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仲介業者はどんな基準で投資家に物件を紹介している?

6/5 11:00 配信

不動産投資の楽待

不動産投資家に収益物件を紹介する仲介業者は、物件のどのような部分をチェックして良し悪しを判断しているのだろうか。それは、不動産投資家が見るポイントと違いがあるのだろうか。

今回は元不動産仲介業者である筆者が、投資家に物件を紹介する前にチェックするポイントや資料について解説する。主に初心者の人たちが、仲介業者の考えを理解するきっかけにつながればと思う。

■利回りとレントロール

収益物件を扱っている仲介業者は、物件に一定以上の収益性が確認できればすぐにでも顧客に紹介したくなる。

逆に収益性がないと判断したような物件でも、元付け業者との今後の付き合いのために顧客に紹介するケースはある。その場合は「エリア的に家賃下落リスクが高い」「現況が悪くリフォーム費用がかさむ可能性がある」などと問題点を正直に伝え、そのうえで収益性を改善できそうな方法を提案して顧客との信頼関係を保つよう努めることが多い。

しかし、どうやっても収益が望めないような物件は初めから顧客に紹介しない場合もある。

仲介業者が収益物件の情報を見るときの指標としては、まずは「表面利回り」と「レントロール」がある。表面利回りの基準はもちろんエリアなどによっても異なるが、筆者の場合、収益物件を顧客に紹介する際は新築で4~7%、中古で10%以上を1つの目安にしていた。

レントロールには入居者や賃料などの情報が一覧で記載され、現在の空室状況や収支などを知ることができる。ただし、元付け業者から渡されるレントロールの中には支出の部分が記載されていない場合もあるため、実質利回りを知りたいときは元付け業者から売主へ確認してもらう必要がある。

投資家視点で考えれば、利回りとレントロールの数字を見るだけではなく、物件が所在するエリアの賃貸需要や出口となる売却価格の相場観などをつかむために、エリア内の物件情報を見て比較することが重要といえる。

■5つの資料

仲介業者が顧客に物件を紹介する前に入手しておく資料としては、主に以下の5つが挙げられる。

【1】物件概要書
物件概要書には、対象物件の所在地をはじめ、土地面積や用途地域、法令上の制限などの情報が記載されている。

収益物件は容積率が建物の規模に影響する場合があり、それによって部屋数や賃料収入も違ってくる。そのため収益物件を扱う仲介業者は特に用途地域や容積率を気にすることが多い。例えば顧客に対して一棟マンションの新築を提案をしたいときに、容積率が200%では顧客が希望する規模の建物が建てられない場合、敷地面積を大きくするために隣地を地上げしなければならず、手間と時間だけがかかってしまうことがある。

参考記事:1枚の「物件概要書」でどれだけのことがわかる?

【2】地図
対象物件の地図は、一般的な住宅地図、例えばゼンリン住宅地図などの境域地図が使用されている。物件所在地が一目で分かるようにマーキングをしているものが一般的。

地図では道路付けや周辺施設などを確認しておきたい。物件の敷地と前面道路との位置関係やおおよその幅員、物件の間取りがファミリー向けであれば近隣に小学校や中学校はあるかどうか、など。もし病院や消防署などが近くにある場合は、緊急車両の出入りによる騒音リスクなどにも注意しておきたい。

【3】レントロール
前述したように、レントロールは各部屋の賃料や入居者氏名、敷金、駐車場の賃貸借状況、賃貸借期間などが記載されている。管理費や修繕積立金、設備維持費といった支出となる部分も一緒に記載されている場合が多く、収益物件の年間収支が分かる。

例えば各部屋の入居時期や家賃にばらつきがある場合、古い入居者の家賃が高く設定されていることがあり、最も安い家賃に引き直して実際の収支を計算することが必要になる。また、入居月が繁忙期以外になっている部屋が多ければ、入居者が少ない時期に競合に勝てる需要の高い物件、といった判断につながることもある。

なお、仲介業者は「虚偽入居」や「家賃のばらつき」などについての裏付けとるために、「賃貸借契約書」の写しをもらって売主と各入居者との契約内容を確認するケースもある。個人投資家が確認する場合は、売主や仲介業者によっては賃貸借契約書の写しをもらえないことがあるかもしれないが、契約内容は確認させてもらえる場合が多い。

