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ホームレスを襲う未成年の理不尽すぎる暴力

6/4 8:10 配信

東洋経済オンライン

 岐阜市の路上で今年3月、ホームレスの80代男性が襲撃されて死亡した事件で、岐阜地検は5月15日、殺人容疑で逮捕された3人のうち1人を傷害致死罪で起訴、残る2人の少年を傷害致死の疑いで岐阜家裁に送致した。

 この事件では朝日大学の現役硬式野球部員2人を含む少年5人が逮捕された。被害にあったのは橋の下に住んでいた81歳のホームレスで、アルミ缶回収で生計を立てていた。収入のほとんどを捨て猫の餌代に費やすという、心優しいホームレスだったと伝えられている。

 僕は20年にわたり、ホームレスの取材を続けている。このような話は、聞き込みをしているときによく耳にした。むしろ野宿生活をしていて一度も暴力を受けたことがない人のほうが珍しい。

 今回は殺人に至ってしまったので報道されたが、未成年によるホームレス襲撃は“よくある話”なのだ。

拙著『ホームレス消滅』(幻冬舎新書)から未成年、少年・少女によるホームレスへの襲撃事件を取り上げた部分を一部公開したい。

■ホームレスより怖い中高生

 ホームレスについて、「汚い」「臭い」というイメージを持っている人も多いが、より漠然と「ホームレスは怖い」と思っている人もいる。とりわけ、女性には多いかもしれない。先述したとおり、そもそもホームレスはほぼ男性だ。加えて、周りに誰もいないのに怒鳴り散らしていたり、突然奇声を発したり、不衛生にしてゴミを散らかしていたりなど一般人に迷惑をかけるホームレスも一部いるので、怖いと思われているのはある種、仕方がない。

 ただ、ホームレスに話を聞く身からすると、一般人のほうが怖いと思うことがある。

 「中学生らしき集団に花火を打ち込まれた」

 「身体やテントに火をつけられた」

 「酔っ払ったサラリーマンに蹴り飛ばされた」

 「自転車を投げつけられた」

 このような未成年や酔っ払いを代表とする一般人によるホームレスへの暴力話には枚挙にいとまがない。生活実態調査では、14.7%のホームレスが

 「ホームレス以外の人にいやがらせを受けて困っている」

 と回答している。

 ホームレスへの暴力事件については、1980年代初頭に起こった横浜浮浪者襲撃殺人事件が有名だ。横浜市内の公園や地下街でホームレスが次々襲撃されたのだ。犯人は、市内にある中学校生徒を母体とした未成年の不良グループ「恐舞連合」。同じく市内を拠点とする不良グループ「中華連合」とけんかして負けたことから、けんかの練習台としてホームレスに目をつけた。

 途中からはストレス解消や暴力そのものを楽しむような状態になり、少なくともこの不良グループは2人のホームレスを殺めた。なお、このほかに2人が殺されており、別の “ホームレス狩り”を行うグループもあったのではないかと指摘されている。

 それ以降も、このような未成年によるホームレス襲撃事件は断続的に起こっている。

■河川敷ホームレスの最大の敵は未成年

 快適な生活を送っているように見える河川敷ホームレス。しかし、彼らは理不尽な暴力を受けることもある。

 繁華街で寝ているホームレスに暴力を振るうのは酔っ払ったサラリーマンであるケースが多い。しかし、河川敷には酔っ払ったサラリーマンはまずいない。

 河川敷ホームレスに暴力を振るうのは、分別がない不良中高生や、バーベキューをやっている酔っ払った大学生だ。こういった未成年、学生加害者の多くは、集団で群れたうえで襲撃してくるからタチが悪い。

 「夏になるとしょっちゅう石とか花火とかをぶつけられる。それもまあまあ我慢してたんだけど、ある夏に寝ていたら、中学生くらいの悪ガキに火をつけられたんだ」

 2015年、多摩川で釣りをしていた人に紹介してもらった同河川敷で暮らすこわもてのホームレス(50代)は、そう被害を訴えた。就寝中にオイルをかけられ、ライターで背中に火をつけられたが、幸い燃え広がる前に火は消えた。しかし、熱さで暴れる姿を見て、その子どもは笑っていたという。

 ほかにも

 「小屋で寝ていたら学生服を着た子に、花火を打ち込まれた」

 「中学生たちが悪ノリしていて、突然飛び蹴りをされた」

 と、河川敷に住む多くのホームレスたちは、理不尽な暴力を一度は経験している。

 このようにバカな未成年による街中のホームレス襲撃は断続的に起こっている。

 1997年3月、中学2年生14人が、淀川の河川敷で暮らしているホームレスの男性(63歳)を約3時間半もの間、執拗に追い回し、集団でエアガンを乱発。その発砲数は1万発にもなった。使われたのはエアガン等8丁。至近距離2メートルから撃ち込み、やめさせようとする男性を取り囲んで

 「集中砲撃!」

 と声を上げ、代わる代わる連射し続けたという。

 彼らを逮捕・補導した大阪府警がエアガンを調べると、5メートルほど離れた距離から撃っても、段ボールを貫通する威力があったという。目に当たったら大惨事になるところだった。

