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「生理前に別人になる妻」を支える43歳夫の献身

6/4 7:50 配信

東洋経済オンライン

バイエル薬品が制作し、婦人科などで配布している冊子(『生理前カラダの調子やココロの状態が揺らぐ方へ PMS 月経前症候群』)によると、約74%の女性が、月経前や月経中に身体や心の不調(月経随伴症状)を抱えているという。

月経随伴症状とは、月経前はPMS(月経前症候群)やPMDD(月経前不快気分障害)、月経中は月経困難症と呼ばれる症状だが、日本ではまだあまり知られていない印象だ。
しかし、ホルモンバランスの変化により、精神状態や体調が変化することに気づき、悩んでいる女性は少なくない。

そこで、実際にPMSやPMDDに苦しむ女性の事例を紹介することで、PMSやPMDDについての理解を社会に広められたらと思う。

■エネルギッシュで前向きな妻

 関東在住、運送業界で働く那須大和さん(仮名、43歳)は、10年前に離婚し、当時6歳だった息子を引き取ったが、その後、1歳の息子を持つ8歳年下の女性と再婚。現在は妻と65歳の母親、3人の息子たちと暮らしている。

 「お互い再婚同士だったので、家族が早く仲良くなれるようにと、妻が『キャンピングカーを買おう!』と提案しました。私は金額的に考えて、中型クラスを検討しましたが、妻は、『子どもが増えるかもしれないし、大は小を兼ねる!  私がその分働けばいいんだから!』と言い、最終的には予定より100万円も高額な大型のものを購入しました」

 キャンピングカーが届いてからは、毎月のようにキャンプへ出掛けた。次第に家族の絆が深まり、楽しい思い出が増えていく。妻が三男を出産したあとも、1カ月経つか経たないかのうちに、三男を連れてキャンプへ繰り出した。

 妻は、実家が経営する美容室で、両親や姉とともに働いている。

 「つねに経営者側、従業員側、お客様側の目線になって、店をよくする方法を積極的に考えています。お客様からの指名も多く、年配の常連さんには『最後まで私の面倒を見てくださいね』なんて言われているようです」

 エネルギッシュで周囲を巻き込み、引っ張っていく魅力を持つ妻に、那須さんは惹かれていた。

 ところが、そんな妻との再婚生活は、順風満帆とは言えなかった。

 妻と出会ってから結婚までは約半年。その間那須さんは、「喜怒哀楽の激しい人だな」程度にしか思わなかった。

 「私は普段から怒ることが少ないせいか、なぜ妻が急に怒り出すのか、不安定になるのかが理解できません。そこで、妻がイライラし始めた日やけんかした日、顔つきが変わった日などを記録することにしました」

 結婚して1年経った頃、妻の変化に周期があることに気がついた。妻が別人のようになるのは、生理の前後に集中していたのだ。那須さんがインターネットで調べてみたところ、「PMS・PMDD」という疾患にたどり着いた。

 「妻は、生理10日前くらいから眠気や腰痛、イライラ、情緒不安定などの症状が強く出ます。期間中は、家庭では子どもに対して怒り散らし、職場では必ずと言っていいほど両親や姉、他の従業員とトラブルを起こしています。とくに子どもたちに怒りが向いてしまうと本当にかわいそうです。理解しているつもりの私でもつらいのですから、妻の症状を知らない人たちはもっと大変だと思います」

 妻は生理前になると、些細なことで怒り始め、物を投げつけたり、壊してしまうことも。那須さんに対しても、一方的に怒り出し、家を飛び出してしばらく戻ってこないことや、「離婚する!」と言って騒ぐことも少なくない。職場では年に何回かは「辞める!」と言って、両親を困らせていた。

 「生理前後になると妻は、人の悪い所を探し、自分の気に入らないことや思いどおりにならないことがあると文句を言い、責めたり無視をしたりするので、つねに友人、知人、身内の誰かともめている感じです」