参考記事:デキる投資家は「レントロール」のココを見る

【4】建物図面
建物図面とは、建物の位置や形状などが示された図面のこと。各階における平面の形状や床面積などが記載された「各階平面図」とセットになっていることが多い。建物図面と各階平面図は法務局で誰でも取得することが可能だが、すでに元付け業者が持っていることが多く、その場合は紙ベースやPDF形式のデータでもらうことができる。

建物図面には建物から隣地までの距離も記載されているので、隣地との距離に問題はないか、敷地内における建物の配置は適切か、などを確認しておきたい。

【5】固定資産税評価証明書
固定資産税評価証明書には土地・建物の評価額が記載されており、評価額を基に対象物件の実勢価格が算出できるため、ざっくりと売買価格が適正かどうかの判断基準になる。実勢価格は固定資産税評価額を70%で割ることで大まかに算出可能で、例えば中古一棟マンションの土地・建物を合わせた評価額が3500万円の場合、3500万円÷70%=5000万円がおおよその実勢価格となる。

ただし、対象物件があるエリアの不動産市場によって売買価格は変動するため、評価額から算出した実勢価格が必ずしも売却の適正価格というわけではない。

■物件の重要事項をチェック

物件の重要事項は元付け業者に確認することもできるが、仲介業者によっては顧客へ紹介する前に自社で確認しておくところもある。元付け業者と客付け業者との関係性によっても異なるが、不動産取引における重要事項は他人任せにせず自ら確認することを基本としている業者が多い。

とはいえ、まだ物件を顧客に紹介するだけの段階なので、確認内容や方法は簡易的。物件の主な確認事項は以下の通りだ。

■前面道路の状況
対象物件の敷地と前面道路の状況、例えば前面道路の接道状況や幅員、公道か私道か、といった内容をチェックしていく。基本的に道路状況は道路台帳を見れば把握できるが、都市計画道路や土地区画整理事業の対象地域内になっているなど不明点があれば、直接役所の都市計画課や道路管理課などで確認する。

■土地の切土・盛土
国土交通省が運営する「国土地理院」のWebサイトから、対象物件の所在する土地が「切土」または「盛土」によって造成されているかどうかをざっくりと確認できる。

参考:国土地理院「ベクトルタイル地形分類」

調べたい住所をサイト上部にある検索窓に入力し、地図を拡大すると切土地や盛土地が色分けで表示される。色がついた箇所をクリックすれば、土地の成り立ちや自然災害のリスクなど簡単な説明書きも見ることができる。

仲介業者が顧客へ紹介する段階では、土地の人工造成について神経質になることはないが、ざっくりと切土や盛土のリスクについて説明するケースがある。例えば「盛土地」や「埋立地」の自然災害における地盤崩壊・液状化のリスクだ。ただし、細かい人や神経質そうな顧客に対しては買付証明書(不動産購入申込書)をもらうまで詳しく話さないこともあるため、投資家は上記サイトを見て自分でチェックしておきたい。

■埋蔵文化財包蔵地
切土・盛土と同様に、埋蔵文化財包蔵地についてもWebサイトで確認可能だ。例えば仲介業者が顧客へ紹介する収益物件が築古だった場合は、顧客が建物の建て替えを希望する可能性がある。そのため物件の敷地が埋蔵文化財包蔵地に指定されていないかどうかを事前に確認しておく。投資家としては、念のため自分で調べておくのもよいだろう。

■仲介業者が「やりにくい」と感じる売主

不動産は売主が1人ではなく複数で共有している場合もある。対象物件の登記簿謄本を見れば所有者が確認できるのだが、いざ売買契約をするときになって共有名義人の署名捺印がなかなか揃わないときがある。

例えば、名義人Aは対象物件のエリア内に居住していて連絡がつきやすい状況にあったとしても、名義人Bは遠方に住んでいるため手続きに時間を要する、といったケースだ。そのため、もし所有者が複数いる場合は取引の交渉や契約などがスムーズにいくかどうかが重要になってくる。