 「最初は紙の的を撃っていたがつまらなくなり、人を標的にした」

 この手の未成年加害者は、だいたい遊び半分でやっている。もともと、ホームレスの住まいを壊したり、持ち物を勝手に川に投げ捨てたりするどうしようもない子どもたちで、エアガンによる襲撃も、複数回繰り返していた。

 エアガンは、地方自治体が定める青少年保護育成条例によって購入できる年齢の下限を設けている地域が多い。大阪府も、有害玩具に指定しており、18歳未満の直接販売は禁止している。そのため、この事件では、後日、彼らにエアガンを売った玩具店が書類送検されている。

 だいたいが男による犯行だが、女が交じることで、燃料が投下されてしまうこともある。2007年6月、埼玉県の黒目川河川敷で、ホームレス(43歳)の寝ていた段ボールハウスの放火未遂事件が起きた。河川敷でバーベキューをやっていた学生たちが、余ったサラダオイルをハウスにかけて

 「燃やせ!」

 「殺せ!」

 とあおり、ライターで火をつけようとしたのだ。捕まったのは、あおったうえに自身のライターを男子学生に渡した大学4年の女子大生(21歳)や専門学校生の男子学生(20歳)を含む学生4人。「探偵ファイル」の報道によれば、池袋のカラオケ店で働くバイト仲間だったようだ。

■河川敷は近隣住民の目が届きにくい

 このような事件は2010年代に入っても、各地で起こっている。

 2010年3月に兵庫県尼崎市の武庫川河川敷で起こった殺人未遂事件(被害者65歳男性、加害者は「(相手が)死んでも構わないと思った」と供述した14歳の中学生2人)、2011年1月に群馬県の広瀬川河川敷で起こった傷害事件(被害者67歳、加害者は「面白半分で河川敷にあった石を投げた」という14歳の中学生4人)、2012年2月に神奈川県の中津川河川敷で起こった傷害事件(被害者59歳、加害者は「あいつをやりに行こう」と犯行現場に向かった16歳の無職少年と14歳の中学生)と挙げればきりがない。

 河川敷は、住宅街とも離れているうえに、土手や堤防であたりから見えにくくなっている。犯行に及ぶ未成年者の中には「ホームレスならバレないと思った」という供述をしている者もいて、近隣住民の目が届かないことが逆に利用された形だ。

 こういった凶悪事件が起こるため、ひとりでいると暴力を受けやすいということから、 ホームレスたちは河川敷でも集落を作って生活する。もちろん「ここに、集まって村を作ろう!」と宣言して、人が集まってきたわけではない。ただ結果的に、村としか呼べないくらい小屋が密集した場所になる。集団で暮らせば、助け合うこともできるので、ひとりで生活するより楽になることもある。

 ただし、村社会になると村人同士のけんかが発生することが世の常だ。酔っ払って思わず手が出たくらいの話もあるが、刃傷沙汰に発展したケースもある。

 1999年9月、加害者のホームレス(52歳)が、同じくホームレス仲間だった3人(57歳、62歳、69歳)をバタフライナイフで刺殺し、荒川に投げ込んだ事件は全国のニュース番組で報道された。犯行理由は、殺された男性のひとりに「俺にばかり水くみさせるな」と言われたことに腹を立てたという。ちなみに彼は犯行時に覚醒剤を使用していたということで「心神耗弱だった」とされ、2006年6月、一審の死刑判決が控訴審判決で破棄され、無期懲役の減刑判決が出ている。

■金銭目的で殺人事件に発展するケースも

 金銭目的で殺人事件に発展するケースもある。2004年8月には、淀川河川敷でホームレスらが、お金を持っていたホームレス仲間から現金約100万円を奪ったのちに、フライパンで殴打し、粘着テープで縛って、深さ2メートルの穴に生き埋めにして殺害した。この事件が発覚したのは、 10年経った2014年7月だ。ホームレスの2人(53歳と46歳)が捕まって、その後無期懲役の判決が出た。

 近年でも、2017年11月、荒川河川敷でホームレスが、酒を飲んで口論となり、同じ集落で暮らすホームレス(61歳)をハンマーで撲殺した事件が起きている。

 ただ、こういった事件は本当に氷山の一角だ。殺害にまで至らない事件だと、ホームレスは、騒ぎになり河川敷から追い出されることを恐れ、口をつぐんでしまうケースも多い。

 また、西成警察のホームレスへの態度は特異ではあるものの、治安を守る立場の警察にぞんざいに扱われた過去がある(と本人が思っている)ホームレスは多く、その場合は警察そのものを信用していないのだ。実際、多摩川の川崎側の河川敷で若者からの暴力被害に遭った男性が、川崎の駅前の交番を訪れたところ、「お前ら(ホームレス)の相手をしているヒマはねえ」と一喝されたという。

 河川敷の集落で生きるにも、そこは野外で、人目につきにくい場所である。それなりのリスクが発生する。

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最終更新:6/4(木) 8:53

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