 子どもたちも、「ママがイライラしてるときは一緒に居たくない」「どうしたら治るの?」「どうしたら症状が軽くなるの?」と心配している。那須さんが子どもたちをかばうと、当然けんかになった。

 「妻は生理前後のたびに『離婚する!』と騒ぎますが、私から『離婚』を切り出したことは一度もありません」

 那須さんには、「別れよう」という考えはまったくなかった。

■心療内科と婦人科にかかったが……

 妻は最初、心療内科へ行ってみたが、医師には「ストレスでしょう」と言われただけで薬も出されなかった。

 次に婦人科で相談したところ、「レクサプロ」という主に脳内の神経伝達物質セロトニンの働きを改善し、意欲を高めたり、憂鬱な気分などを改善する薬を処方され、「イライラしてきたら飲むように」と言われた。しかし、イライラしてるときは、那須さんが薬を飲むように言っても、妻は「薬なんて効かない!」「病気じゃない!」と怒り、断固として飲まない。

 そこで、低用量ピルに切り替えたところ、少しはよくなったような気がしたが、妻は、定期的に婦人科へ通うことができなかった。

 そこで那須さんは、リラックス効果があるとされている市販の「GABA」や「テアニン」などを妻に提案。試してみたが、あまり効果は見られない。SNS上の知り合いから勧められた「命の母」は、那須さんが飲むように言えば飲むが、妻1人では1日3回ずつ飲み続けることができず、断念した。

 「妻も、PMS・PMDDという病気を理解していなかったので、私と話し合う中で、少しずつ理解してきた感じです。妻は、普段はすごくパワーを持っていて、家族にとっては太陽みたいな存在。なのに、PMS・PMDDのせいで、職場の同僚や友人から嫌われてしまったり、離れていってしまう人もいるのは、とてももったいないので、何とかしてあげたいと思っています。最近、『プレフェミン』を試し始めました。妻は忘れっぽい人なので、夕食後に私が促して飲ませています」

 プレフェミンは、薬剤師のもとで購入する医薬品だ。古くから婦人科系疾患の治療に使われてきた西洋ハーブのチェストベリー抽出物を20mg含有しており、スイスやオーストリアを始めとする多くの国で一般医薬品として使用されている。

 「私は、妻の体調が悪いときは、少しでも睡眠が取れるように、家事や子どもの世話などをするように努力しているつもりですが、どうしてもけんかになることはあります。最初の頃は、朝まで話し合ったりしていましたが、無理に解決しようとせずに、距離と時間を置いて、1人の時間を作ってあげたほうが早く落ち着くことがわかりました」

■PMSやPMDDを理解する必要性

 那須さんは、SNSを通じて妻と同じPMS・PMDDに悩む女性たちと交流し、情報を集めている。

 「PMSやPMDDがない女性も男性も、まずはPMSやPMDDという疾患が存在し、精神的・身体的につらい症状があることを知り、理解する努力をしてみることが大切だと思います。生理のことだけではありませんが、日本の男性は、女性のことをもっと知ろうとし、理解したほうがいいと思います。PMSやPMDDが認知されていけば、PMSやPMDDによる不幸な出来事を予防したり、乗り越えたりできるケースが増えるかもしれません。私はPMS・PMDDの情報を発信し、広めていきたいと思っています」

 PMS・PMDDの知識や情報が広まれば、DVや離婚、母親から子どもに対する虐待などの問題を減らせるかもしれない。しかし、PMS・PMDDがない女性や男性以前に、PMS・PMDDがある女性でさえ、PMS・PMDDを知らない場合も多い。

 もし、あなたが生理前後に周期的な不調に苦しんでいるなら、PMS・PMDDを診られる婦人科や心療内科を探して相談してみてほしい。あなたが「治そう」という意志を持ち、PMS・PMDDと向き合うことは、あなただけでなく、あなたの大切な人たちのためにもなるはずだ。

東洋経済オンライン

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最終更新:6/4(木) 9:40

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