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【緊急レポート】緊急事態宣言下でも感染者数は増加の一途。経済破綻と治安悪化に苦しむドミニカ共和国

6/2 21:01 配信

ダイヤモンド・ザイ

 カリブ海に浮かぶ小国・ドミニカ共和国に住み、中南米の新興国を舞台に貿易事業を展開する風間真治さん。3月16日に出された緊急事態宣言下でも新型コロナウイルス感染者数は増加の一途。医療崩壊、経済破綻、治安の悪化も止まらないーー。ドミニカ共和国の今をレポートします。

止まらない感染者数増加。検査キットもベッド数も不足し、医療崩壊状態が続く

 現在、世界的に感染が広がっている新型コロナウイルスですが、5月後半以降、中南米は特に感染者が増えている地域です。

 私が住んでいる中米カリブのドミニカ共和国では、3月上旬に1人目の感染者が出たあと、現在、人口比ではイタリアに迫るハイペースで感染者が増えています。それに伴い、多くの医療現場でベッドと人工呼吸器が不足し、感染がわかっても入院まで至らずに亡くなるケースも出てきており、深刻な医療崩壊状態が続いています。

 3月下旬に新型コロナウイルスに感染したドミニカ人の友人の話によると、その際はまだベッドに空きがあり、入院することができたのですが、4月になり、その友人の父親が感染してしまった際には、症状が深刻でないという理由で入院を拒否され、自宅療養となったそうです。その後、父親からさらに家族に感染し、今では母親や兄弟も感染してしまったといいます。医療現場が崩壊すると、なし崩し的に感染者が広がる典型的な例といえそうです。

 PCR検査キットは常に不足していて、感染の疑いがあっても、申請から2週間待ちになるケースも多く、これも大きな問題です。また、感染者を受け入れることができる病院が政府の統制下にある病院のみで、一般の人が使う民間の病院のほとんどが感染者を受け入れていません。これは、ドミニカ政府が病院側に、徹底的な情報コントロールを義務付けているからで、現在のところ、病院の中に新聞やテレビなどのメディアが入ることも許されてないため、多くのメディアが透明性を確保しない政府の対応に抗議しています。

 ドミニカ共和国の保健省の公式サイトで公表されている国内感染者数を見ると、5月26日現在で約1万6000人の感染者がおり、日々新たな感染者が500人前後のペースで増え続けています。

 同日のブラジルの感染者数が約36万人で、ニュースでも大きく取り上げられていますが、人口比の感染者数でいうと、ドミニカ共和国もブラジルに近いぐらいの数といえるでしょう。ただ、感染者の死亡率は一時期6%を超えていましたが、回復者が増加した5月中旬以降減ってきており、現在は3%ほどで推移しています。

3月16日、緊急事態宣言。17時以降の外出は前面禁止に

 ドミニカ共和国では、比較的早く3月16日に「緊急事態宣言」が出されました。これは、ブラジルとは大きく異なる点ですが、現在も自粛生活が続いています。にもかかわらず、感染者数は上昇傾向が続いており、いまだに減少する気配が見られず、自粛効果が出ているとはいえません。

 私は現在、首都のサント・ドミンゴに住んでいますが、必要な時以外は家族含めてほとんど外出をしていません。それでも毎日、感染者数が増えているというニュースばかりが流れ、明るい兆しがなかなか見えない、先の見えない状況に、ときに辟易とした気分にさせられます。

 緊急事態宣言下の自粛期間中、スーパーマーケット、薬局と日用品を売る一部の店を除いた、飲食店やその他の店は全部営業禁止。また午後5時以降早朝まで外出は全面禁止で、5時になると街中でいっせいにパトカーのサイレンが鳴り、警察官が外出をしている人たちを取り締まるという状況です。外出中に警察官の取り締まりにあった人たちは、留置所に連れて行かれ、翌朝まで勾留されます。日本よりも規制はずっと厳しいといえるでしょう。

倒産する企業、給料の未払いも続出。政府の支給も遅れ……

 許可を得ていない業態で勝手にオープンした店は、これも警察官がきて、責任者を留置所に連行するという事態が起きています。これに対して「国民の多くは新型コロナウイルス以前に、生活がかかっているのにやりすぎだ」というデモも起きました。

 抗議をする人が続出しているのは、現実的に食べていけない人が多いからです。倒産する企業も出てきており、給料が払えない会社も日本の比ではないぐらい多く出ています。

 3~5月の間に政府から各民間企業に通達されたのは、以下の3つ。
緊急事態宣言が出ている間、
1)社員の解雇は可能
2)社員を休業させる場合は、給料の半額を企業が支払う義務がある
3)残りの半額は申請した人には政府が一部を支給する

 ほとんどの企業は現実的に営業できないので、社員を解雇しないのであれば休業させるという手段がとられましたが、特に中小企業のほとんどは給料の半額を支払えず、また政府も、たとえ申請したとしても、すぐに支払いができない事態となっています。これは、申請者が政府の出先機関に大量に押しかけてしまい、そこでクラスター感染が発生したなども原因のひとつで、経済活動を停止したことに対する被害は大きなものとなってきています。

 私が経営している会社では、社員は全員、自宅作業に切り替えてもらいました。幸い店舗を経営しているわけではないのと、私自身海外出張が多いこともあり、数年前からリモートでの仕事に切り替えていて、ほとんど会社には顔を出さずに社員に指示して会社が回るような仕組を構築していました。お陰で業務にはほとんど支障はありません。ただ、経済活動が全面的にストップしているこの数カ月、売上は当然大幅に落ちますので、その間の支出管理は悩ましいところではあります。

