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障害者雇用で「胡蝶蘭ビジネス」を成長させた経営者の原点と目の付けどころ

7/3 21:00 配信

LIMO

新型コロナウイルスによる需要激減という難局を、新たな方法で乗り越えた社会起業家がいます。そのユニークな経営スタイルには、一般企業がまだ見落としているストックビジネスへのヒントがあふれています。

今回は、「障害者雇用」という社会課題を胡蝶蘭ビジネスで解決することを目指している、NPO法人AlonAlon(アロンアロン)の那部智史代表に、事業を継続的に成長させるポイントを聞きました。

売上400億円の事業を棄ててゼロからの道を選んだ理由

胡蝶蘭といえば、開店やオフィス移転などの贈答花の定番品として、私の本業である不動産業界でも欠かせない贈り物です。

時代の変遷に伴いリアル店舗の花屋さんからインターネット上の花屋さんへと発注先は変わりましたが、だいたい25,000~50,000円という価格帯の胡蝶蘭をお贈りすることが多かったと記憶しています。

特殊なニッチ市場かもしれませんが、社会儀礼として認知され、しかも花としては高価格帯の胡蝶蘭マーケットには「不思議な商売だな」という疑問もあり気になる存在でした。

大竹:そもそも社会福祉事業は儲からないというイメージなのですが、まずはこの事業を始められたキッカケを教えてください。

那部:実は、一人息子が重度の知的障害を持って産まれてきたんですね。そんな中で、周囲から「かわいそう、かわいそう……」と言われて、自分がうつ病気味になってしまいました。

そして、この苦しみから逃れるにはどうしたら良いかと考えたんです。当時は20代と若くて、今思えば短絡的ですが「お金持ちになれば良い、そうしたらうらやましがられる」という結論になったんです(笑)

そこで、3人でネットベンチャーを起業。時代も良かったんですが、売上400億円・従業員100人規模まで順調に事業を拡大して、40歳で上場企業に売却しました。

大竹:そこまで順調な事業をどうして売却したんですか? 

那部:息子が障害者であるということへの穴埋めとしてぜいたくをしていた面があって、そのことに気づいて虚しくなったからですね。40代になって、息子の障害がNGなわけではなく、それに対応できていない社会がNGだと気づいたら、会社が必要なくなっていたという感じです。
 
そして売却益を原資に不動産業を本業として1年取り組み、家賃で食べていけるだけの収入を確保しました。その後、ご存知の通り大家さんはヒマですから「息子のような人をハッピーにしたい」と色々と考え始めました。

オフィス拡大時の贈り物からビジネスヒントを得る

大竹:最初から胡蝶蘭をビジネスにしようと思っていたんですか? 

那部:ベンチャー経営者時代のことですが、事業が順調に拡大していったので、オフィスが大きくなるたびに取引先から山のように胡蝶蘭が会社に届くという実体験がありました。秘書がまとめた「YY会社様:◯万円/ZZ会社様:□万円」というリストが机にポンと置いてあるんです。

大竹:それがビジネスのヒントに? 

那部:はい。当然ながら相手先にお祝い事があれば、頂戴した金額に見合った返礼をする……という社会儀礼として循環する流れになっていますので、この往復ビンタみたいなビジネスに息子のような障害者が関われれば良いなというイメージはありました。

しかも、お祝い事ですから当然値引きも求めない。胡蝶蘭が並んだ時に他社より貧相だと恥ずかしいしいので、しっかり予算を掛けてより良いものを贈る前提があるので価格競争に陥らない要素もある。

大竹:往復ビンタとはおもしろい(笑)。それで、胡蝶蘭の栽培には何か関りがあったんですか? 

那部:いや、今でも栽培はできません! (笑)

参入する市場を自分の目で確かめる

大竹:その状態でいきなり参入したんですか? 

那部:まずは、自分自身も売ることが好きなこともあって、大手電機会社の特例子会社で軽度の障害者が生産していた胡蝶蘭を営業マンとして販売してみました。

自分にノルマを課して年間5,000万円販売したら自分たちで栽培しようと決めて頑張り、4年目でそれを達成しました。

大竹:確実な市場調査ですが、想像よりも長い時間をかけてマーケット特性を見極めたんですね。

那部:売る出口がなければ栽培しても意味がないと考えてましたね。

大竹:たしかにマーケットの中で自分の立ち位置に確信がなく踏み出せばリスクが高いですが、事業の組み立て方に経営センスを感じます。

那部:社会人になって営業職しか経験ありませんし、売ることが好きなんです。

障害者雇用の現実~平均工賃は月額15,000円

大竹:事業を進めるうえで大切にしていることがあれば教えてください。

那部:常に障害者の雇用を生むことを考えて事業を進めています。一般に「B型事業所※」と言われる施設の平均工賃は月額15,000円です。

※B型事業所:障害や難病のある方のうち、年齢や体力などの理由から企業等で雇用契約を結んで働くことが困難な方が、軽作業などの就労訓練を行うことができる福祉サービスを就労継続支援B型という。雇用契約ではないため、賃金ではなく、生産物に対する成果報酬の「工賃」が支払われる。

大竹:恥ずかしながら今まで障害者の雇用状況について何も知りませんでしたが、月額15,000円ですか…。最近、社会起業家が注目を集めていますが、現実的には多くの事業が赤字と聞きます。ビジネスと社会貢献のバランスは難しいと思うんです。

那部さんは、本当にやりたいことや実現したい未来と事業とをどのように均衡させて運営するか、考えは当初からあったんですか? 

那部:まず、社会課題の解決はビジネスのタネの宝庫だと思っていますね。数字的な面からお話ししますと全国で約11,000カ所の事業所がありますが、うちの月額10万円という工賃は全国トップクラスです。

そして、日本の胡蝶蘭市場は330億円という規模があります。先程の工賃が月額15,000円というのも変ですし、法定雇用率を守れている企業が半分以下ということもどう考えてもおかしい。B型事業所の雇用率が1%だということも含め、全て社会課題です。

そこで、これらの現実を変え、理想に近づけるために市場の何%を確保すれば良いのか? と考えました。

大竹:どれくらいになったんですか? 

那部:市場の30%で、売上としては100億円を目標としました。

* * * * *

胡蝶蘭の生産も販売もまったく素人だった那部代表が、困難と思われた福祉事業の自立と持続化、そして一般企業でさえ難しい成長を遂げられたのはなぜか。次回は、那部代表が打ち出す驚愕の差別化戦略をお伝えします。

後編:『”どこから買っても同じ”胡蝶蘭ビジネスを差別化できた「障害者雇用・社会貢献」のストーリー』

LIMO

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最終更新:7/17(金) 17:15

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