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会計ソフトのクラウド化「Freee」が成功している、シンプルな理由

5/30 10:00 配信

マネー現代

(文 夏目 幸明) 博報堂、Googleといった大手企業を経て起業し、米国大手ベンチャーキャピタルからも出資を受け、フォーブスジャパンが選ぶ「日本の起業家ランキング」ベスト10に2年連続で選出された起業家がいる。

 '19年、東証マザーズ上場後に、1259億円もの時価総額を記録した「freee」の佐々木大輔CEO(39歳)だ。今注目の「SaaS(Software as a Service)」企業群の中でも最先端を走る企業のトップは「流されない」熱さと、飄々とした雰囲気をあわせ持つ人物だった。

起業時に火がついた一言

 主力商品の「会計freee」はAIによって会計の自動化を実現するクラウドサービスです。スマホのカメラで領収書・請求書を撮影すると、AIが自動で内容を識別し仕訳してくれます。

 また3600超の金融機関・クレジットカードと連携しており、入出金がリアルタイムで記録されていきます。

 今までの会計ソフトは「借方」「貸方」など、簿記の知識を持った方が入力する必要がありましたが「freee」はそもそものアプローチが異なり、勝手に会計帳簿ができあがります。

 現在は会社設立、人事労務、税務申告などを効率化する様々なプロダクトを展開していて、普及すれば特にスモールビジネスの経営者がもっと創造的なことに時間を使えるようになるはずです。

 実際に「freee」で毎月レポートを見ている事業所の売り上げは、前年比30%増を記録しており、時間創出の先に収益創出があることがわかっています。

 創業時、ソフトを様々な方に見せたのですが、評価はあまりよくありませんでした。「既存の会計ソフトと違いすぎる」「欲しいのはここをちょこっと変えたもので~」という意見が大半だったのです。

 ここで「斬新すぎるから今はやめておこう」という判断もあったかもしれませんが、私にはこれが絶対、業務効率化、経営の可視化に繋がるという確信がありました。

 火がついたのは、ある人から「会計ソフトで何をやったところで起業はできないよ。パソコンが生まれて30年変わってないんだから」と言われたときからです。

 「環境が変わっているのに、会計ソフトだけ変わらない真の理由は何なのか?」と思い、それを突き詰めるなら、失敗するにしても学び多い失敗になるはずだ、と考えたのです。

 身近なものも徹底的に効率化していくのが好きです。何でもペーパーレスでやりたがり、よく「この紙、早くスキャンして捨てよう」と考えます。鍵や財布を探すのが好きでなく、きっちり同じ場所にしまいます。

 まとまった時間に「これを書く」と決めたら、その間、電話があってもメッセージが来ても「僕は知らん」となるのも効率化の一つなのでしょう。

 今はキーボードを叩いていると仕事をしているような雰囲気が出せますが、決してパソコンは最終形だと思いません。いつかスマートスピーカーにしゃべったら仕事ができるとか、そんな世界が来るのでは? と想像しますし、これこそが今後伸びていく領域だと思います。

JAPAN is different

 常に”社会を変えたい”という思いを持っています。たとえば、育休を取ったときに知ったのですが、これだけ人手不足が叫ばれているなか、外国人の方が日本でベビーシッターとして働こうとしても、なかなか在留資格が得られないというのです。

 「子供の面倒はすべて親が見るのが当然」という古い価値観で受け入れ体制が整備されないのだとしたら、こういうところに変革の余地があるのではないかと思っています。

 あと、Google在籍時から、日本には「JAPAN is different(日本は違う)症候群」があると感じていました。新製品を出すと海外の支社の皆は喜んでいるのに、国内の支社だけ「日本にはこういうリスクがある」「日本は環境が違うから」と、後ろ向きなのです。

 しかしそれは迷信で、例えば司馬遼太郎さんの小説『坂の上の雲』で書かれている日本海海戦も、世界の戦訓を徹底的に研究して勝利したのです。Googleだって、世界中のベストプラクティスを取り入れたから今の姿があるのです。

 今後は「既製品を上手に使った企業が伸びる」世の中になっていき、その過程でSaaSが普及していくと思います。中堅以上の規模の企業は会計や労務等の自動化のため自前でシステムを開発することがよくあります。

 それはコスト増、さらにはテクノロジーや業務オペレーションの刷新への対応が遅れる原因になります。既製品を自社にフィットさせ使っていくことこそ世界のトレンドになっているのです。

 近い将来、見積もり・発注・請求・決済がワンクリック、ワンストップでできるようになり、企業同士の取引は飛躍的に簡易化されるでしょう。そして、人工知能CFOが資金繰りや財務の最適化を進める世界が来るはず。

 ここで我々は大きな使命を果たし、多くの方々が、人間にしかできない信頼関係の構築や新規事業の検討などに情熱を注げるようにしていきます。(取材・文/夏目幸明)

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佐々木大輔(ささき・だいすけ)
'80年、東京都生まれ。一橋大学在学時「ほかの人が行かないから」とスウェーデンへ留学。'04年に博報堂へ就職し、'08年にGoogleへ入社。同社でアジア地域の広告収入向上のため中小企業向けのマーケティング統括を担当した時の問題意識を元に、'12年にfreeeを起業し、代表取締役CEO就任。以来現職
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マネー現代

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最終更新:5/30(土) 10:00

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