 社員の中には隣国のベネズエラの情勢混乱から逃れるために、家族を連れて裸一貫でドミニカ共和国に避難してきたベネズエラ人も何人かおり、彼らは私と同じく移民してきた身で、近くに頼る人も少ない状況です。そういう厳しい状況でも真面目に仕事をしてくれていましたし、中には小さな子どもがいる人もいますので、必死なのも知っています。そう簡単に彼らの生活を奪うわけにはいきません。

 経営者としての責任という感覚ではなく、どちらかというと私の場合、ドミニカ共和国というアウェーの中で、マイノリティとしてイチから這い上がってくる苦労を経験してきたので、彼らの生き残らないといけないという必死さが痛いほどわかるという、同朋しての感覚に近いかもしれません。
 
 彼らの仕事を守っていくためにも、厳しい環境でもビジネスは作り出していきたいという気持ちで、頭をフル回転させてこの数カ月を過ごしています。

経済状態の深刻な悪化とともに、強盗や盗難が急増

 もうひとつ、深刻なのが急激な治安の悪化です。つい先日も、私の会社の社員がバイクに乗った2人組の強盗に襲われかけるという出来事がありました。経済状態の深刻な悪化とともに強盗や盗難が急激に増加しており、特に外国人が襲われるケースが増えているため、私も外出をするときは充分注意をしています。

 2人、あるいは集団での窃盗が多く、緊急事態宣言下で店を閉じていた宝石店が強盗団に襲われて、ガードマンが怪我を負ったり、地方の小売店が白昼堂々と強盗に襲われたりするケースも多発しています。
 
 経済がますます悪化し、食べることができない人たちがより増えることによって、この種の治安の更なる悪化を政府も懸念しており、警察官の配備をさらに増やすなど対策をとっているところです。

 また、サント・ドミンゴ北部にある刑務所内では、新型コロナウイルス感染者が爆発的に増えているという報道がありました。初期の隔離対策を怠った結果、一時期はこの刑務所内で300人近い感染者を出してしまい、刑務所職員に対して、受刑者が徒党を組み激しい暴動を開始するという事態もありました。

 ドミニカ共和国国内で最初の感染者が発覚してから約2週間後と、比較的早くに緊急事態宣言を出したにもかかわらず、ここまで感染者が増え続け、かついまだにピークアウトしていない理由は、自粛できない人たちがかなりの数いることや、そもそもソーシャルディスタンスを守ろうとしない人も多いからでしょう。
 
 下の写真はある政治イベントですが、5000人以上の人たちが集まり、超がつく3密の中でイベントを盛り上げていました。私はSNSで見ていましたが、大きな声を出す人もかなりの数いましたので、飛沫も相当飛びかったはずです。

 また、スーパーマーケットや銀行に行くと、多くの人が並んでいる場面に出くわしますが、4月頃はソーシャルディスタンスどころか、我先に行こうとする人たちが押し合いへし合い状態で、「カオスすぎて危険」と、スーパーには入らず家に引き返した日もありました。

 日本のように「相互監視社会」が機能しすぎて、自粛警察が必要以上に増えるのも問題があると思いますが、ドミニカ共和国のように自制心が少ない人たちが多いのも、それはそれで問題だなと。日本とドミニカ共和国という世界でも両極端な文化を見ていて、この中間ぐらいが一番良いのにと思ったりする毎日です。

政府の経済対策と近づく大統領選挙

 もちろん、ドミニカ共和国政府も経済対策に無関心なわけではなく、5月末から段階的に緊急事態宣言をやや緩和。午後5時には自宅に戻らないといけなかった規制から、現在は午後7時まで外出ができることになりました。また、すべての店舗ではないですが、飲食店をはじめとした一部の店舗は時間制限がありながらも営業が認められ、経済活動が徐々にスタートしつつあります。

 3月26日には6000万米ドル(約65億円)の大規模な金融緩和を行ないました。日本人の間で通称「ドミノミクス」と呼ばれたこの政策は、ドミニカ共和国の財務長官が「米ドルはあるので、どこでも投入する」と強気のアナウンスをしています。

 ここ数カ月でドミニカ共和国の主要産業である観光業が大打撃を受けており、観光、フリーゾーン、海外からの送金という同国の3つの主要外貨獲得手段が軒並み悪化。その結果、一時的に米ドルの調達がかなり困難に陥りました。この状況を打開するべく、中央銀行は通貨の立て直しに踏み切ることになりました。

 ドミニカ共和国の現政府が現在、経済をどこまで復活できるかを重視するのは、7月に、4年おきに行なわれる大統領選挙が控えているという事情があります。特に現政権のPLD(ドミニカ解放党)は、今年2月に行なわれた、大統領選挙を占うといわれていた市長選挙において不正投票が発覚して国民の支持率を大きく下げてしまい、現在は、対抗するPRD(ドミニカ革命党)が有利といわれています。PLDとしては、これを何とか挽回したいという思惑があるのです。

 PLDもPRDも、新型コロナウイルスで経済が悪化したことで、食べるのにも支障をきたしている首都や地方の貧困層の人たちに、食料やマスクなどの医療品を毎日トラックで届けており、選挙戦に向けて、各党の動きはかなり活発になってきています。

 (文・撮影/風間真治)

著者紹介:風間真治(かざま・しんじ)
商社の海外営業、中南米のドミニカ共和国駐在を経て独立。現在はカリブ海に浮かぶドミニカ共和国に住みながら、主に中南米諸国でこれから経済が成長していくような国々を頻繁に回り、未知なる客先を訪ね歩いては様々な新規事業の開拓に取り組む日々。中南米ではいくつかの国に会社を作り、貿易事業、港湾の通関業、不動産事業、インターネット事業、中古車販売業などを手がける。

ダイヤモンド・ザイ

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最終更新:6/10(水) 17:20

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