仲介業者は自分の顧客と売主との取引をうまくまとめるのが仕事なので、売主の状況はできるだけ把握しておきたい。例えば、売主と連絡がつきやすい時間帯はいつごろか、物件の売却に積極的か、指値は可能か、といった内容を元付け業者に確認する。

仲介業者が「やりにくい売主」と感じる相手もいる。例えば、一切値下げに応じない、固定資産税評価証明書やランニングコストが分かる詳細資料などをなかなか用意してくれない、複数の共有名義になっていて所有者全員と連絡がとりにくい、といったケースだ。

投資家が売主の状況を把握したいときは、仲介業者に売主がどんな人で普段は何をしているのか、それとなく聞いておくとよい。売主の住所や共有名義人などについては登記簿謄本で確認できる。

■3つの設定価格

仲介業者は、顧客に紹介する収益物件の値下げ幅を事前に知っておくために、元付け業者へ確認する。自社が元付け業者である場合は、売却価格を設定する際にあらかじめ売主に値下げ可能な限界価格を聞いておくことが多い。

ただし、仲介業者と顧客の状況によって異なるが、いきなり値下げの限界価格で顧客から買い付けをもらうようなことはほとんどない。なぜなら、他社が2番手でもっと良い条件の買い付けを入れてしまうと自分が不利になることがあるからだ。

ちなみに売却価格を決める際には、「売り出し価格」「現実価格」「下限価格」の3つを設定することがある。売り出し価格とは、仲介業者が行った査定価格をベースにしながら、売主が希望する金額も考慮して決めたもの。

現実価格は、固定資産税評価額や路線価、過去に成約した取引相場などを基に実勢価格を割り出して決めたもので、一般的にはこれが仲介業者の査定価格となる。

下限価格とは、言葉の通り、売主が納得して売却できる最低価格のこと。この下限価格を下回ってしまうと、売主は物件を売る意味がなかったり、売ることをやめてしまう可能性もある。

売却物件は、こうした3つの価格設定をしたうえで売りに出しているケースが多いため、客付け側の仲介業者はあらかじめ値下げ可能な幅を確認してから顧客に紹介することがある。

■限界価格の指値はリスクが伴う

実際にあった事例を紹介したい。4000万円で売却に出ている中古一棟アパートを、仲介業者Aが売主と交渉して値下げ限界価格の3200万円で顧客から買い付けをもらい、売主に提出した。しかし、その後に仲介業者Bが3800万円の買い付けを2番手で入れたため、売主は仲介業者Bの顧客と契約をすることにした。

仲介業者Aとしては、顧客に「3200万円の指値でいけます」と言ってしまった以上、いまさら「やっぱり3800万円以上でお願いします」とは言いにくいし、顧客も納得しない。

こうしたケースから分かるのは、投資家が欲しがるような物件には2番手・3番手の買い付けが入る場合があるため、安易な指値では買い付けを入れにくいということ。当然ながら、投資家は収益物件をできるだけ安く買いたい。しかし仲介業者としては、他社と競合する可能性があるため、値下げ限界価格で指値を通すにはリスクが伴うのだ。

投資家が収益物件の価格交渉をするときは、まず現時点での買付状況を確認しておき、「この価格なら利回りが○%上がるから銀行融資の承認が出る」といった理由付けをしながら指値をしていくことが重要になる。

■仲介業者の視点を理解する

紹介してきた通り、仲介業者が収益物件を見る際は主に利回りやレントロールの確認から入る場合がほとんどで、良し悪しの判断基準が個人投資家と大きく異なっているわけではない。

ただし仲介業者の場合は、坪単価に割安感があれば築古の上物を解体して新たなマンション建設用地として転売したり、数年間は時間貸し駐車場として運用したりと、多角的な視点から数手先を考えて顧客に提案しているところもある。

個人投資家が継続的に不動産の転売を行うのは宅建業法の関係上、難しい部分もある。しかし仲介業者は転売も含めて物件の良し悪しを判断する場合が多く、物件を買ったあと「最終的な出口の時点でいくら儲かるのか」ということを意識している。

投資家としては、仲介業者がどのような視点で物件を紹介しているかを理解した上で、将来的な出口戦略も考えつつ、投資対象としての価値を判断することが重要といえる。

不動産投資の楽待

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最終更新:6/5(金) 11:00

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