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絵本の読み聞かせが親子に大事な時間となる訳

7/4 8:05 配信

東洋経済オンライン

 ドロシー・バトラー『クシュラの奇跡――140冊の絵本との日々』という本をご存じでしょうか。障害を持って生まれたクシュラが、絵本の読み聞かせによって、豊かな世界に開かれていく、感動的なプロセスが描かれています。

 絵本の読み聞かせには、とてつもない力があります。 現代は変化の激しい時代です。

 新型コロナウイルスの世界的流行のような予測不能な事態も起こります。
知識を着実に身に付ける伝統的な学力とともに、変化に対応できる柔軟な新しい学力が必要になってきています。

 一言でいえば、「本当の頭のよさ」です。

 これは、自分の足で立って、自分の頭で考え、自分の手で幸せをつかみに行く力です。

 私は教育を研究してきた者として、子どもたちがどうしたら、変化の時代を強く生き抜けるかについて考えてきました。

 変化に強いとは、変化に対応するしなやかさを備えているということ。
新しいことに1歩を踏み出す勇気と判断力、同時に、どんな社会になろうとも、人間社会である以上、協調性やコミュニケーション力は必須です。

 他者に対する優しさ、思いやり、また、学力の基盤となる国語力、読解力はすべての力の源となります。

 どんなに社会が変化し、価値観が変わろうとも、自分の力を発揮して生きていける、明るくたくましく、世を渡っていける子=本当に頭のいい子を、どう育てていけるか。

拙著『1日15分の読み聞かせが本当に頭のいい子を育てる』でも解説していますが、そのカギは、幼児期の7年間をどう過ごすかだと、私は考えています。

 いろいろな早期教育が流行していますが、私は絵本の読み聞かせこそ、幼児教育の中心に据えるにふさわしいものと考えています。

 本当は1日30分の読み聞かせを推奨したいところですが、習慣化がより大事なので、毎日の15分をオススメします。

■幼児期は子ども時間の流れに身をまかす

 「7歳までは神のうち」という古くから伝わる言葉があります。

 生まれてから7歳になるまでの子どもは「神さまから預かりもの」という意味です。

 そこには「神さまのように大切な存在」であり、さらに「まだ神さまに近いため、いつ神さまの元に戻る(亡くなる)かわからない“儚い”存在」だという意味もあります。

 その昔、医療が発達していない時代、子どもが生まれても幼くして病気などで命を落とすケースは決して少なくありませんでした。それを、「預かっていた子どもを神さまにお返しした」と捉えていたといいます。

 7歳まで無事に育った子どもは、そこでようやく人間の世界にしっかりと命の根を下ろすのだと。

 子どもにとって、いえ人間にとって、「7歳」という年齢は人として生きていくための大きな節目、境目だと考えられていたのです。

 現代社会においても、子どもがちゃんとした人になるための節目は「7歳」頃、つまり小学校入学のあたりにあると私は考えます。だから小学校に上がるまでの、0歳から6歳くらいまでの時間はギフトのような時間として考えるとよいのではないでしょうか。

 そこでは、忙しい大人たちの時間とは違う、密度の濃い子ども時間が流れています。 大人は、つい、ものごとを効率で考えてしまいがちです。

 そのため大人と同じように、「時間どおりにできる」「早くできる」「効率よくできる」ことを成長と考え、つい「早くしなさい」「いつまで○○してるの」「急いで」と子どもを追い立ててしまいがちです。

 確かに、「ものごとをテキパキできる」ことは大切で、いずれ子どもが身に付けなければいけない素養ではあります。

 でも、それは小学校に入ってから始めるくらいでちょうどいいのです。

 小学校までは、いかに心豊かに過ごせるか。そちらを優先したほうがいいのです。

 大丈夫。

 「ゆったり」と豊かに心が育っていれば、「テキパキ話す」「テキパキ食べる」「テキパキ支度をする」は後からちゃんとついてくるものです。ある時期を迎えると、子どもは途端に成長するものなのです。

 それまでは、「ほかの子の2倍時間がかかる」でもまったく問題ありません。

 むしろ、子どものゆったりのんびりペースに、時間が許す限りは、親御さんが合わせてあげてほしいのです。

 できるだけ子どものペースを尊重する。

 そして同じペースを親もいっしょに楽しむ。

 そうすれば、子どもも追い立てられるような気持ちを持たなくて済みます。子ども時間を存分に過ごすことができるのです。

 絵本の読み聞かせは、なかでも、親と子がいっしょに過ごす貴重な時間です。

 読み聞かせのときに早口になる人はいません。

 ゆっくり、ゆったり伝わるように、絵本の世界を親子で共有します。

 それは、そのときしか成り立たない大切な贈り物の時間なのです。

■“目覚めたまま見る夢”の効用

 子どもにとって絵本を読んでもらっている時間は、ふんわりとあたたかくてやわらかい布団のなかで半分夢を見ているようなもの。絵本がもたらしてくれる“目覚めたまま見る夢”のなかで、子どもは確実に成長しています。

 読んでいる途中で「う~ん」と何かを考え込んだら、答えを急かさずにゆっくり次のひと言を待つ。もう一度見たいページを探し始めたら、見つかるまでいっしょに探す。

 あくまでも子どものペースで。

 子どもはそうした時間に、力を蓄えています。

 植物はある日突然芽を出します。種を蒔いたことを忘れてしまうくらい、長い期間、土のなかで必要な水分と養分を吸収した種は、準備が整った瞬間、ヒョッコリと芽を出します。そしてにょきにょき生長を始めます。土のなかでじっとしている時間は、何も起きていないように見えて、大きなことが起きているのです。

 時に、もどかしく感じられるものですが、まずは親御さんがどっしり構えて、とにかく、子どものペースを守ってあげることです。

 子ども自身の時間を過ごすことが、その後の成長の糧となります。 親子が1つの絵本を見る。

 同じ言葉に触れて、同じ絵を見て、同じ物語の世界に身を置く。

 そこで生まれる感情を分かち合う。

 絵本の読み聞かせは親子に、密度の濃いコミュニケーションをもたらします。

 子どもが、迷子になった主人公になりきって困っていたら、「困ったね。どうするのかな」と声をかける。それだけで子どもは「お母さんも同じ気持ち」と心のつながりを感じとるもの。

■気持ちのつながりを持っていたかどうか

 こうした気持ちのつながりの確認が、子どもの生きる力を育てます。
大人になって「ここぞ」というときに踏ん張れる力を発揮できるかどうか。

 これには、幼児期にこうしたつながりを持っていたかが関わっています。

 誰かと確実につながってきた感触は、幹となってその後の人生を支えます。物語の内容だけでなく、絵本を読んでくれる声からも、抱っこされている肌の温もりからも、子どもは親の愛情を感じとります。

 読み聞かせは子どもを絵本の世界に導くためだけのものではありません。

 親子が互いに愛情を伝え合い、触れ合うための時間なのです。

 だからこそ、「絵本を読んでもらった幸せな時間」は、子どもにとって何ものにも代えがたい財産になるのです。

東洋経済オンライン

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最終更新:7/4(土) 8:05

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