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コロナショックで「住宅ローン破綻」大量発生か

5/14 11:00 配信

不動産投資の楽待

新型コロナウイルスの影響で、日本国内の経済活動や市民生活にはさまざまな影響が出ている。不動産業界も同様だが、競売不動産の分野では各裁判所の入札スケジュールが取り消しになるといった動きがあるようだ。

競売の現場からみた、新型コロナが不動産市況に与える影響とは。そして、コロナショックで「住宅ローン破綻」は増えるのか。競売に詳しい不動産ライター「競売情報探偵」さんに聞いた。

■停滞する競売手続き

新型コロナウイルスの感染拡大で、世界同時株安や通貨安、原油安など全方位的なリスクオフ(リスク回避)が突発的に発生し、いまだ先の見えない波乱の展開が続く。投資分野の中では比較的動きが遅い不動産市況もその例外ではなく、取引事例自体が数を減らしているようだ。

競売の動向に目を向けてみても、各裁判所が入札スケジュールの取り消しを行うなど、競売や執行に関する手続きが停滞を余儀なくされている。競売物件情報サイト「BIT」をみると、例えば東京地裁本庁の競売スケジュールは7月15日開札分までがすでに取り消しになっている。

各裁判所が裁判や執行の延期・期日の取り消しに踏み切った理由。それは、コロナの影響で支払いを滞らせることになってしまった人々が急激に増加する中で、彼らへの「人道的配慮」を考えたという面がある。

■相談件数は2カ月で60倍

住宅ローンを扱う住宅金融支援機構によると、住宅ローンの支払いに関する相談件数は2月の約20件から3月は約200件、4月は約1200件と激増している。担当者によると、「直接金融機関に相談している人を含めれば、数はこれより相当多いのではないか」とのことだった。

同機構は解雇や収入減で返済が困難になった人に対し、返済期間を最長15年延長するなどの対応を進めている。4月末時点で、返済期間の延長やボーナス返済の見直しなど返済方法変更の承認件数はおよそ200件に上るといい、担当者は「緊急事態宣言が延長されたことで、今後さらに数が増えていく可能性がある可能性がある」と話していた。

不動産投資家目線でこの現状を語るのであれば、競売市場に築浅で条件の良い物件が出回る可能性もあるにはある。ただ、市場自体が適正価格を見出しにくい状況である上に、集合住宅では債務者が滞らせた管理費・修繕積立金といった滞納金、さらには罰則金利も落札者に引き継がれるものであることを忘れてはならない。

延期や期日の取り消しはあくまでも「先送り」で、滞納に対する金利も罰則金利も止まることなく日々積み重なっているのだ。

■なんとか「買える物件」を買わせていた

私はコロナの問題をきっかけに「住宅ローン破綻」が大量発生すれば、不動産市況が長期下降トレンドに入る可能性もあると考えている。

なぜ、住宅ローンの返済に行き詰まってしまう人が多発するのか。原因の1つとして、以前は住宅ローンを組めなかったような低所得層がローンを組んでマイホームを購入するケースが増えていたことが挙げられる。

ご存じの通り、現在の住宅購入者は高い割合で住宅ローンを利用している。国土交通省の「平成30年度住宅市場動向調査」によると、住宅ローンの利用者は新築注文住宅で80%、分譲戸建住宅で73%、分譲マンションで68%、中古戸建住宅で54%、中古マンションで55%に上る。

近年、世帯収入がズルズルと細っていく中でも、デベロッパーは住宅購入者層が「買える物件」をつくる必要があった。「少し背伸びをすればなんとか手が届く物件」を用意すべく、良質な広い土地を細かく切り分け、細長い物件を建て続けた。その結果、低所得世帯でも35年ローンで3000万円台のマイホームを購入するといったケースが多くなっていた。

