考を行おうと別のことに従事する時間を確保したところで、無意識思考は始まりません。よい結果を導き出せず、ただ時間を消耗するだけになってしまいます。

 無意識思考を起動させるためには、「何について考えるか」という目的意識を、自分自身が明確に持っておくことがとても重要なのです。

■無から有は生まれない

 ここで1つ、みなさんが誤解しがちな点について、ご説明しておこうと思います。

 無意識思考について説明をするときによく言われるのが、「無意識に思考しているというより、単に注意をそらされて、新たな気持ちで選択に向き合うことで、よい選択ができているだけなのでは?」という疑問です。

 例えば、新しい企画について考えてもアイデアが湧かないようなとき、デスクを離れて、コーヒーブレイクを挟み、気分を一新して仕事に戻ると、いいアイデアが次々と湧いてきたというような現象は、実際によくあることです。これは心理学で「セットシフティング」、または「フレッシュルック」と呼ばれます。

 しかし、この現象と無意識思考が明確に異なるのは実験でも証明されています。

 無意識思考では、「思考」が実際に起こっているのは間違いありません。もちろん、無意識思考を行うための情報は事前に頭に入れておく必要があります。いくら無意識思考を使ったところで、無から有は生まれません。

 目的を明確にし、情報を十分に入れておけば、あとはほかのことをしているうちに、自ずと無意識思考が最善の選択をしてくれる。まさに「果報は寝て待て」というわけなのです。

 無意識思考は誰にでもできます。複雑な意思決定で最善の答えが出せる、そして斬新なアイデアを生む究極の思考法。それが、無意識思考なのです。

東洋経済オンライン

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最終更新:7/4(土) 7:50

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