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売買IT重説、97%が投資用物件の理由とは《楽待新聞》

5/11 11:00 配信

不動産投資の楽待

宅建業法で義務づけられている「重要事項説明」(以下、重説)。不動産の取引でトラブルの元となる「そんなことは聞いていなかった」という事態を避けるため、宅建士が買い主や売り主に重要事項を説明するものだ。従来は「対面」での説明が必須であったこの重説だが、2017年10月、対面ではなくパソコンなどの端末を介した重説、いわゆる「IT重説」が解禁された。

ただし、今のところIT重説が利用できるのは「賃貸物件」の取引のみ。売買物件でのIT重説解禁に向け、現在国土交通省が社会実験(新たな施策を本格的に導入する前に、場所や時間を限定して施行する取組み)を行っているところだ。

新型コロナウイルスの影響もあり、今後は売買においても非対面での取引実現を求める声が高まると予想される。そうなった場合、投資家にはどのようなメリットやデメリットがあるのだろうか。不動産会社や投資家に考えを聞いた。

■投資用が全体の9割占める

ビデオ通話などを活用して不動産取引時の「重要事項説明」を行う「IT重説」。パソコンやタブレットなどの画面上で、重要事項の読み合わせや質疑応答を行い、手続きを進める方法だ。事前に買い主・売り主双方の同意を得たうえで、IT環境の確認を経て実施する。契約書などの重要書類は、不動産会社があらかじめ利用者に送付しておくという仕組み。

賃貸物件に比べて金額が大きい売買物件の取引では、現在国土交通省の主導のもと、社会実験という形で試験的に運用されている段階。法人間の売買取引におけるIT重説導入は2015年から社会実験が始まっていたが、個人を含む売買取引の実験は昨年10月にスタートしたばかりだ。この社会実験には59の不動産業者が参加、今年の9月末まで実施される。国交省はこの社会実験の結果をもとに、解禁が可能かどうかを検証していく予定だ。

社会実験の開始から半年が経過した今年3月、国交省は実験経過の中間報告を発表している。これによると、参加した事業者59社のうち、全体の8.5%にあたる5社がIT重説を実施、件数は143件で、そのうち139件が投資用物件となっている。

なぜ、全体の9割以上を投資用物件が占めているのだろうか。この社会実験の取りまとめを行う国交省土地・建設業局不動産課の担当者は、「ITの重説を実施した5社の中に投資用物件をメインで取り扱っている不動産会社がいることや、投資用物件の方が契約に慣れている買い主が多いことが関係している可能性がある」とした上で次のように話す。

「不動産会社から聞いた話だと、投資用物件の場合、遠方の物件や区分マンションなど、内見せずに購入できるケースもあるようです。そういった買い主にとっては、わざわざ現地に行かず契約できることがメリットになるのかもしれません」

国交省の中間報告によると、この実験の中で取引された居住用物件4件は、全て内見してから購入されていた。一方、投資用物件に関しては全体の約9割が内見せずに購入している。投資用物件の場合、遠方の物件やオーナーチェンジを購入する投資家もいるため内見せずに物件を購入することもある。こうした内見の有無が、投資用物件と居住用物件の取引実績の違いに関係しているのかもしれない。

■「喜びの声多い」一方で課題も

社会実験に参加した不動産会社は、IT重説導入の利点や課題についてどのように考えているのだろうか。中古マンションを中心に取り扱い、今回の社会実験において、投資用物件・居住用物件で合計27回にわたりIT重説を実施したという株式会社ランドネットの契約担当者によると、「IT重説を実施するようになってから、遠隔地に住む方との契約が簡単になった」という。

「移動時間がなくなるのでお客様との日程調整がしやすく、非常に便利だと感じています。お客様からも『日程に融通が利くようになった』『自宅でリラックスして説明を受けられる』との声が多く、現段階で特にトラブルはありません」

一方で、IT重説ならではの「課題」もあるようだ。

「オンラインでは、お客様の表情や相づちの有無といった小さな変化に気づきにくくなる。対面での契約以上に、積極的にアイコンタクトを取るなどの配慮が必要です」(前出の担当者)

また、顧客の中にはビデオ通話をしたことがない、あるいはパソコンを持っていない人もいるため、そうした顧客へは別途対応が必要になるようだ。

「専門知識などが不要であることを伝えたり、営業担当がタブレット端末を持参して説明に出向いたりしています。慣れない方法に心理的負担を感じる方や、IT重説のための端末が準備できないお客様にどう対応するのか、不動産会社は考える必要があるでしょう」