「買える物件」に合わせて変化してきたのは土地建物だけではなく、住宅ローンの形態も同様だ。マイナス金利下で金融機関側がローンのハードルを下げざるを得なくなった結果、審査基準は細りゆく世帯収入に合わせて緩められてきた。当たり前のように「0円」が選択できるようになった頭金、月々の返済額を安く見せるために無理やり延ばされた返済期間。さらに「親子リレーローン」といった仕組みの利用も増えた。

■ギリギリのバランスはコロナで崩壊する

こういった狭小住宅の開発や住宅ローンの形態の多様化が、多くの人に「夢のマイホーム」を実現させたという事実がある一方で、早期の住宅ローン破綻でマイホームが築浅のまま競売にかけられるという悪夢を多発させている。

フラット35は年収400万円未満の場合、返済比率は30%以内という条件があるが、30%ギリギリでローンを組むことは危険だ。仮に体を壊したり、勤務先が倒産したりすれば、あっという間に返済が困難になる可能性もある。本来は20~25%以内など余裕を持たせるべきだが、近年は不動産会社も金融機関も「ギリギリ買える層」に「ギリギリのライン」で融資を組ませてきた。だから住宅ローン破綻が増えたのだ。

住宅金融支援機構の「フラット35利用者調査」によると、1カ月の返済額を世帯月収で割った「総返済負担率」は2018年度の平均が21.8%。ただ、25%以上の割合が3割を超え、30%以上の割合も10.1%に上る。

かつて経済成長を続けていた時代は世帯年収も右肩上がりで、収入ベースでみれば無理したマイホーム購入でも「なんとかなる」という状況があった。ボーナス返済をあてにすることもできたが、今はそうではない。競売の現場で目にする住宅ローン破綻者の大半は、ボーナスなど得られていないのだ。

一部の金融機関はすでに、住宅ローンや投資用不動産ローンの新規受付を停止するという動きを見せている。細る所得水準に呼応する形で下へ下へと切り下げられつつも、ギリギリのバランスを保ってきたはずの住宅購入環境。そのバランスがコロナショックで一気に崩れる可能性もあると私は考えている。

■手取り半減で「住宅ローンが返せない」

実際に、現場ではコロナショックによる収入減でマイホームを手放さざるを得ないような状況に追い込まれている人もいる。不動産ローンの返済に関する専門相談機関「任意売却119番」の富永順三代表が、ある事例を教えてくれた。

5年前、横浜市で2500万円ほどの中古住宅を35年ローンで購入した30代男性。携帯電話の販売店に勤務しており、残業代を含めて月30万円ほどの手取りがあった。しかし、コロナの影響で店舗の営業時間が短縮され、手取りは15万円に半減。毎月10万円弱のローン返済が立ち行かなくなり、現在は家を手放すことも視野に入れているという。

富永代表は「リーマンショックは景気の悪化に伴って徐々に返済が苦しくなる人が増えたが、コロナの場合はより影響がダイレクトだと感じる。仮に返済期間を延長したとしても根本的な解決にはならず、むしろ総返済額は増えるケースの方が多い。勤務先を失った人などの住宅ローン破綻が続出する可能性は高いと考えている」と話していた。

実際にどれぐらいの数の住宅ローン破綻が想定されるのだろうか。住宅金融支援機構が開示しているリスク管理債権のデータを見ると、全体の融資額23兆4930億円のうち、2018年度時点の「破綻・破綻懸念先債権」は8206億円で割合は3.5%となっている。

富永代表は「リーマンショック後の2009年、2010年はこの数字が8.5%程度まで上昇した」と指摘する。「リーマンショックより影響の大きいコロナショックでは、10%を超える可能性が高いと思っている。つまり、住宅ローン全体の1割ほどで破綻の可能性があるということだ」

■「回遊魚」競売ブローカーの変化

住宅ローン破綻の増加で不動産市況が変化する可能性について指摘してきたが、実は競売の現場では昨年後半ごろから変化の兆しがみられていた。

競売で不動産を安く買い、高く売り抜ける「競売ブローカー」たち。泳ぎを止めれば生命が絶たれる「回遊魚」のごとく、絶え間なく売買を繰り返していた彼らが、昨年後半ごろからうかつな中古マンションには手を出さなくなっていたのだ。

