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コロナで大暴落のREIT市場、不動産価格への影響は?《楽待新聞》

5/16 11:00 配信

不動産投資の楽待

株式投資のような売り買いのしやすさと、不動産投資のような安定した利回りを兼ね備えた投資と言われている「REIT」。実物不動産を小口化した金融商品である。日本におけるREITは「J-REIT」と呼ばれ、2001年に国内初の投資法人ができた。リーマンショックなどの経済危機があったものの、REITの市場は順調に成長してきている。

だが今、新型コロナウイルスの影響を受けてREIT価格は下落し、銘柄によっては利益となる分配金が大幅減少するなど、REIT市場は大荒れとなっている。こうした変化は、実物不動産の価格にも波及していくのだろうか。今回は、信託銀行と不動産業界に約20年携わる不動産投資家の中山聡さんに、REITの基礎からコロナ後の市場予測まで徹底解説してもらう。

■REITはなぜできたのか

REITとは、「Real Estate Investment Trust(不動産投資信託)」の頭文字をとったもの。1960年代にアメリカで登場した金融商品で、日本では2001年に国内第一号である「日本ビルファンド投資法人」ができた。現在、J-REITは64銘柄あり、新型コロナウイルスで縮小気味だが、時価総額は12兆円にのぼる。

簡単に説明すると、実物不動産を保有しているREIT(投資法人)に投資することで、実物不動産の「信託受益権(運用した利益)」を得るような仕組みになっている。REITに出資する単位は「投資口」といい、株式投資では企業を「株券」で買うが、REITは「投資口」を買うことで間接的に不動産を買う。分配金の原資となるのは主に不動産の賃料であり、投資口の保有数に応じて分配金が受け取ることができる。

ちなみに、J-REITの第一号はオフィスビルから始まった。大規模なオフィスビルでは購入費用や建設費用が1000億円単位にのぼることもある。そのため、バブル崩壊で痛手を負った大手の不動産会社は、すぐに手を出すことができなかった。そこで、実物不動産を建てて小口化し、多くの投資家からお金を集める必要があったのだ。ちなみに、J-REITの物件で最大のオフィスビルは東京・港区にある「六本木ヒルズ」である。

■追い風が吹いているREIT、そうでないREIT

では、投資先となるREITにはどのようなものがあるのか。どんな物件を保有するかはREITごとに方針が異なる。ここではおおまかな分類と代表的な銘柄を紹介していく。

<オフィスビル系>
日本ビルファンド投資法人、ジャパンリアルエステイト投資法人
<住居系>
アドバンス・レジデンス投資法人、コンフォリア・レジデンシャル投資法人
<商業施設系>
日本リテールファンド投資法人、イオンリート投資法人
<物流施設系>
日本プロロジスリート投資法人、GLP投資法人
<ホテル系>
インヴィンシブル投資法人、ジャパン・ホテル・リート投資法人
<その他>
複合系、地域特化型、ヘルスケア特化型など

いずれの銘柄でも、その建物における賃料収入が投資家への分配金となるわけだが、気を付けてほしいのは「固定賃料」のほかに「変動賃料」があるということだ。住居の賃料は通常月額で決まっているが、商業施設やホテルは「固定賃料」と「変動賃料」の2段階になっており、毎月の固定賃料にプラスして変動賃料を支払っている物件もある。

・固定賃料:毎月固定額で変動しない
・変動賃料:売り上げなどに応じて変動する

中でも、ホテル系のREITは「変動賃料」の割合が大きく、物件によっては9割以上が変動賃料のものもある。これは、各法人の決算説明資料などからすぐに確認できるため、必ず個別でチェックしてほしい。ホテル系のREITは、外国人観光客の増加などのインバウンド需要もあり、高利回り銘柄が多かったが、新型コロナによって稼働率は極端に低下。また東京五輪に向けたホテルの供給も増え続けていることもあり、一部ではREITの存続すら危ぶまれている。ちなみに、売上が多く好景気なときは「アップサイド」といい、売上が減少するときは「ダウンサイド」と言われる。