元不動産売買仲介業者で不動産ライターの長野久志氏も、同様の見解を示す。

「やはり、遠方の顧客に対応しやすくなるのが不動産会社にとってのメリットでしょう。特に業者間で取引をする場合、分かりきった内容は割愛して30分くらいで終わることも多いので、そのために毎回会う必要がないのは楽です」

その他にも、不動産会社側のメリットとして「別の支店にいる宅建士に重説を委託できる」ことを挙げた。

「IT重説が普及すれば、遠方の宅建士にも外部委託ができるようになる。地方の支社で人が足りないとき、東京本社の宅建士に重説だけ頼む、ということもしやすくなるのではないでしょうか」

その一方で、非対面ならではの懸念点もあるという。例えば、重説の最中に購入者から細かな質問を受けた場合だ。対面であればその場で書面を見せるなどして対応できるが、「IT重説だとそういったフォローに時間がかかるのではないか」と長野氏は話す。

また、資料の郵送が増えることで、業者が負担する郵送料が増えたり、郵送事故で書類が届かなかったりといったリスクが出てくる可能性も指摘。

「今の投資家は皆さんスマホを持っているので、LINEやZOOMなどのビデオ会議ツールが使えればそれほど障壁はないんじゃないでしょうか。ただ、やはり細かい質問をしたい投資家さんの場合は対面じゃないと理解しにくい部分は出てくると思います」と話した。

■投資家はどう活用すべきか

距離や時間に左右されず契約を進められるIT重説。手間や効率を考えると買い手側にもメリットがありそうだが、実際に売買取引でIT重説を利用した人はどのように感じているのだろうか。

先述した国交省の中間報告によると、過去に対面の重説を経験した買い主の中で「IT重説と対面での重説の理解のしやすさは、同程度である」あるいは「IT重説の方が対面での重説より、理解しやすい」と回答した人の割合は、全体の4分の3以上を占めている。

また、今後の利用については「今後もIT重説を利用したい」と回答した買い主は60.8%、「どちらでもない」が36.8%、「利用したくない」が2.4%という結果に。アンケート結果からは、買い主がIT重説に満足している傾向にあることが見て取れる。

一方、投資家からは懸念の声も上がっている。総投資額約11億5000万円、東北・北陸・四国エリアにRC物件を10棟保有している投資家のMOLTAさんは、IT重説について次のように話す。

「遠方の物件でもスムーズに購入ができる点は魅力なので、実現したらぜひ利用してみたいとは思います。」

だが、非対面の取引には懸念していることもあるという。それは、オンラインだと担当者の小さな変化に気づきにくくなるという点だ。意図的に隠されていることがないかを確かめるため、MOLTAさんは担当者の身振りや目の動きを確認するようにしている。オンラインではその確認が困難になってしまうため、「初めての取引では、できれば対面で契約したい」とMOLTAさんは話す。

アパート2棟、戸建1戸、区分2戸と幅広く投資を手掛ける投資家の「ジュニア」さんもメリットについては同様の意見だ。

「過去に取引を経験しているなど、信頼できる相手と契約をする場合は、時間や場所の選択肢が増えるのはメリットになるかもしれません。しかし、重要事項の中でトラブルに発展しそうな内容が発覚した場合や、確認不十分な事がある場合に、相手の雰囲気や空気感が掴めないのはデメリットだと思います」

店舗まで足を運ぶ時間や費用の負担を考えると、日程調整がしやすく場所を選ばないIT重説は買い手側にもメリットがあるかもしれない。しかし、非対面だと不動産会社の雰囲気や考えていることが読み取りづらく、初めての取引ではできれば対面で契約をしたいと考える投資家もいるようだ。



新型コロナウイルスの影響から不動産会社に行きたくても感染が不安な人や、遠方の物件を購入する投資家にとって、移動時間や感染リスクを気にせず物件購入できることはメリットと言えそうだ。その一方で、非対面の取引に対して不安の声も上がっている。しかし、国交省のアンケートでIT重説に満足している買い主は大半を占めており、個人含む売買取引のIT重説は今後普及していく可能性があるだろう。

2015年、法人間の売買取引におけるIT重説の社会実験がスタートし、賃貸物件では契約書面を電子化する社会実験を実施中だ。IT重説に関しても今後の動向が注目される。国交省では現在、参加事業者の追加募集をしている。

不動産投資の楽待

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最終更新:5/11(月) 11:00

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