彼らが「買わない」理由は「売れない」からに他ならない。現場の感触としても、駅から遠い、築年数が古い、といった条件の悪い中古マンションから買い手を急速に減らす厳しい局面を迎えているように感じる。

例えば1年ほど前なら、首都圏で2000万円ほどの築浅マンションであれば、多少条件が悪くても二桁の入札が入ることが多かった。しかし昨年後半ごろからは入札数1やゼロになることも珍しくなく、競争の鈍化が顕著になっている。

実際に、三友システムアプレイザル不動産金融研究所の「平成31年度上期競売物件分析」によると、昨年4~9月の東京、大阪、名古屋、福岡など調査対象10地裁の応札者数は2万2527人で、10地裁すべてで前期より減少。1件あたりの平均応札者数は7.7人で、2010年以降で最少だった。

今後はさらにコロナの影響で、住宅ローンの他に管理費や修繕積立金、固定資産税、場合によっては駐車場代と、支払い要素を複数抱える分譲マンション世帯が家を失うケースも増える可能性がある。それらが流通量の増加に繋がり、価格の下落に拍車をかけるというシナリオも現実味を帯びてきた。そうなれば将来的に入札開始価格の調整が入り、割安な物件が競売市場に増える可能性も出てくると考える。

■感染者が出た物件はどうなる

最後に少し視点を変えて、新型コロナの感染者が出た物件が価格面でどういった影響を受けるのかという点についても考えてみたい。

10年以上前にこのような事例があった。

ある地主から売却にあたって所有物件の適正価格を調べたいという依頼を受け、専門家が調査に入った。首都圏の広大な敷地の中に、廃屋のような戸建が1つあったのだが、何かがおかしい。人が住むような敷地の切り方ではなく、牛や豚など動物を複数頭飼育しているような雰囲気だったという。

調べてみると、そこはかつて畜舎だったことが分かった。さらに調査を進めると、かつて疫病の発生を理由に廃業していたことが発覚したのだ。

廃業は数十年も前の話であったうえに、すでに複数のオーナーチェンジを経験している物件。疫病を媒介する動物ももはや存在しない。それでも、後から発覚して買主とトラブルになるのを避けるため、買主に事実を伝え、結局5%値引きした金額で売却することになったという。

新型コロナウイルスが物体に付着した場合、生存していられる最長期間は3日という研究がある。であれば大規模な特殊清掃も必要ではないだろう。それでも、イメージの悪化は避けられない。全世界を揺るがした感染症がそう簡単に風化するとは考えにくく、「気になる」「嫌だ」という購入者が多ければ価格の調整を考える必要が出てくるかもしれない。

ちなみに、2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)の集団感染で40人以上が死亡した香港のマンション「アモイ・ガーデンズ」はその後、大幅な値崩れを起こしたものの、香港自体の発展もあり、被害の風化とともに売買価格は底値から3倍まで上がったと言われている。この値動きをうまく活用できた投資家もいたかもしれないが、今後の日本不動産市場で二匹目のドジョウを狙うことはなかなか難しいだろう。

■投資家の力量が試される時代に

紹介してきた通り、競売の現場に身を置く中での感触では、コロナショックの影響で住宅ローンの破綻案件が増える可能性が高いと考えている。価格調整が入れば投資対象として魅力的な物件が出てくるともいえるが、不動産市況はいまだ波乱含みで、物件価格や家賃がこれから下落していくこともあり得る。

「安いから」というだけで安易に飛びつくのは危険だ。いかに割安な物件であっても、そのポテンシャルを生かせるかどうかは買い手次第。先行き不透明な市況の中で、投資家としての「力量」が試される時代に突入していくのではないだろうか。

不動産投資の楽待

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最終更新:5/14(木) 11:00

不動産投資の楽待

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