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大学生6割「お金困る」コロナ禍の切実な懐事情

5/16 16:10 配信

東洋経済オンライン

新型コロナウイルスの感染拡大に関連し、大学生3万5000人以上から回答を得た全国大学生活協同組合連合会(大学生協連)の調査結果が公表された。その大規模調査によると、6割以上の学生がこの先の「経済的な不安」を感じているという。政府・与党は困窮した大学生への現金支給にも乗り出す方針だが、「もう退学しかない」という学生たちの声もある。支援は間に合うのか。

■「東京を引き払いました」

 「東京での学生生活はひとまず、ストップです。暮らしていくお金がありません。今はまったく将来が見通せません」

 東京都内の私立大学3年生の酒井勇太さん(20歳、仮名)の言葉は切実だ。4月中旬に中野区のアパートの荷物をまとめ、滋賀県の実家に戻ってきた。東京を引き払うまでの月収入は、共働きの両親からの仕送り8万円とアルバイト代の約8万円。この中から家賃や光熱費、食費などを賄っていた。金銭的には比較的余裕があった。

 状況は、コロナの感染拡大で一変した。

 まず、アルバイト。大学2年生の時から通学先の大学で書類整理などをこなしていたが、感染拡大で大学構内は立ち入り禁止になり、「仕事がなくなった」と言われてしまう。契約社員として働いていた実家の母親の仕事も2日に1回となった。

 さらに弟の大学進学もあった。実家の滋賀県から隣の京都府への通学とはいえ、私大の学費負担は軽くない。両親から「今後の仕送りは難しい」と言われたことで、2年間暮らしたアパートを引き払うことにしたという。

 「迷いましたけど、実家に居れば、少なくとも家賃を払わなくて済む。しばらくは、オンラインでの授業が続くと思うんです。仕送りとバイトで生計を立て、卒業後は都内で就職したいと考えてましたが、まったくの白紙になってしまって」

 再び東京に戻る場合、引っ越し代やアパートの敷金・礼金などで30万円以上が必要となる。その当ては「ありません」と酒井さん。本年度前期の授業料は、両親に頼ったものの、後期の授業料は「親にはとても頼めない」と言う。

 「今は奨学金申請の手続きをしています。それで授業料などを賄って、何とか東京でもう一度、学生生活をやり直したい。全国民に一律給付の10万円はその足しにするつもりです」

 ただし、10万円の一律給付だけでは足りない。それは自身でもよくわかっている。

 酒井さんのケースは特殊ではない。前述した大学生協連の調査(インターネット利用、回答者3万5542人)の自由記述欄にも、切実な訴えが溢れている。以下はそれらのごく一部だ。

大学に入学したことを後悔しています。両親も僕自身も収入が減ったのに、支出は変わりません。僕の学費が家計を圧迫していると思うと申し訳なくてたまりません。バイトも勉強も中途半端で何のために入学したのか。四六時中、不安です。(私立大1年男性・自宅生)

コロナの影響で、アルバイトの時間が極端に減ってしまった。学費を払えないかもしれないので、休学するか中退するかを考えています。授業が行われていないのに、学費を満額支払うのは苦しい。せめて4月分は返してほしい。(私立大1年女性・自宅生)
奨学金だけでは足りないため、バイトをしたくてもコロナ感染を考えると十分にはできません。4年間大学に通えるのかとても不安です。(私立大1年男性・自宅生)
コロナでアルバイトがなくなったので、教科書を購入するお金もなく、国からの10万円はそれに充てる予定。このままでは食費もなくなる恐れがあります。学費の免除や給付がもっと充実すればいいと思っています。(国立大3年男性・下宿生)

■「入学を後悔」「親に申し訳ない」

 このアンケート結果の声を踏まえ、大学生協連の峰田優一・広報調査部長は次のように訴える。

 「自由記述欄に『親の収入が減り家計が圧迫しているため、入学したことを後悔』と書いてあったのを読んで、心が痛くなりました。せっかく、つらい受験勉強を乗り越え、大学に合格したのに……。なんとか、学生を助けるため国から高等教育に対する手厚い支援をお願いしたい」

 学生が自ら動くケースも増えている。この間、SNSなどを利用した「FREE 高等教育無償化プロジェクト」などの学生団体が各方面に窮状を訴え、政府や世論を動かそうとしてきた。

 都内の私立大3年生、大空幸星さん(21歳)もその1人だ。FREEとは別に、授業料の免除や減額を求めるインターネット上での署名活動を友人と繰り広げている。

 「今の大学生の仕送りは、平均約8万円です。都内だと家賃が最低5万円もかかったりする。そこから生活費なども必要になる。それを埋めるために、学生はアルバイトをするんです。でも、バイト先は休業し、アルバイト収入はゼロの友人もたくさんいます。中には、実家の親の収入も減って、親にすら頼れない大学生もいるんです」

■親にも頼れないと学生は孤立してしまう

 「親にも頼れないとなると、学生は孤立してしまう。これがいちばん怖い。僕は母子家庭出身で、家庭内トラブルが絶えなかった。頼れる人が誰もいなかった。何回も、死のうと思ったこともありました。孤立の恐ろしさは、身をもって体験していますから、夢ある学生を孤立させないよう、行政は絶対に支援してほしいです」

 コロナ問題の以前から、大学生への仕送りは年々減少してきた。特に7割の学生が通う私立大学に関しては、それが顕著に現れている。

 東京地区私立大学教職員組合連合の調査によれば、首都圏の私立大学に通う学生の2019年度の仕送り額の平均額は、8万5300円。過去最高だった1994年の12万4900円と比べると、3万9600円も低く、1986年の調査開始以来で2番目に低かった。

 大空さんは4月下旬、都内の私立大4年生の鈴木晋平さん(21歳)とともに、学費減免や一律の金銭給付を求める要望書を文部科学省に提出している。それから約半月後の5月12日、自民党は生活に苦しんでいる学生に1人10万円、特に困窮している学生には20万円を給付する緊急法案を政府に提出することを決めた。

 緊急の支援策はようやく動き始めたが、鈴木さんはこう指摘する。

 「まずは法案が通ってほしい。私も、下宿先のお金はすべて自分が負担しており、常にキツキツです。月6万円の学校独自の給付型奨学金をもらっていますが、家賃ですべて消える。生活費などはすべてアルバイト代で賄っています。バイト先は不動産会社の営業です。でも、コロナのせいで収入は4割減。5月末からは貯金を切り崩す生活が始まりそうです。就活で使う旅費などのために少し貯めていたんですが、果たして夏を越えられるのか……。法案が成立したら、政府はとにかく早く実行してほしいです」

 取材:フロントラインプレス(Frontline Press)

東洋経済オンライン

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最終更新:5/16(土) 21:23

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