これに対し、景気の影響を最も受けにくいとされているのが住居系のREITだ。利回りは低い傾向にあるが、安定した配当が期待できるとされている。しかしリーマンショック時、国内で唯一発生したREITの破綻は、「ニューシティ・レジデンス投資法人」という住居系のREITだった。安定しているとはいえ、もちろんリスクはあるということは念頭においてほしい。

一方、今最も追い風を受けているのが、物流施設系のREITだ。ここでいう物流施設は、トラックがそのまま施設の中に入れて、スロープを上がりそのまま上層階に行けるような大規模なものを指す。内装も簡素であり、建物のメンテナンスコストがほとんどかからない。さらに近年の通販需要の高まりもあって、非常に人気が高いREITになっている。

こういったさまざまな分類や銘柄から自分が良いと思ったものに投資していくことになる。物件ごとの稼働状況は各投資法人のHPなどで毎月更新されているため、チェックしてみてほしい。

REITを購入したい場合は、証券会社の窓口に行くか、証券会社のHPなど、オンラインで簡単に購入することも可能だ。

■「株式投資」「不動産投資」の2つの性格

REITの分類ごとの特徴を先に紹介したが、そもそもREITに投資するメリット、デメリットには何があるのだろうか。一般的に言われるメリットは以下の5点だ。

1.株式投資よりも配当利回りが高い
2.「投資口価格」や配当にあたる「分配金」は比較的安定している
3.賃貸経営が不要で手間がかからない
4.購入しやすく換金しやすい
5.売買単価が小さいため、参入しやすい

実物の不動産の場合、賃貸の募集や建物の管理や維持、また確定申告などの手続きが必要になるが、REITの場合はそれらがない。投資家はお金を出すだけで、分配金を得ることができる。そんな不動産投資と金融商品の両方のメリットを兼ね備えているREITだが、そのためデメリットもある。

1.株式のように価格が急落することがある
2.株式投資と比べキャピタルゲインが少ない
(ミドルリスク・ミドルリターン)
3.不動産投資と比べ購入時や運営時に工夫できる余地が少ない
4.税金対策にならない

株式のように価格が急落することがあるというのは、REITの換金しやすさが理由にある。実際、新型コロナの問題発生後に、株価とともにREITの価格も後を追うように急落している。また、「ハイリスク・ハイリターン」な株式投資と比較すると、大きく利益を出すことは難しい。株価は企業の活動や投資家の期待次第で株価が跳ね上がることもあるが、REITはどの銘柄も不動産運営しか行っておらず、投資口価格の変動要因が限定的だからだ。

また、投資先は実物不動産にはなるが、不動産投資のように工夫する余地が少ない。実物不動産には同じものが2つとなく、売主もさまざまな事情がある。そうした市場の歪みから、掘り出し物件を見つけることも可能だ。購入物件の運営次第でその後の利益も大きく変わる。

しかし、REITの物件の運営は資産運用会社が行うため、すべて他人任せとなる。手軽に投資できる反面、不動産投資の上級者からみると、投資の醍醐味に欠けるところもあるだろう。

最後に、「税金対策」にならないということも覚えておきたい。相続税で考えるならば、REITの場合、相続税評価額は相続が発生したその日の証券市場の価格が基準になる。一方、実物の不動産であれば、土地や建物の評価額は購入価格の約半分程度まで下げることもできる。その他にも、わざと不動産賃貸業で赤字を作り、本業の所得から損益通算で節税するなども可能だと思うが、REITではそういったことはできない。株式投資と同様に、ほとんどの人が源泉分離課税(分配・換金時の収益の20%)を選択することになる。

また、REITは投資家が儲かるように配慮されているが、基本的にREITに出資する「スポンサー企業」が最もメリットを得ているのが実情だ。投資法人自体はどの物件を購入するかなど経営判断する機能を持たず、資産運用会社がその役割を担う。そして、その会社に出資しているのがスポンサー企業だ。スポンサー企業は自社保有物件をREITに売却して売却益を得たり、REITが保有する物件にテナントを設けるなど、事業の拡大に利用する。

