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在宅勤務がコロナ後も全然衰えなさそうな訳

5/24 8:01 配信

東洋経済オンライン

昨今の経済現象を鮮やかに切り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する――。野口悠紀雄氏による連載第17回。
 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言を受けて、さまざまな企業で導入された在宅勤務(リモートワーク)。この先、コロナが収束したとしても、これを永続化しようとする企業がIT関連を中心に広がりつつあります。

 在宅勤務は、従業員にとって魅力的なオプションであるばかりでなく、雇い主にも利益をもたらします。在宅勤務の広がりは、都心部のオフィスに対する需要を減少させ、地価に影響を与える可能性があります。

 ただし、在宅勤務にいくつかの問題があることも、事実です。とくに日本では、働き方の基本を成果主義に転換する必要があります。

■在宅勤務は永続する

 コロナ禍を機に、アメリカのIT大手企業の働き方が大きく変わりつつあります。

 ツイッター社は、新型コロナウイルス対策で始めた在宅勤務について、従業員が望めば永続的に続けられるようにすると発表しました。日本を含む全世界の約5000人の従業員が対象です。

 アマゾンとマイクロソフトは、10月まで在宅勤務の方針を継続。グーグルやフェイスブックも、今年末までの在宅勤務を認めています。

 IT以外でも在宅勤務永続化の動きがあります。保険会社のネイションワイドは、在宅勤務への永続的な切り替えを決めています。

 これまで在宅勤務は、育児や介護などの必要がある場合の例外的な働き方であると位置づけられてきました。

 在宅勤務は会社にとっては望ましくない形態で、オフィスでの仕事が基本という考えがありました。

 しかし、コロナ感染防止のためにやむをえず始まった在宅勤務によって、自宅のほうが生産性は上がり、業務がうまくこなせることもあるとわかったのです。

 在宅勤務は、コロナ期の特殊現象ではなく、働き方の大きな変化となる可能性を持っています。在宅勤務こそが、「基本的な働き方」になりえます。

 その意味で、上でみた動きは、「時代の転換点になる」可能性を秘めています。こうした変化に対応できる組織が未来を拓くことになるでしょう。

 もちろん、すべての仕事を在宅勤務に切り替えることはできません。

 製造業では、工場に出勤する必要があります。そもそも1カ所に集まって働くという形態は、産業革命によって出現した工場制工業によって始まったものです。また、対人サービス業も、全面的な在宅勤務への切り替えは難しいでしょう。

 しかし、少なくとも、多くのサービス業(とりわけ、高度サービス業)とあらゆる産業の管理部門については、「在宅が基本的な働き方」という変化が起きるのです。

■日本でも在宅勤務が広がる

 日本でも、新型コロナウイルスの拡大を契機にして、在宅勤務が広がりつつあります。そして、在宅を永続化する企業が登場しています。

 動画投稿サイト「ニコニコ動画」を運営するドワンゴは、新型コロナウイルスの収束後も、全社員約1000人を原則として在宅勤務とする方針を固めました。動画の編集作業なども自宅で対応できており、業務への支障は出ていないということです。

 GMOインターネットグループは、1月27日から渋谷区、大阪市、福岡市のオフィスに勤務するグループ従業員4000人を在宅勤務に切り替えました。

 現在も、業務上やむをえず出社が必要な場合のみ感染予防対策を講じたうえで一部出社を認める体制となっています。

 在宅勤務体制となったことで、オフィス運用コストの削減が見込まれる一方で仕事の効率はまったく変わらないとし、削減分の費用について事業継続を支える国内の全パートナー(従業員)に還元する「オフィスコスト還元プログラム」を実施するとしています。

 在宅勤務リモートワークは、従業員にとって魅力的なオプションです。

 悪天候の日に無理して出社する必要がなくなり、通勤ラッシュからも逃れることができます。

 都心に通勤しないで済むなら、郊外や田舎に住んで働くこともできるでしょう。そして、住居費を節約することができます。

 IBMが2万5000人を対象に実施した調査によると、労働者の54%は、フルタイムで在宅勤務リモートワークを続けたいと考えています。

 雇用主も、多様な働き方を認めることによって、人材の確保が以前よりも容易になります。また、家賃の高い大きなオフィスを借りる代わりに、小さめのスペースを借りることによって経費の削減になります。

 オフィスは、「従業員が毎日集まる場所」から、重要な会議や共同作業のための「ミーティングスポット」に変わるでしょう。

 このように、在宅ワークは、従業員と雇用主の両方にとって望ましい働き方となるのです。

■都心のオフィス需要がなくなる? 

 在宅勤務の拡大は、オフィス市場に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 多くのオフィスワーカーが長時間の通勤を避ける傾向が強まり、それを在宅勤務に切り替えられることがわかったからです。

 つまり、実際のオフィスの大部分は本質的には不要なことがわかったからです。

 コロナが終わったとしても、少なくとも都心のオフィスに全員分の業務スペースを確保する必要性はなくなってくる可能性があります。そうすれば、都心のオフィス需要は大きく減少するでしょう。

 IT系の企業が解約するようになれば、オフィスの市場は大きく崩れるかもしれません。

 ところで、東証REIT指数と都心5区のオフィス賃料には、これまで一定の相関がみられました。

 REIT価格の最近の動向を見ると、次のとおりです。

 2020年2月までは2000を超える水準であり、2月20日に2250の高値をつけました。ところが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、3月19日には1145とほぼ半分にまで下落しました。

 これは、約3割の下落だった株価より大きな下落率です。その後回復しましたが、5月18日で1593であり、株価の回復に比べて回復率は低くなっています。このような動向は、上で述べたような都心オフィス需要の先行き減少を見越したものと解釈できるでしょう。

 一方で、在宅勤務にまったく問題がないわけではありません。

 日本では、住宅事情が良好でないため、自宅での仕事には、さまざまな障害があります。とくに、学校が休校になっていることから、子供が仕事の邪魔をする場合が多いと言われます。

 また、オフィスにおけるデスクトップPCほどセキュリティー面で保護されていない可能性がある家庭のPCが攻撃を受ける状況が生じています。

 こうした問題は、自宅を仕事場にするのでなく、各地にサテライトオフィスを分散配置し、そこで働く形態をとることによって解決しうるでしょう。

■「いるか族」の世界からの脱却

 日本では、さらに「働き方」の基本に関わる問題があります。

 厚生労働省の調査によると、テレワークの実施はオフィスワーク中心の人でも全国平均で約27%にとどまりました。東京でも約52%です。

 日本で在宅勤務があまり進まないのは、技術的な理由によるというよりは、「日本型の働き方」による面が大きいと思われます。在宅勤務で働く場合に最も重要なのは、成果主義、ひいては能力主義に転換しなければならないという点です。

 ところが、日本の組織では、これまでは、成果よりもオフィスにいるかどうかが評価されていました。上司に「おい」と呼ばれたときに、「はい」と答えられるかどうかが重要だったのです。

 テレワークになってビデオ会議が導入されても、中間管理職は、「部下がPCの前にいるか?」をチェックするのに躍起になっています。こうした中間管理者を「いるか族」と読んでもいいでしょう。

 こうした人々がはびこる組織から脱却できるかどうかが、日本における在宅勤務の成果を決めることになるでしょう。

東洋経済オンライン

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最終更新:5/24(日) 8:01

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