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岩田健太郎「病院の待ち時間が長い根本原因」

5/24 5:40 配信

東洋経済オンライン

予約したにも関わらず、診察を何時間も待たされた経験のある人は多いはず。日本の病院の待ち時間が長すぎる問題は、なぜ解消されないのか?  2月に横浜港に停泊したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の内情を告発して注目を集めた、神戸大学感染症内科の岩田健太郎教授が解説。新書『新型コロナウイルスの真実』から一部抜粋・再構成してお届けする。

 新型コロナ対策として、実際にコロナかどうかに限らず風邪をひいたらすぐに休むことが大切です。自分がまず休むこと、そして家族や同僚が風邪をひいたらちゃんと休ませてあげることが大切ですが、そのためには、「休むことができるシステム」を整備しないといけない。

 それは工夫すれば容易にできることなんですが、日本の社会では、工夫することそのものが悪とされることがあります。

■日本の病院はなぜ「無駄」が多い? 

 2018年に注目を集めた東京医科大学での女性差別問題なんかが典型ですよね。「男性医師がこんなに頑張って仕事をしているのに、女性がそこに入ってやれるわけがない」といって、差別を起こすわけです。

 でも世界的に見たら、じつは医師の数は女性のほうが多いのです。ということは、女性の医師のほうが多い国が圧倒的に多い。にもかかわらず日本では男性医師じゃないとやっていけないというのは、男女の能力の問題というより、単なるシステムの不備じゃないかって考えたほうがより合理的ですよ。

 「男の医者は夜中まで頑張ってる」みたいな偉そうなことを言ってるけど、それは裏返すと、それって家で何もやってないって意味ですよね。単に奥さんにワンオペの家事を押し付けてるだけでしょ。

 そういうマインドが当たり前のシステムだから、日本の医療ってものすごく無駄が多いのです。例えば、外来患者がとても多い。不必要なまでに多い。今でこそ、コロナ問題で不要な診療を避けましょうというようになって外来の患者数がすごく減っていますが、ひっくり返せばそれだけの減らせる余地があるほど、これまでは無駄が多かったんです。

 必要ないのに外来の患者さんがどんどん入ってくる。「うちの外来は夜の時までやってるんだ」って偉そうに言うお医者さんがよくいるんですが、つまりは看護師さんや事務の人もずっと付き合ってなきゃいけないってことですよね。

 そんな時間まで続けないと外来が回らないとすると、オペレーションがそもそも間違ってるんじゃないか、という発想がないわけです。

 本当は、患者さんを半分に減らして夕方の5時に終われるようなアポイントメントの取り方をするのが正しいやり方なんです。

■日本の病院が混雑する理由

 アメリカの病院には「リフィル(=再び満たす、補充)」というシステムがあります。これは何かというと、例えば高血圧の症状があるところで安定している患者さんは、同じ薬をずっと飲み続けるわけですが、日本ではその薬を処方してもらうためだけに外来に来るんですね。アメリカでは「それって無駄じゃん」という話になって、薬局に行くと同じ処方箋で何回も同じ薬をくれるんです。

 同じ薬を何年も飲み続けている患者さんなんてたくさんいるんですが、日本だと薬をもらうにも、必ず外来に行って医者に診察を受けて処方箋をもらわないと、薬をもらえない。これがアメリカだと、1回薬をもらって、症状が安定していれば同じ薬を何回でも薬局でもらえる。その都度病院に行かなくていいのです。

 話は変わりますが、2020年3月、インフルエンザの検査をしようとした医師がコロナウイルスに感染したことがきっかけになって、インフルエンザの検査をやめ、症状で判断するように日本医師会が指示しました。

 これは非常に大きなパラダイムシフトなんですが、今でも患者さんはインフルエンザだと思ったら検査するもんだって思い込んでますよね。

 さらに、会社や学校によっては「証明書を出せ」とか言ってくる。そんなこと言っても、「インフルエンザではない証明」のほうはできっこないんです。検査が陰性でもインフルエンザかもしれないのだから。

 「インフルエンザ陰性の証明書とか意味ない、あれは単に医者の書類仕事を増やしてるだけだ」ということが広く理解されるようになり、「というか、そもそも鼻水を出してるだけの人が病院へ行くのは意味ないんじゃない」と理解してもらえるところまでいければ、世界一多い日本の外来の患者さんはもっと減って、医者はもっと他の仕事ができるようになるのに。

 よく「3時間待ちの3分診療」みたいな言葉で医者の診察が非難されますが、あれはたしかに半分は医者のせいですけど、半分は患者さんのせいですよ。患者さんが殺到するから3時間待ちになるのであって、来なくていい人が来なければ待ち時間は減るんだから。

 あと「無駄な検査を減らす」など病院側にできることもありますが、「なんで俺がこんなに待たされるんだ」と言ってる、その患者さんが他の人の待ち時間の一部になっていることにも想像を及ばせたほうがいい。

■「医者と患者の共犯」がもたらした問題

 だから待ち時間問題は、医者と患者の共犯がもたらした問題なんです。患者さんの「不安を解消したい」という欲望が、待ち時間という患者さんの苦労の原因になっているのです。

 ちなみに、神戸大学病院は完全予約制にしていて、アポなしの受診は予約診察が全て終わるまで待ってもらっています。緊急事態は別ですけれどね。

 11時に予約を取ってる人は11時に診るのが常識です。11時の予約なのに15時まで待たされるなんて、例えば美容院でそんなことをされたら二度と行きたくないですよね。世の中で、予約時間を破って待たせても平気な顔をしているのは病院だけですよ。

東洋経済オンライン

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最終更新:5/24(日) 5:40

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