この関係を「パイプライン」と呼び、REITはスポンサー企業から優先的に優良な物件を購入することができる。これもREITの成長には欠かせない仕組みになっているが、スポンサーの利益のため「優良でない物件も買わされているのでは」という懸念もある。そのため、どんな物件を保有しているかはやはりチェックする必要があるだろう。

■コロナで底をつけたREIT価格、実物不動産への影響は

コロナの問題発生前のREIT市場は、アベノミクスから始まり、2020年東京五輪への期待、インバウンド需要の増大で、オフィス・住居・商業施設・ホテルのすべてにおいて「バブルではないか」と疑問を持たれるほど、需要が旺盛だった。

しかし、今年2月下旬にREITの代表的な価格指数である「東証REIT指数」は下落した。これは同月中旬から始まった株価の下落につられた形と考えられる。

REITは株式のように売買しやすい商品のため、株式市場の値動きにも影響を受ける。ではなぜ、株価に「やや遅れた」かというと、REIT市場は株式市場に比べプレイヤーが少ないこと、実物不動産の価格にはまだ影響がでていなかったからだと考えられる。

そして、REITは実物不動産からも影響を受けることがある。分かりやすいところでいうと、土地価格や賃料、空室率などがあげられる。では反対に、REIT価格が下がると、実物の不動産価格に影響があるかというと、それはわからない。2008年のリーマンショック時にREITの価格は大幅に下落し、金融危機から融資が難しくなり、実物不動産の価格も同じく下がった。我々の目には同時期に価格の下落が起きたのだが、株価に影響を受けたREITと、融資に左右された不動産では下落の理由が異なってくる。実物不動産の価格が下がればREITの価格も下がるが、その逆は考えにくいということだ。

もちろん、資金繰りに窮した所有者が安値で早期に売却しようとする動きは散発的にあるものの、それはまだごく一部である。それに、不動産を売却するには買主の発見や、買主側の資金調達に時間がかかる。影響がでてくるとしたら数か月後からおおよそ2年の間など、長期に渡る可能性がある。

■アフターコロナのREITには「複数のシナリオ」を

新型コロナウイルスの問題は、どのような形で解決を迎えるのか。これから第二波、第三波がくるかも分からないような状況だ。そのため、REITの分類ごとにいくつかのシナリオをたて、それに基づいて行動するしかない。

今、コロナによってホテルや商業施設は多大な影響を受けているが、オフィスや住居にはそれほど影響がなく、逆に物流施設は追い風状態だ。しかし、リーマンショックの前後では、オフィスの空室率は2%から7%まで、2年かけて上昇した経緯がある。

空室率が低い都心のオフィスビルも、5月以降も自粛が続き、電車という通勤手段が取れなくなると、オフィスそのものの構造的変化があり得るだろう。東京などの大都市自体が感染リスクであると考えるならば、大都市から地方へオフィスや本社機能が移転する可能性だってある。

また、既存のオフィスで仕事をするとなった場合、感染拡大防止のためにパーテーションを作るなど、オフィスの設備投資をする必要があるかもしれない。商業施設ならなおさらだ。ホテルは今生き残りをかけて資金繰りをしている状態であるが、コロナの収束が早くなると、今調子がいい物流施設系のREITは逆にマイナスの影響を受けるかもしれない。

もちろん、エリアや物件によって事情は異なってくる。まだ影響はないと考えられているものも、今後どうなるかは誰にもわからない。そのため、中長期的な目線を持ち、いくつかのシナリオを考えつつ、銘柄を選ぶことがREITは重要になる。

株式市場と不動産市場の両方を見つつ、比較的長期目線で継続的に投資を行い、半年ごとや1年ごとの配当を中心に考えていくといいだろう。

取材協力:中山聡(なかやまさとし)氏
信託銀行と不動産業界に20年以上携わっており、その経験からYouTubeチャンネル「住まいと投資チャンネル【中山聡】」を運営し、視聴者からの様々な質問に答えている。
不動産投資家であり、一級建築士、不動産鑑定士の資格を持つ。
著書に「不動産のしくみがわかる本」、「闘う!空き家術」など

不動産投資の楽待

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最終更新:5/16(土) 11:00

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